A面はリヴァプール
「A面で恋をして」〜「59番街橋の歌」〜「Try Too Hard」〜「1969年のドラッグ・レース」〜「Iko Iko」
大滝サウンドには「「リヴァプール・ライン」と呼べる曲群がある。J.D.サウザーの「You're Only Lonely」にインスパイアされたロンバケに続く「Each Time」はブリティッシュ・ポップを頭に置いたものだったけれど、この流れを作ったのが「ナイアガラ・トライアングル Vol.2」だ。
(「A面で恋をして」の誕生秘話から続けて)
大滝:君たち二人(杉・佐野)がリヴァプール・イディオムだっていうのは百もわかってるわけじゃない? だから最初は俺もリヴァプール・イディオムでやろうと思ったの。そうしたらアルバムの統一感が出るし、で、思いついたアイデアがあったのよ。その時はまだ曲にしなかったんだけど。1曲目(A面〜)が後に「1969年のドラッグ・レース」になるアイデア。俺がイギリスって言ったらデイヴ・クラーク・ファイブだから(笑)。あえて、DC5の「トライ・トゥ・ハード」をイントロにしてるってことは、リヴァプールでっせという宣言。コード進行はホリーズの「ジェニファー・エックルズ」とポール・サイモンの「59番街橋の歌」と同じ(笑)(レコード。コレクターズ 2012,4月「ナイアガラ・トライアングル VOL.2」記事より)
……というわけで、A面から59番街、DC5を経てドラッグレースへとつないでみました。
ここで「1969年のドラッグ・レース」イントロの謎が一気に解ける。このフレーズ、大滝作品には他に例がなく、あきらかに彼のサウンドではない(つまり借り物感がすごい)部分なのだが、まんまデイブ・クラーク・ファイブの「Try Too Hard」なのだ。……ってまあ、ご本人の発言を確認しただけなのだけれど、オリジナル(ただし米盤)のアナログと聴き比べてみると、その空気感からも大滝のリヴァプール・メソッドが見えてくる。
「よく "ストーンズ派" とか "ビートルズ派" とか言うけど、どっちも好きだった。あえてストーンズかビートルズかと訊かれたら、デイブ・クラーク・ファイブ(笑)。 小林旭か石原裕次郎かって訊かれれば、宍戸錠。そういう奴なんだよ(笑)。(Amigo-Gara-ge:ナイアガラ・ラジオ館)」
というように、大滝にとってブリティッシュ・ロックといえばデイブ・クラーク・ファイブ。日本じゃ「ビコーズ」くらいしか知られていないが、当時英米ではビートルズに並ぶ(場合によってはビートルズ以上に)人気があったグループなのだ。それがその後さっぱり音沙汰がなくなったのには理由があり、これがまた大滝に通じる部分があるのだが、そのハナシはまた。
A面で恋をして
https://youtu.be/drCs5Fz6xAQ
The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy) - Simon & Garfunkel
https://youtu.be/CHlgNSW1S2o
Try Too Hard - Dave Clark Five
https://youtu.be/qSvSwFCLvh8
1969年のドラッグレース
https://youtu.be/ubskQHxdHhU