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"学会員"インタビュー⓪運営2名

天海春香学会Vol.2出版記念企画として、「学会員」のみなさんへインタビューを行うシリーズ企画。

今回は第0回と称して、運営のそにっぴーとスタントンによる対談形式のインタビューを行いました。自作品や天海春香学会の裏話についても話した内容を、ぜひご覧ください。

文:スタントン


——

無印エンド

スタントン:
早速なのですが、天海春香に出会ったきっかけを教えてください。

そにっぴー:
私はもともと、バンダイナムコが出しているエースコンバットというゲームが好きだったので、ニコニコ動画でもエスコンの動画を探していたんですね。
それで、エースコンバットってアイドルマスターとのコラボをした戦闘機があって、それを使ったMAD動画を見つけたんです。
美希のrelationsを使ったMAD動画だったんですけれど、それがきっかけでアイマスにはまって、ニコマスを見ていくうちに、「このかわいい子だれだ?おお、天海春香って言うのか」みたいな感じでズブズブとはまっていきました。

スタントン:
見た目から、春香のことを好きになったのですか。

そにっぴー:
そうですね。最初は見た目だったと思います。

スタントン:
ちなみに、それはいつぐらいのお話でしたか。

そにっぴー:
3年くらい前の夏でしたね。

スタントン:
結構興味深いのは、そにっぴーさんは3年前からアイマスに入られたのでどちらかというと新参の方なのだと思うのですが、行動や思想は比較的古参っぽいのですよね。現にこうして同人サークルだとか、企画の主催もされていますし。

そにっぴー:
それは……ニコマスが一番盛り上がっていた時期っていうのが、どうしても無印時代になるので、XBOX360の動画が多いと思うんですよね。

スタントン:
アニマスより前ですね。

そにっぴー:
なので、再生数の多い動画っていうのがどうしてもその頃の動画が中心になってくるので、天海春香といわゆる "無印エンド" っていうのが自然と結びついてくるんです。私がアイマスに入った時期的にはミリシタが稼働を始めていた時期なんですけれど、ニコマスにハマっていくなかで、無印のドーム成功エンドも目にするようになって……。
あとは、実際にXBOX360版もプレイするようになりました。悲しさや切なさのあるあの物語を経験してしまうと、どうしてももうちょっと……「この女の子をなんとかしてあげたい」っていうやり切れない気持ちが強くなっちゃいました。その経験が、いままでの「天海春香を愛したい」っていう活動に結びついているのかもしれませんね。無印には人の心を揺り動かす一期一会の物語があるのだなと思っています。

世代間闘争

そにっぴー:
スタントンさんと天海春香との出会いをお聞かせ願えますか。

スタントン:
中学時代のお話なんですけれど、元々ニコニコ動画を見るオタクだったんです。それで当時……2008年から2010年くらいって東方・ボカロ・アイマスが「御三家」と呼ばれるくらい主流なコンテンツだったんですね。ただ、東方とボカロは曲とかを知っていたんですが、アイマスは全然知らなかったんです。そんなときに2010年9月18日に「9.18事件」というのが起きまして、ニコニコ動画のランキング上位にアイマス関係の荒れている動画が上がっていたんです。その時に「そういえばアイマスって知らないよなぁ」って思ってアイマスタグの動画を見ていたところ、「拗ね春香さん」の動画に出会ってしまって、「めっちゃ可愛い!」って思って春香Pになりました。

スタントン:
当時ってアイマス2やアニマスが始まる関係で新参が入りやすかったんですよ。ゲームとかSS読んだりとかもそうですが、アイマスのウエハースを買ったり、プッチンプリンを買ったりして楽しんでいましたね。大学に入ったあとに「濃いオタク」になってしまいましたが……。

そにっぴー:
面白いのが、ニコニコ動画から入って春香さんに一目惚れするようにはまっていくのが共通しているな、と思いました。

スタントン:
私たちの世代って、やはりニコニコ動画が中心でしたからね。

そにっぴー:
聞きたいのが、「9.18事件」ってネガティブな事件だったと思うんですけれども、それがきっかけでスタントンさんは天海春香に出会えたわけでして、それについて何か思うことはありますか。

スタントン:
天海春香に出会って、いまこうして幸せに過ごせているという意味では9.18事件に感謝していますし、あれがなかったらどうなったのかわからないですよね。ただ、(アイマスPになった)いま考えてみると、あの事件ってバンダイナムコ側がアイマスに対してどう考えているのかが如実にわかる事件じゃないですか。なので、ASに対してもそうですが、他のアイマスでもたまに起こるいざこざの端緒になっていると考えるとちょっと……複雑ですね(笑)。

そにっぴー:
もう一つ聞きたいんですが、大学に入ったときからこう……「濃いオタク」になったと仰っていました。そのきっかけは何かありましたか。

スタントン:
私たちの世代って、高校か大学に入るタイミングでスマホデビューしたと思うんですよ。それで、私は大学に入るタイミングでスマホデビューしました。当時はiPhoneに「アイモバi」があって、「春香さんアイコンだしやってみるか~」って思っていたらドハマりしちゃって。そのアイモバiの攻略情報を探すためにTwitterを始めたんですよ。それがきっかけですね。アイモバiの繋がりで……名前出しちゃうと野武士さんとかぴかぽんさんとかミワのいぢさんみたいな、リボンいつも食べてそうな人達の……そにっぴーさんわかります?

そにっぴー:
ええ。言いたいことはわかります(笑)

スタントン:
そういう方々のコミュニティに入れていただけたんです。そこで、自分のなかの春香さんのアイデンティティが醸成されていった感じですね。あとは、Twitterを始めると当然プロデューサーさん同士のつながりもできますし、それから大学生だったので小さいイベントにもよく行けたので、そのあたりも「濃いオタク」になってしまったきっかけでもありますね。自分自身で濃いとかいうのアレですが(笑)。それから、フラスタ企画だとかオフ会とかの主催もするようになりましたね。

そにっぴー:
ちなみに、いつ頃から主催みたいなことをされていたんですか。

スタントン:
だいたい2017年とか2018年くらいですかね。これは私の持論なんですけれど、私がTwitterを始めた2014年くらいまでって、「アニマスから入りました」っていうのは「新参」を意味していて、私もその新参の世代だったんですよ。我々の上には無印とかSPから入ってきた古参の人がいるような。それで、2015年を境に古参の方が他のジャンルに移ったり、ご家庭ができたりしてどんどんいなくなっていくんですよ。
それから、2017年、2018年くらいになると今度はミリシタがきっかけで765に入ってくる方が増えてきたんです。その時に、「自分はいままでのように、公式や古参Pの供給を受け続けるままで良いんだろうか」って思い始めて、それで行動を起こすようになりました。

そにっぴー:
もっと前から活動されているのかと思っていました。行動しなくちゃみたいな思いに駆られたという感じですかね。同じようなことを思う方は他にもいらっしゃるんでしょうけど、そこで行動できるのは素直にすごいなって思います(笑)。

スタントン:
私ってほら(入社即)退職もしてるじゃないですか(笑)。少し病気かもしれないのですが、じっとしていられないんですよね。

スタントン:
何かやりたいと思ったら行動しますし、自分だけで行動できなかったら退職代行会社だったり、そにっぴーさんだったり、外部のリソースを使わせていただいて行動しちゃいます。

そにっぴー:
やりたいと思ったことをやらずにはいられないっていうところは春香さんっぽいなって思います。

思い出と事件

スタントン:
天海春香学会ができてからこうしてVol.2まで出せましたけども、いままでで印象に残っていることや思い出は何かありますか。

そにっぴー:
色々なところで語っているんですけど、「天海春香学会」という名前が使われたのが、自分の人生のなかで一番大事件だったなって思います。


そにっぴー:
スタントンさんに巻き込まれながら始まったんですけど、Vol.2も出せましたし、軌道に乗れたかなと思っています。そんなスタントンさんは、どうして「天海春香学会」って名前に乗ろうと思ったんですか。

スタントン:
元々同人サークルを作って春香さんの本や合同誌を出したかったので、サークルの名前に春香さんを入れたかったんです。


そにっぴー:
なるほど!先に「天海春香の本を作りたい」っていうコンセプトが先にあって、それを具体的にするアイデアが「天海春香学会」だったってことですかね。

スタントン:
そうです。「天海春香学会」っていう名前を見て「あっ、これだ」と思いました。私自身はイラストが描けないので、どうしてもジャンルとしては評論とか考察方面にならざるを得ないんです。ただ、(大学の)アイマス研究会での活動として対談記事やレポートは作っていたので自信がありましたし、「学会」っていう名前なら文章メインでも大丈夫ですから良かったんです。Vol.1のときには「文章メインの~」って言葉もついていましたね。

そにっぴー:
他に思い出とかはありますか。

スタントン:
「思い出」とはやや離れるのですが、天海春香学会で活動してから、会社でのメールや手紙などを書く場面で、日本語の文法だとか言葉の使い方などに気を遣うようになりましたね。

そにっぴー:
あはは(笑)。漢字に変換するのか、しないのか、とかですね。

スタントン:
補助動詞はひらがなにするんだよな、とか、あと普段のツイートでも「三点リーダ」に気をつけたり……(笑)。

そにっぴー:
私は大学で論文も書いていましたし、多少の日本語力には自信があったつもりだったんですけれど、天海春香学会で他の方が書いた文章をチェックさせていただいていて……意外と文法も語彙力も(自分の)力が及ばないんだなって思いました。

スタントン:
偉そうに査読してますけど、私たちも結構誤字とかありますからね(笑)。


演劇と政治

スタントン:
まずそにっぴーさんの「あとがき」なんですが……そにっぴーさんって格好つけて書くの好きですよね(笑)。

そにっぴー:
あはは(笑)、バレてしまいましたか。Vol.1とVol.2で編集後記を担当させていただいたんですけれど、やっぱりこう……演出的にビシッとキメて、その演出で人の心を動かしたいって思いがあるんですよね。

スタントン:
そにっぴーさんご自身のご経験も、その考えに含まれていると思います。

そにっぴー:
そうですね。私は中学、高校と演劇部に入っていまして、演じるだけじゃなくて舞台演出を担当するということもあったんです。そのときに自分がこだわったのが「ビシッと見せ場を作る」。人の心をその見せ場で動かしたいっていうのを意識していまして、それが今でも残っているんじゃないかなって思います。少しでも心が動いてから、本を閉じていただければな、と。

スタントン:
私の場合は、普段Twitterでは春香さん大好きとか色々熱っぽく書いているんですが、こういうときには少し冷めた感じでしか書けないんですよ。なので「はじめに」もさらっとした感じで……。

そにっぴー:
Vol.1のときには「ドーナツの穴」の例え、今回は「サラダボウル」の例えを出していましたね。

スタントン:
そうですね。今回のサラダボウルに関しては、前回ドーナツの穴を出してしまったので食べ物のメタファをまた出さなきゃ!って義務感に襲われたからなんですが……(笑)。あと、私は大学の専攻が政治学で、結構政治的な文脈で「人種のサラダボウル」が出てくるんですよ。ちなみに、そにっぴーさんは「人種のるつぼ」って聞いたことはありますか。

そにっぴー:
あります、あります。社会の教科書とかで出てきたやつですよね。

スタントン:
そうです。その「るつぼ」も「サラダボウル」も多文化社会の文脈で出てくる言葉ではあるんですけれど、「るつぼ」だと(文化同士が)溶け合って一つになってしまうんです。一方で、「サラダボウル」だと、混ざってるけど溶けてないじゃないですか。だから、天海春香学会の(いろんな考えを持つ人が天海春香の作品を出しているという)コンセプトには、サラダボウルがあってるんです。

そにっぴー:
天海春香について書く/描くなら誰でもwelcomeですし、今後もそうでありたいなと思いますね。


運命と哲学

スタントン:
今回、そにっぴーさんは「天海春香の運命論」というタイトルで、哲学を使った記事を書いてらっしゃいました。そもそも、どうして哲学を(文章に)使われたのですか。

そにっぴー:
「運命の出会いを信じてる?」って言葉が、なぜ天海春香と結びついているんだろうという疑問が元々私のなかにあったんです。今回の文章では特に引用していないんですけれど、大学時代の専攻が哲学だったので、いままで読んだ本を使って文章を書けないかな、という思いがありました。

スタントン:
「運命」を論ずるためには哲学が必要だったのですか。

そにっぴー:
そうですね。「偶然性と運命」という木田元さんの——この方も哲学者なのですが——この本を読んだことがあるので、これを題材に書こうと最初は思っていたんですね。


そにっぴー:
ものすごく簡単に言ってしまうと、文章のなかでも紹介した「解釈的運命論」が、この本で紹介されている運命論なんですね。ただ、どうせならもっと最近書かれた新しい本を使いたいな、と思っていたところで入不二(基義)さんの著作を見つけました。


スタントン:
なかなか斬新な発想をされる方ですよね。

そにっぴー:
本文に書いたんですけど、(入不二さんの本を読んでいると)我々は想像していなかったけれども運命ってそういうものかもしれないっていう思いが出てきましたし、天海春香の「運命の出会いを信じてる?」というのを説明するプロットが電撃的に浮かび上がってきました。


文献とモー娘。

そにっぴー:
スタントンさんの「天海春香の謎 ——765プロに入るまでの空白期間——」についてお伺いします。簡単そうでヒントのないテーマだったと思いますが、このテーマを選んだきっかけは何ですか。

スタントン:
前回と同様に、文献を探して引用して論を展開するっていう学術的なアプローチで文章を書きたいとは思っていたんです。それで、色々テーマを考えてみたんですけれども、書けそうなのがこれだったんです。(論を展開するうえでの)ヒントは少なかったのですが、アイマスをメタ視点で見つつ作品の位置づけを確認することによってうまく書けたのかな、と思います。

そにっぴー:
面白いのが、作品としてのアイドルマスターの原型となった「モーニング娘。」の年齢を出して説得力を持たせていたじゃないですか。それが学会っぽくていいなと思いました。

スタントン:
「学会っぽい」という話で言うと、Vol.2で前回の記事を引用してくださった方が何人かいらして嬉しかったです。(今回の文章については)正直、文献を拾い切れていないんじゃないかという思いがあるので、ぜひ、Vol.3でこの空白期間について掘り下げてくださる方がいたらうれしいですね。

そにっぴー:
文章を読んだ方が、その方の視点で説の補強だとか、議論の積み重ねをしてくださるのが天海春香学会という作品にとって理想なんじゃないかなって思いますね。


他作品について(イラスト)

スタントン:
イラストで気になった作品はありますか。

そにっぴー:
私のお気に入りはですね……やはりミワのいぢさんのイラストです。さすがミワのいぢさんというか、無印の春香さんを題材にしていて、春香との一期一会のストーリーを一目で追体験できるようなそんなイラストになっているんですよね。それから、このイラストに書かれているセリフ……言葉?それが無印の春香さんに心を動かされた方にはぶっ刺さるんじゃないかなと思います。ぜひ見ていただきたいですね。

スタントン:
私的には、このイラストの左下から二番目が「秋のお仕事1」っぽいので好きです。

そにっぴー:
あはは(笑)。恐らく拗ね春香さんですね。スタントンさんは、お気に入りのイラストはありますか。

スタントン:
そうですね……一つ選ぶとしたら、夏井わたさんのイラストですね。イラストで寄稿していただく方には申し訳ないことに、学会誌ってモノクロで掲載しているじゃないですか。だから、カラーをモノクロにしたり最初からグレースケールに合わせて描いたりと皆さんされていると思うんです。それで、このイラストについてももちろんモノクロなのですが、モノクロならではのテイストが出ているんですよね。吐息の白さが強調されて、冬の寒さ、冷たさが如実に表れていますし、イラストの空気感がすごく表現されていて好きなんですよね。

そにっぴー:
モノクロでしかできないことがあると思うんですが、夏井わたさんの作品については儚げな感じがすごく出ていますよね。

スタントン:
あと、私は春香さんの顔面が好きなので、顔が大きく描かれているのも好きなんです。もふりたい。

そにっぴー:
もふりたい春香さん。


他作品について(文章)

そにっぴー:
私からひとつピックアップさせていただくと、れぽてんさんが書かれていた『Cleaskyと「笑って!」〜ミリオンライブ6thライブツアーがもたらしたもの〜』を紹介したいです。


スタントン:
やっぱり「笑って!」ですね(笑)。

そにっぴー:
ですね(笑)。私は天海春香の「笑って!」が一番好きで、ミリオン6thツアーで春香じゃないユニットが歌ったのが私にとって大事件でした。当時かなり取り乱していた記憶がありますし、いまでは好きですけれどCleaskyは私にとって "因縁" の相手だったんです。それで今回、宮尾美也PであるれぽてんさんがCleaskyによる笑って!の披露について、どういう演出で披露されたのか、(ユニットと楽曲との間に)どういう繋がりがあるのかを丁寧に説明されていたんです。読むだけで光景が思い浮かぶような、本当にすごい文章だと思います。

スタントン:
美也Pのれぽてんさんでないと書けないですよね。

そにっぴー:
私は笑って!が好きなので、この曲について書こうと思えばいくらでも書けると思うんです。ただこの文章については、宮尾美也ちゃんのプロデューサーの立場から、ASのカバーをした理由はこういう意味があって、そのカバーがあったからこそ春香さんのことが好きになって……という話なので、私には書けない笑って!の話なんですよね。絶対書けない話なので、悔しくもあり、この文章が輝いているな、とも思います。

そにっぴー:
スタントンさんは、注目した作品はありますか。

スタントン:
文章の部で一つ挙げるとしたら、フブキさんの『理想を瓶詰め』ですね。なかなかの大作で……といいますか、今回長文SSが多かったですよね。

そにっぴー:
おっしゃる通りですね。ショートじゃないだろ!みたいな(笑)。SSというより、小説の域に達している作品が多かったなって印象があります。

スタントン:
そうなんですよね。それで、(長文のSSの配置を考慮しないといけなくて)かなり順番を組むのに苦労したのですが、『理想を瓶詰め』については早い段階で——夏にご提出いただいた頃から——大トリ候補でしたね。

そにっぴー:
そうでしたね。

スタントン:
物語の魅力って大きく二つに分けられると思うんです。一つは、私たちの想像を超える物語によって、楽しませてくれるもの。もう一つは、共感できる物語によって楽しませてくれるもの。フブキさんのこの作品は後者の魅力がものすごく詰まっているんですよ。私がアイマスを知ったときと比べて、アイマス(のコンテンツ)は横にどんどん広がっていって、ミリシタなんかでは765プロに52人もアイドルが居る。私はその状況下でもやっぱり天海春香だけを追っているんですが、そういう意味でこの作品のプロデューサーにはすごく共感できるんです。

そにっぴー:
そうですね……この作品を読んだときに、天海春香学会に投稿された文章のなかで初めて泣きました。色々な春香に接してしまう申し訳なさもあり、春香に "こういうセリフ"を言ってもらえて救われた気持ちもあり、という感じです。うまく魅力を言えないんですけど……。作中の最後で感情が揺れ動いて、そのまま編集後記に流れていくので、そういう意味でもトリに置けてよかったなと思います。

スタントン:
最後のほうで「謎」が生まれる終わり方ではあるんですけれども、全体的には読後感がすっきりする終わり方でもあります。

そにっぴー:
実はこの作品について一つ、今だから言えることがあるんです。実は文字間隔が少し違うんですよ。少し間隔が広いんです。

スタントン:
えっ、初めて知りました……あ、本当だ。

そにっぴー:
逆に、minecoPさんの『春香ちゃんを降りた日 ー或る元天海春香推しの回想ー』についてはオタクの長文語りっぽく文字間隔を詰めているんですよね。

スタントン:
そうですね。それはminecoさんとも確認しましたよね。

そにっぴー:
一方で『理想を瓶詰め』については、編集の最後のほうで(文字間隔の違いに)気づいたんですが、ページ数が変わっちゃうかな~、統一しないとダメかな~とか思っていたんです。
それで、この作品を紙に印刷して眺めたんですが、それこそ一文字一文字を……瓶に詰めていくような、かみしめて読めるような感覚に襲われたので、「このままでいこう」と思って文字間隔が少し広いまま掲載しました。

スタントン:
それから、(作中にある)菓子折りを春香さんの家に持っていくシーンがすごく好きなんですよ。私自身が会社員になったからだと思うんですけれど、「このプロデューサーならこうするよな」って行動を取っていますし、プロデューサーがどういう人生を送ってきて、どういう風に働いているのか、丁寧なキャラクター付けがされているんです。その部分もよかったです。

そにっぴー:
情景を想像しやすいですし、春香にしろ、他のアイドルにしろ、プロデューサーにしろ「ありそうだな」と思わせてくれるんですよね。

スタントン:
……いやあ、査読しているので全作品レビューもできるんですけど、時間が無限にかかりそうですね。

そにっぴー:
そうですね(笑)。他の作品のレビューについてはインタビューの時にやりましょうか。


次回作について

スタントン:
次回はどんな作品を書きたいですか。

そにっぴー:
もちろん未定なのですが、Vol.1みたいなミリシタの春香さんコミュを扱いたいと思っています。

スタントン:
ミリシタですか。

そにっぴー:
というのも、意外とミリシタのコミュを横断するようにつなげてみたり、深く考察されていたりする研究をあまり見ないんです。でも、ミリシタの春香さんもまだまだ語れると思うので、掘り下げていきたいなって思います。

スタントン:
いいと思います。ミリシタって稼働開始からもう3年経ってますから、情報量も相応に増えていて、研究対象になり得そうですよね。

そにっぴー:
ええ。そういう視点で書いてみたいなと思います。……また格好つけた文章になると思いますが(笑)。逆にスタントンさんは「こういうのを書きたい」っていう構想はありますか。

スタントン:
次回も比較的学術的というか、アカデミックっぽい手法の文章を書きたいとは思っています。そのなかでもやろうとしているのが、「テキストマイニング」です。りゅうせいのたきさんという方が無印春香さんのセリフのデータベースを作ってらっしゃるんですが、それをテキストマイニングにかけたら面白いんじゃないかと。


そにっぴー:
ほう……また新しい発見がありそうですよね。

スタントン:
そうですね。いまはAIの技術が発達して、無料でも良質なテキストマイニングツールが出回っているんですよ。例えば、「源氏物語」とか「夏目漱石」とか、実際の文学研究ではテキストマイニングを使用した論文があるんです。なので、ゲームのセリフでも使えるんじゃないかな、と思っています。例えばですけれど、無印春香さんのセリフで低ランク時と高ランク時とで頻出語がどう変わるのかとか、テキスト上の感情はどう変わるのかとか、ミリシタのセリフと無印のセリフの比較とか、やれることはたくさんあると思います。もし、「学会誌に参加したいけれどもネタが浮かばない」という方がいたら、テキストマイニングにチャレンジされるのもいいかなと思います。


ぶっちゃけ高い?

スタントン:
特典についてもお話しましょうか。

そにっぴー:
Vol.2が鈍器のような厚さになってしまって、(Vol.1と比べて)どうしても価格を上げざるを得ないってなった時に、お得感を出したかったんですよね。

スタントン:
仰る通りですね。私たちって同人サークルの主催経験が短いので一般参加者と同じ感覚がまだ残っていると思うんですが、漫画やイラスト集でもない本に、しかも通販で2000円出すのって正直躊躇すると思うんですよ。

そにっぴー:
ぶっちゃけ……高いですよね。

スタントン:
そうですね。2000円でも正直赤字ではあるんですが、赤字になるのは——春香さんと同じ色だし——良いので、より多くの人に手に取ってもらえたらな、と思って今回、ポストカードと名刺をつけました。

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そにっぴー:
ポストカードなんですけれど、「綺麗なポストカードでよかった」というコメントもいただいています。

スタントン:
ななみんさんが相当こだわってらした表紙イラストなので、文字が入っていない、大きなサイズでみなさんにお届けできてよかったと思っています。

そにっぴー:
表紙イラストが(ななみんさんから)送られてきて「いいな」と思ったんですけれど、その後すぐに光の加減を調整されたものが送られてきたくらいには、こだわってらしたのかなと思います。あとは名刺についても少しこだわりましたよね。

スタントン:
そうですね。名刺についてはデザイン案を6個か8個くらい考えて、そにっぴーさんと2人で決めたんですけれど、表面に関してはシンプルなデザインで作れてよかったです。

そにっぴー:
今回は、学会誌とは別に頒布しているグッズもありますよね。「春香ちゃんシール」

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スタントン:
そうですね。ななみんさんの描き下ろしで、可愛らしいですよね。大変ご協力をいただけて……。

そにっぴー:
ええ。どんなサイズにするとか、どういったテーマにするのかとか色々ご相談させていただきまして、最終的には気軽にペタペタ貼れるシールになってよかったと思います。

スタントン:
このデフォルメの春香さんが可愛いし、ポップなシートシールになりましたね。

そにっぴー:
シールに関しては今後のイベントなどでも頒布できるように気合い入れて作ったので、まだまだ在庫はあります。気軽にポチっていただけたらな、と思います。今後作っていきたいノベルティはなにかありますか。

スタントン:
やっぱりボールペンは作ってみたいですね。大学のオープンキャンパスだとか、実際の学会でも配られているものなので「学会らしい」ですし。価格が悩みどころですけどね(笑)。

そにっぴー:
私は学会誌の発送を担当しているんですが、ボールペン一本でしたら封筒に入りますよ。やっぱりボールペンは有力候補ですね。


いつまで続けるの?

スタントン:
天海春香学会って、いつまで続けましょうか。

そにっぴー:
この世に天海春香が居る限り!

スタントン:
……。

そにっぴー:
それは冗談として、お互い社会人をやりながら作業をやっているので、具体的に「いつまで」という想像はできないですよね。

スタントン:
ええ、そうですね。……ただ、お互いの人生もありますし。

そにっぴー:
そうですね……。ただ、最低Vol.4まではやりたいですよね。

スタントン:
以前、ななみんさんが「Vol.4まであることを前提に表紙考えてる」みたいなツイートをされていたと思うので、春夏秋冬の表紙イラストはぜひ見たいですね。

そにっぴー:
前回は始まりということで春っぽい春香さん、今回は夏の春香さんということで、あと秋・冬ですか。ななみんさんにご協力いただけるのであればぜひ見たいですよね。Vol.1・Vol.2と「来た作品を全部掲載する」というスタイルをとってきましたが、それを引き続きやるのもいいですし、ここらで変化を加えて違う魅力を出していきたいな、とも思っています。

スタントン:
そうですね。あと付け加えるなら、天海春香学会のやり方って真似しやすいと思うんですよ。PDFのイラストやWordの文章を募って、それをひとつのPDFファイルに加工して印刷所へ持っていくだけなので、イラレやフォトショもいらないですし。だから、私たちが辞めてしまった後に天海春香学会がまたできてもいいんじゃないかなと思っています。

そにっぴー:
新・天海春香学会みたいな?

スタントン:
そうですね。私たちが春香学会をやっている間にもう一つの春香学会ができて、「学説対立」みたいなことが起こっても面白いかも(笑)。

そにっぴー:
そうなるとモチベーションも上がりそうですね(笑)。まあ、まだやりたいことも、やらないといけないことも、やれることもまだ残っているので、まだ続けられるということでお互いいいんですよね?

スタントン:
もちろんです。ただ、死ぬほど査読が大変だということはこの際伝えさせていただきます(笑)。


そにっぴー:
あはは(笑)。我々も誤字脱字が多いんですけれども、提出前に一度ご確認いただけると嬉しいです。そうしていただけると我々の睡眠時間が確保できるので……宜しくお願いします(笑)。あと考えているのが、いまは私たち二人で査読をしていますけれど、カバーしきれない分野の文章は「査読委員」みたいなものを募集して査読していただくのもいいかもしれません。

スタントン:
そうですね。今回は特に、じんさんの生化学系の文章いのうえさんの英語の査読は結構苦労したので、今後そういう系の文章についてはお願いするのもいいと思います。


あなたにとって、天海春香とは

スタントン:
インタビューですと、定番の「あなたにとって天海春香とは」という質問があるじゃないですか。ただ、私たちは名刺の裏に答えを載せているんですよね。だから、Part2ということで名刺の答えとは別のものを答えませんか。

——あなたにとって、天海春香とは。

そにっぴー:
うーん、「こびりついて落ちない」

スタントン:
えっ。

そにっぴー:
表現としては汚いですよね(笑)。天海春香の運命論という文章を書いてしまうように、天海春香には——無印エンドのように——納得のいかない物語がそこにはあるので、だからこそ主体的に春香に関わっていきたいという思いがあるんです。ただ、ミリシタで春香さん以外の子も好きですし、イベントも走っているんですよ。もしかしたら、他の人であればプロフィールに「担当:春香、○○、○○……」って書いているかもしれない。なんですが、私がここまで心を取り乱してまで好きで居続けたいのは天海春香だけなので、そういう意味では「こびりついて落ちない」っていう存在なんじゃないかな、と。


——あなたにとって、天海春香とは。

スタントン:
人生!……ではなく「生活」、ですね。

そにっぴー:
人生でなく敢えて生活を選ぶんですね。

スタントン:
こういうインタビューでよく聞くじゃないですか。「○○は私にとって人生です」みたいな。でも、人生ってなんか壮大な感じがしてしまって遠い感覚なんです。一方で、私は春香さんのことが好きなんですが、身の回りのものが赤かったり、普段から「春香さんならどう思うかな」「この服は春香さんに合うかな」みたいに考えたりしているんです。もう身近、まさに生活なんですよ。だからこそ「生活」なんです。


打ち合わせ以外でさほど会話をしないため、面白いインタビューでした。皆さんはいかがでしょうか。

「もう一つの天海春香学会」とも称されるインタビュー企画を開始いたします。

参加条件は天海春香学会Vol.2の寄稿者であることのみですので、お気軽にお声掛けください!

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