マツリカの炯-感想まとめ

ほぼ辛口評価しかないです。

※ネタバレあり


ディザーPVの煌びやかなイラストを見て久々に購入を決意。
中華な世界観の作品は今までハマった事がなく、正直どのくらい楽しめるかわからなかったけど、結論から言えば楽しめた。

ビジュアル

とにかくすべてが良かった。
キャラクターの立ち絵はもちろん、スチルにおいてももう少し色んなイラストが見たい!と心から思う程美しいイラストが多く、見ていて飽きることがなかった。
イラストだけでも買う価値はあると思う。

正直手放しでおすすめ出来る点はこれくらいしかない。

※キャラゲーとしてはとても楽しんでいるし、これから繰り返しプレイする予定です。
期待値が高かった分あまりに肩透かしが大きかったのでシナリオ・設定部分が辛口評価になっています。

シナリオ

ここがかなりなんとも言えないポイント。
シナリオゲーとして評価するなら微に尽きるが、
キャラゲーとして評価するならとても良かった。

初見でルヲ、2番手に青凛のルートを辿ったがどうしても展開や設定の甘さに目がいってしまいモヤモヤしてしまった。
3番目に入る前にキャラゲーとして気持ちを切り替えた結果とても楽しめたのでわたし個人としてはこういう楽しみ方が合う作品なんだな、と思った。

微妙だった点

文字数のわりには内容が伝わってこない。
全体的にはこれにつきる。
作中しっかりと細かくテキストで気持ちを描写してくれているのだが、
下記のナーヤの評価も相まってどうも没入感には欠けていた。

魅力的なサブキャラクター達のぞんざいな扱い

大事な設定、立ち絵、声を宛がわれたサブキャラクター達の扱いがあまりにも雑すぎると感じた。

例えばゼベネラルートで登場するバオ、ヨウ

バオは(ほぼ)唯一の白狼族の女性であったが、当人達では知り得ない事情により、いくら子を産めどもその子らは狼の言葉を理解できなかった。
気のいい姉御肌の性格ではあるが、日に日に減っていく群れの数、どうなるかもわからない一族の未来、産んでも狼を理解出来ない現状等、
どう考えても彼女なりに複雑な心境があると思われるわけだが、それらに触れられる事はなく、姉御肌のキャラクターとして、それ以上でもそれ以下にもならないままに話は終わってしまった。

白狼族は群れがほぼ全滅し窮地に陥っている、という設定なので、バオはその悲惨さを一番わかりやすく同性の言葉として伝えてくれるキャラクターなのかな?と思っていたので肩透かしをくらってしまった。
ただナーヤの世話と群れの説明を少ししただけのキャラクターだった。

ヨウに至ってはもっとぞんざいな扱いだったと思う。
月下ノ国が飢饉に苦しんだ時代を象徴するキャラクターなのに、月下ノ国でのイベントで軽く触れられた程度でその葛藤に終止符を打たれてしまった。
捨てられた事実、バオとの間に設けた子が喋れない現実、群れの男らしく狩りを出来ない現状、こんなにも白狼族と月下ノ国を繋ぐ魅力的な設定を背負っているにも関わらず、
物語を都合よく進めたい為のモブにより事情を一方的にペラペラ喋られ、数テキスト後には描写もろくにないまま和解をし、葛藤を乗り越えたという立場に置かれてしまっていた。

当然ナーヤと攻略キャラクターの描写はとても大事だとわかっているが、それにしてもぞんざいすぎると思う。
国を、あらゆる一族を巻き込んでの物語であるならもっと大事に設定を扱って欲しかったと切に思う。
シナリオ土台、舞台設定、キャラクター背景、あらゆるものが魅力に感じる作品だったのでとても残念だった。

この作品に関わらず、
特定のキャラクターの有能さを表す為に周囲のキャラクター達を露骨に阿呆にするのはやめて欲しい。個人的意見です。

設定に関してはあれこれ思うところがあるがいちいち書いてられないので各キャラクターの感想にて。

キャラクター個別感想

攻略順に並べてます。がんがん欲望が漏れてます。

ルヲ

CV山下誠一郎じゃなかったら耐えれなかった。
とりあえず何も考えずに選択肢を選んだ結果初手はルヲだった。
マツリカ村の手のひらの返しようがえぐすぎて、こんなやべー村燃やした方がいいんじゃないか?とか思ってたら本当に村燃えた。
顔と声とバックボーンははちゃめちゃに好きだったけど、シナリオは全然ささらなかった。

とにかく雨前が最悪すぎる。
逃げ出した事よりも、一度は裏切り、それを一生をかけて償っていくという懺悔をした後に、目の前で最悪な事が起きようとしている最中その光景に情欲を…みたいなテキストが最悪だった。
バッドエンドはいわゆる罰ゲームみたいに好き勝手やるのではなく、起こり得る最悪の結末として見ていたので、
その後に春前を迎えても「でも場合によってはこいつ、今後もこういう状況になったら…」という不信感が拭えなかった。
雨前を終えた後のタイトル画面でごちゃごちゃ言い訳してたのもさらに不快感に拍車がかかってたと思う。

明前が一般的にいう無難なノーマルエンドなのかな?と思ってたら普通にメリバで、
このゲームもしかして色んな意味で相当しんどいゲームなのか…と覚悟する事になった。
結論からいえば全然そんな事なかったです。

あまりにナーヤとルヲの運命がしんどさの押し売り状態だったので「前世で街どころか国滅ぼしたんか?なにやったらこんな業を背負う事になるんだ」とか冗談で笑ってた。
本当に冗談のつもりでした。

一番幸せなはずの春前もどうもいまいちピンとこなかった。
というよりも洗脳されてたとはいえ、設定の後出しが多すぎて「そうだったんだ!?」というよりも「そう…」というテンションでしか受け止められなかった。
実は過去に会っていました(覚えてないし描写もない)、三年前に突然風一族の火貿易を思い出しました(とくに思い出した時の特別な心境や回想の描写なし)、実は本名違いました(それまで自分の名前に違和感がある描写もない、本当に突然)、鳰舟以外にも風一族の大切なものありました(突然思い出す)等。
じわじわと情報をにおわせてラストで全て回収!というような事はなく、終盤で後出しのオンパレードで終わってしまったので気持ちが全然追いつかなかった。
そのうえ身体を重ねるシーンも「えっここで!?いやでも遮るものがないってナーヤちゃんも言ってるしすぐ近くの家には人もたくさんいるし、さすがに、ねえ?」とか思ってたら普通に始まってて、
それまでの歩んできた苦難の道のり、いつの間にか育まれた愛の尊さをかみしめるシーンが台無しになってしまった。
イラストは綺麗だったしCVもとてもよかったです。(大事なので主張しておく)
ご先祖や一族を弔う意味でもある灯篭達の元でそういうのはどうかと思う。

あとせっかく名前を取り戻したのにルヲ呼びが続くのも残念だった。

でもこういう、顔と声が良いけど背負ってるものがヤバすぎて本人が踏ん張って顔をあげないと周りを自滅させていくヤバい男、好きなんですよね。
(熱い手のひら返し)

個人的には二人でひっそりと旅を続ける未来が見たかったな。
二人旅の雰囲気がとても好きだったので。

青凛

ルヲが明前、雨前、そして本編ともにやばい業を背負ってる流れだったので覚悟してたけど、全くそんな事はなく、ルヲの後だと始終穏やかで温度差が凄かった。

ルヲでマツリカ村のやばさを実感していたので「村燃やしとかなくていいの?」とか思ってたけど、宮廷での清凛の扱いがわりとアレだったので「もう国ごと滅ぼしたほうが…」まで考えがいきついた。わりと攻略対象モンペなので。
この時点で「まぁ清凛に何かあったら燕來が国を亡ぼすやろw」って思ってた。冗談で。本当に冗談のつもりだったんです。

鳥たちとはよく会話していたけど、それ以外の描写はとくになかったのでいきなり蛇とか龍の設定出されても「うーん」としか思えなかった。
あまりにも後出しの設定が多かったのでここらへんからキャラゲーとして楽しもうと気持ちの切り替えを決意。

周囲からあらゆる事を抑制され、なおかつ時期王になるのを本人も諦めていたとはいえ…とはいえすぎない?ちょっと公子であり王位継承権を持つ自覚が足りなさすぎると感じる。全体的に。
龍になった姿を見られたし、今戻ったら混乱するだろうからしばらく仙郷で過ごせば?という誘いに深く考えずに同意し、
数日後、第一公子が王座に…の知らせを聞いて焦り始めるというのが理解できなかった。そりゃそうだろ、としか。

ナーヤが自分の意思を持たないのもあって恋愛に発展していく流れもちょっといまいち刺さらなかった。
個人的に一番盛り上がったシーンは第一王妃を装って助けにきてくれた時だったかな。
はじめて清凛に頼りがいを感じたし、なおかつあらゆる事を制限されている中で出来得る彼らしい手の差し伸べ方だったと思う。

正体が判明してからの展開がついていけず。
青凛は仕方ないとしても、他の龍たちの威厳のなさがストーリーをさらに盛り下げていると思う。
完全に説明係としての出演だった。

燕來との絆が好きだったのでそこをもっと掘り下げて欲しかったな。
絵と声は最高でした。

ゼベネラ

各ルートの中で一番きれいに話がまとまってるんじゃないかな、と思うルートだった。
ただ、振り返ると二人の気持ちが丁寧に描写されているぶん、他のサブキャラクター達のぞんざいな扱いがどうしても気になる。
そこらへんは上の方でたくさん書いたから割愛。

群王の教えの通り成人したはずのナーヤちゃんを花嫁にするためにウッキウキで迎えに来たら自分のせいで村八分になっちゃった挙句マツリカ村まで燃えるって、なんかかわいそうだな…。

ナーヤが白狼族との混ざり血云々もどうしても後出し設定の感覚が強くて、
ゼベネラが来る前に狼関連で何かにおわせが欲しかったな…というのが正直な感想。
実際ナーヤは群れ入りをしても最後まで狼の言葉わからなかったし、ずっと「でも本当は混ざり血じゃないのでは?」という可能性が頭にチラついてたくらいには説得力がなかった。

白君はいわゆる真相を担うフェイルートで登場はしていたし群れを率いた理由も、離れた理由も説明されてたのでわかる。
わかるけど、炯眼がナーヤに二つ引き継がれたからといって狼にだけ伝えてやべえ妖魔が巣くう土地に放置…ってあまりに責任感がないのでは?
狼も聞かれるまで伝えないし。さすがにゼベネラがかわいそうだ。
人の気持ちがわからない仙紅といえばっぽいが…。
ちょっと理解が追い付かない。理由はわかるが気持ちがわからない。

キャラクターとしては清凛の後の内容だったので頼りがいがすごいな、と感じた。
絵と声は最高でした。

二角獣

顔面ダークホース。
キャラクターの見た目でいえばルヲが好みだったけど、仮面を取った後の、人として過ごし始めた時の表情が強すぎてまさに顔面ダークホース。
他のキャラクターと違い、彼は今世で交通事故のごとく業を背負わされているのでやっかいな家庭事情に巻き込まれなかったぶん、一番穏やかな恋愛をしていたのでは…と思う。
相も変わらずナーヤは村に帰るという呪い以外の自分の意思がないのではっきりとした恋の芽生えはいまいちどこかはわからなかった。

旅をしていた時の甘える描写はかなりときめいた。
のもつかの間、森の中で及び始めたのはちょっと…。
ルヲ以来の「いや?さすがに?外だもんな?」という感情を追い越して画面のテキストは進んでいくので情緒もなにもない。

麗穹のバックボーンはこのルートで全て明かされるけど、他のサブキャラクター達と同様、設定の持て余しと感じてしまった。
対峙する前に二角獣から小出しに回想シーンがあればもうちょっと感情移入出来たんだろうが、何しろ「あなたに酷い事をさせてたのも事実だけど、救ってたのも事実なのよ」を自ら言ってしまう。
後から言われても押しつけがましいとしか…。

作品全体に言える事だけど、物語としての設定やテーマはわかるのに、どうしてもキャラクターたちがそれらに振り落とされてる感が強いと思う。

そこから二人で旅をするわけだけど、正直言ってダレた。
あとから振り返ってその旅が愛おしいものだったと思えるような内容ではなく、ただただ何も響かない旅だけが続いていくのでとてつもなく長く感じた。
ばっさり切って、それこそ麗穹との心理描写に当ててもらった方が彼の切ない気持ちを感じることができて楽しめた気がする。
本当に残念。

個人の感想です。

燕來

設定や性格で言えば推しのキャラクター。
潔癖で清廉で真面目で且つ好感度がほぼない状態から始まるキャラクターが好きなので、要するにフェチが刺さりまくってた。

性格や見た目は好きだけどシナリオはやはり…。
途中までは最高に楽しめたけど、お家騒動に巻き込まれてからはうーん、の状態のまま終わってしまった。

ただ目的と宿命がはっきりとしている分、他のルートよりかはブレずに読めたかな?とも思う。
旅の部分は相変わらずダレてしまったけど。

雨前と明前の性格の変わりようが激しくて、「?」となったままいつのまにかタイトルに戻ってた。
あれだけ執着して背負い続けてた家を突然捨てるのも、あれだけ身体を重ねて、ずっと気遣ってきた相手の目を抉るのも、なんか無理やり捻じ曲げられてる感じで。
いわゆる解釈違いに近い感情だろうか。
公式にたいして解釈違いもなにもないはずなのに。

「目を抉れば命に差し支えるかもしれない」(要約)とか言ってたけど、目玉抉られた次の日に元気に海泳いでた男が他のルートにいましたよね?って思わず突っ込んでしまった。
もはや体力の差とかそういう話ではないと思う。そこまでいくと。

先祖は弟の直系だったわけだけど、立ち絵もなんもないうえに白君と髪の色、髪型、目の色が似てるのも気になる。
途中で設定変わった?

ナーヤを気遣う優しい燕來も良かったけど、個人的には三人で旅をしていた頃のツンツンした姿が好き。
これは完全に個人の趣味です。

フェイ

所謂真相ルート、他のオトメイト作品よろしく大団円ルートだと思ってたのでびっくり。
真相ルートではあったが、他のキャラクター達の問題も一気に解決して大団円!のような内容は一切なく、
何ならフェイ先生の次回作にご期待ください!エンドだと思う、個人的には。

総じて成り変わり夢小説要素を感じた。
ので、何とも言えない気持ちになってる。

内容も大半は回想で、
なんというか、…なんというか。

前世で成し得なかった悔いに今世の人間達を巻き込まないでほしい。
この作品全体に言える事だけど、ほぼ全てのキャラが過去の遺恨に取り憑かれ、振り回されている。
そのテーマ自体は面白いものだけど、いかんせん設定の出し方、サブキャラ達の扱い、描写の取捨選択があまりに微妙すぎて終始「うーん」という気持ちにしかならない。

巻き込むなら巻き込むだけの掘り下げが必要で、
それらが

  • 月下ノ国の飢饉時代を担うヨウ

  • 子を産むことにより白狼族の終焉を象徴してしまったバオ

  • 悠久の罰を受け続ける麗穹

  • 彼の国の直系である玖家長男の燕忰

  • 悪として君臨する妖魔と第一公子(自称)

  • 現代に生きる仙紅を象徴する小蝶

だったのでは?と強く思う。
これだけ魅力的な設定、キャラクターを用意して、あれだけの文字数を消費してこんな雑な使い方は残念すぎる。

とくに事故死したとされる元第一公子なんかは二角獣がそれに値するのでは?と思ってたがそんなことは全くなかった。
紫惺が着ていたとされる衣服の切れ端が出てくるのだから、
子を流す人もいればそれを拾う一族もいるというのは第一公子が生きている暗示なのかな?と深読みもしていたが本当にそんなことは全くなかった。

小蝶に至ってはナーヤ達が唯一直接交流できる仙紅にも関わらず、
窮地に陥っても助ける事はなく、仙紅を示す活躍が用意されるわけでもなく、ただ仙紅という設定を披露されただけのキャラクターであった。
人を逸脱した存在とされる仙紅の威厳すら描写されていない。

設定を盛るだけ盛ったあとは攻略キャラとナーヤだけいい感じに終わればいい。
最早そんな印象しか残っていない。

ナーヤ

これほどまでに何も感じない乙女ゲーヒロインも珍しい。
村で愛される宝玉鑑定士、ダブル炯眼持ち、白狼族との混じり血、亡国最期の王妃の魂を持つ少女…。

これだけ設定盛り盛りなのに、彼女自身の意思が何も感じられない。
何度罵声を浴びせられても、殺されかけても、居場所を用意してやっても、呪いのように「村に帰りたい」と言うのでナーヤの気持ちが何一つ理解できず始終モヤモヤしていた。

攻略キャラを好きになる描写もいつのまにか…というのが多く、そして攻略キャラ達もどうしてナーヤを好きになったのかわからない。

とくに真相ルートは全てが打ち切り漫画のような設定の出し方だったのでフェイもフエンもどうして好きになったの?と疑問を抱いたまま終わった。

好きとか嫌いとかそういう以前に何一つナーヤの性格、意思というのが感じられなかった。

あと大事なシーンで「〜なんだ」「〜と言うんだ」という謎の言い回しが多用されてたのも気になる。
なんだってなんだ?

ただ各キャラクターによって装いが変わるのはとても可愛かったです。
でもそれだけです。

孔雀とフエンの転生成り変わり夢小説を読まされてる気分で終わったのが本当に残念。

めちゃくちゃシナリオ部分を酷評してますが、キャラゲーとしては最高に好きなのでこれから2周目やってきます。

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