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そこは誰もがかえる場所 ~ダイヤモンドダイバー♢の魅力を再考する~

(筆者:そにっぴー)

0.はじめに

 本日は2021年8月19日。ミリシタ内ではプラチナスターツアービンゴ『真夏のダイヤ☆』が始まり、界隈はすっかりハジけた夏気分である。
 実はちょうど1年前の2020年8月19日、もう一つのダイヤモンドが産声を上げていた。

 ダイヤモンドダイバー♢
 美しくも温かいキラメキ。
高槻やよい・天海春香・我那覇響のトリオユニットだ。

 本記事では、我らが天海春香が活躍するダイヤモンドダイバー♢のミリシタ内実装1周年を記念し、改めてダイヤモンドダイバー♢の魅力を簡潔に紹介したい。
 普段の天海春香学会の記事よりは春香成分が薄いかもしれないが、ダイヤモンドダイバー♢が好きな皆様にお読みいただければ幸いである。


1.“海”のイメージと向き合う ~イベントコミュ等より~

 ダイヤモンドダイバー♢のイベントは2020年8月19日から26日まで行われた。イベント内のコミュは、「自分と海」をテーマに絵を描くという宿題と向き合うやよいを中心に描かれている。
 やよいの出身は海に縁がない埼玉県であり(プロフィール参照)、「自分と海」というテーマに苦悩していた。プロデューサーはダイヤモンドダイバー♢としての仕事の中で海のイメージを掴むことを提案し、沖縄出身の響、金沢出身の紬から話を聞いたり、春香の地元の海へ訪れたり、と様々な海に触れていく。最終的に、やよいが本当に興味があったものは海そのものではなく「海の近くで営まれる生活」だったということに気づいた。エピローグでは、「私の家族が海の近くに住んでたら」というテーマで宿題を提出し、無事先生にほめてもらえた様子が伺える。
 このイベントコミュのポイントは、家族を大事にするやよいの魅力が、“海”と向き合う中で深まっていくところにあると思う。水族館での仕事(という名の楽しい見学)の後、響はイルカのイル代との思い出を振り返る中で、故郷沖縄の海をこう語った。

だから、自分にとって海は庭で、遊び場で、家族のいる場所って感じかな!
(イベントコミュ第3話 Blue splash!)

 この響の言葉を受け、やよいは新たな気づきを得る。

響さんの海って、とってもあったかい海なんですね!
(イベントコミュ第3話 Blue splash!)

 このやりとりが、前述したとおりやよいが「海の近くで営まれる生活」に興味があるということの気づきに後々繋がっていくことになる。

 また、イベント報酬カードの覚醒コミュにおいて、やよいはさらなる深い気づきを得る。
 海に郷愁を感じるというPに「郷愁」の意味を聞いたやよいとPは、このようなやり取りを見せる。

やよい:
私、海と関係ないところで育ったのに、なんだか海が懐かしいなーって思うんです!
P:
不思議だよな。もしかすると、人間はみんな、生まれながらにして海の記憶があるのかもしれないな。
やよい:
あ! だからみんな、海が好きなんですね! ナットクしましたー!
(中略)
今度の曲も、みんな海が大好きだ―って感じで歌ったら、もっと良くなるかも!
(「ダイヤモンドダイバー♢ 高槻やよい」の覚醒エピソード)

 ここでPが言っている「みんなが生まれながらにして持っている記憶」は、大きく2つの意味が考えられるのではないだろうか。
 1つ目は、人類史としての記憶だ。心理学者ユングが提唱した「集合的無意識」を想像するといいかもしれない。広辞苑の説明がわかりやすいので引用する。

個人的な経験を超えた、人類に普遍的にある無意識。われわれの心の深層には、われわれの祖先の経験したものが遺伝してきているとする考えによる。
(広辞苑「集合的無意識」)

 地球における生命の進化の歴史は海から始まっており、そこから連想して「人類には共通して、海に対する無意識の郷愁を抱いている」と言えなくもないのかもしれない。
 2つ目は、胎児の記憶だ。(こちらはより一層著者そにっぴーの想像の話で、明確な出典が思いつかないことを申し添える。)人間は母親の胎内にいる間、羊水に包まれて育っていく。胎児の記憶が残るという話の真偽については検討の余地がありそうだが、少なくともすべての人間は羊水に包まれて育った経験をしていると言える。もしも羊水を海と表現するならば、海に対する郷愁は、自分を生んだ母に対する郷愁のアナロジーなのかもしれない。
 いずれにせよ、ダイヤモンドダイバー♢の活動を通してやよいは「海」と「家族」、そして自分がパフォーマンスを見せる相手である「みんな」を深く深く結びつける経験をした。これはダイヤモンドダイバー♢のユニット活動のみならず、今後のやよいの表現の深みにもつながっていくことだろう。

 ここまで触れてきた「あたたかい海」「懐かしい海」というイメージは、実際イベント楽曲『Deep, Deep Blue』に色濃く反映されていると言えよう。

まるでデジャヴュのような
暖かいこの場所
なら
もう嘘つかずに
心の声 聞けるはず
(中略)
海の青い色は
たくさんの人たちの
想いを包んできた
深い愛の色なんだ

(楽曲『Deep, Deep Blue』)

 深い海の冷たいイメージとは異なる、誰にとっても暖かい海のイメージを提供してくれるダイヤモンドダイバー♢は、このようにして生まれたのだった。

2.春香と「チムドンドン」 ~ドラマCDより~

 イベント終了後の10月28日、『THE IDOLM@STER MILLION THE@TER WAVE 12 ダイヤモンドダイバー◇』(以下「MTW12」)が発売された。

 MTW12のドラマパートでは、念願叶って沖縄の観光大使の仕事をすることになり、沖縄に訪れたダイヤモンドダイバー♢の活躍が描かれている。
 3人は観光パンフレットにおいて「ダイヤモンドダイバー♢的オススメスポットの紹介をすることになり、サンゴが美しい海や商店街を訪れる。このドラマパートのうち3つのトラックが、大まかに3人の経験と対応している。

・第一話 海の中の小さな家:やよいが、サンゴ礁が魚たちの家であることを知り、それを「あたかかい」と評する
・第二話 チムドンドン:後述
・第三話 美ら海の夕暮れ:響がかつて故郷で遊んだ友と再会する

 どのドラマパートも暖かい素敵な話であるが、ここでは『第二話 チムドンドン』における天海春香に注目してもらいたい。
 町のメインストリートを楽しむ3人。春香は近くの小学校でエイサーの練習をする音が気になり、3人で見学しに行くことになる。響によるエイサーやガーエー(踊りによる対決)の説明を聞いていると、一人の男の子が3人に駆け寄って来た。その子が3人に「一緒に踊ろう」と提案すると、響はカチャーシー(三線に合わせて手をひねりながら踊る:響談)をやろうと乗り気になる。響とやよいはすぐに駆け出して行ったが、春香はその場に残った。
 ここからのポイントは2つある。
 みんながカチャーシーをする様子を眺める春香は、こう言っている。

二人とも踊り始めちゃった。あはは、みんないい笑顔だなあ。この感じ、なんだか懐かしい!
(MTW12 ドラマ『第二話 チムドンドン』)

 春香はその光景を「懐かしい」と評したのだ。「懐かしい」という言葉は、通常つい最近の出来事には使わない。みんなで楽しく踊ることが懐かしいと感じた春香、その「懐かしい」とは、いつのことなのだろうか。
 ひとつ提案できるのは、やはり幼少期だろうか。複数の媒体において、春香のアイドル活動のルーツは幼少期から歌が好きなことに根差している。その中でも、公園にいるお姉さんと一緒にみんなで歌を歌っていたエピソードは、往々にして重要なものとして語られている。ミリシタでは、メインコミュ第68話において春香が昔書いた「将来の夢」の作文でそのことに触れている。アイドル活動のルーツとしての幼少期の経験が重要なものとして扱われていることに疑いはない。

 さて、もう一つのポイントはドラマパートのタイトルにもなっている「チムドンドン」である。
 みんなを眺めているだけの春香に、男の子が一緒に踊ろうと声をかけた。上手く踊れるか不安がる春香に対し、男の子はこう話した。

なんくるないさー!この音楽聴いて、チムドンドンしたら、もう踊れるさー!
(中略)
(チムドンドンは)胸がドキドキするって意味さー!チムドンドンしたら、自分なりに心で踊ればいいんだって、うちのおばあも言ってた。
(MTW12 ドラマ『第二話 チムドンドン』)

 「チム」は「心」を意味し、心が高鳴る様子を指すポピュラーな方言だ。
(参考「あじまぁ沖縄 沖縄方言辞典」:https://hougen.ajima.jp/e429
 春香は「チムドンドン」のことを聞いて乗り気になったらしく、カチャーシーに参加して楽しむのみならず、その後も気に入ったのか「チムドンドン」を使う様子が見られた。
 「自分なりに心で踊ればいい」、このセリフはここだけを抜き出すと春香が発しているようにも聞こえる。仮に春香が使うとしたら「自分なりに心で歌えばいい」だろう。歌ではなく踊りであったためか、「春香らしいセリフを、春香以外の人が、春香にかける」という興味深い構図が生まれているのだ。

 まとめよう。短い間のやり取りだが、春香にとって大事な物語が語られている。
・みんなで踊る様子を「懐かしい」と評する:幼少期に公園でみんなで歌ってたことを指しているのかもしれない
・上手く踊れるか心配→チムドンドンしたら心で踊ればいいと諭される:春香が大事にしているマインドを、春香の外部から再確認する
 つまり、ここにおいて春香は自分の時間的な原点と思考的な原点の両方に立ち返っているともいえよう。アイドル天海春香にとって、沖縄で出会った男の子との短いやりとりやチムドンドンして踊ったエイサーは、大事な糧となるのだろう。

3.B面曲に光を ~楽曲『VIVA☆アクアリズム』より~

 ここが一番雑な章なのだが、要するに「みんなもっと『VIVA☆アクアリズム』の話しろ!!!!!!!!!!!!!」という叫びである。
 『VIVA☆アクアリズム』はMTW12に収録されている曲で、『Deep, Deep Blue』のカップリング曲である。なお私の世代だと「B面曲」の方が馴染みがあったりなかったりする……。

 私がこの曲を推す理由は、ズバリけっこうな「泣き曲」だからだ。ディズニーのパレードのような賑やかな曲調とは対照的に、その歌詞が描くストーリーは優しく暖かい。

 ”ここ”にたどり着いた人に対して、辛かったよね、ここでは重荷をおろして、大丈夫だよ、楽しもう、と声をかける。最後には帰らなくちゃいけない。でも、また会えると最後に告げてくれる。

 『VIVA☆アクアリズム』における歌詞のストーリーは、個人的には『自分REST@RT』の2番の一節を思いだす。

心の傷ついた人も笑顔取り戻す
パワーを与えてみせる
(楽曲『自分REST@RT』)

 そこからさらに論を進めると、「訪れた人の心を癒し、楽しませ、またいつか来てもらう」ということを歌う『VIVA☆アクアリズム』全体が、765プロライブシアターのアナロジーであるとも言えよう。『VIVA☆アクアリズム』は、ダイヤモンドダイバー♢が送る精いっぱいの「アイドルとしての仕事」なのだ。

 余談だが、劇場そのものの意義を問うMTWのドラマとして「miraclesonic★expassion」と「≡君彩≡」が挙げられる。『VIVA☆アクアリズム』の主張に思いを馳せながら聴いてみると、より一層劇場に対する思いが強まる……かもしれない。

4.最後に

 今回はあくまで、天海春香学会そにっぴーが思うダイヤモンドダイバー♢の魅力を紹介したまでだ。素敵な衣装や触れていないコミュなど、まだまだ語り足りない点はたくさんある。
 最近ダイヤモンドダイバー♢の曲やコミュ、CDを聞いていないという人は、この1周年を期にもう一度触れていただけると幸いである。
 また、今まであまりダイヤモンドダイバー♢に触れてこなかった人、CDを持ってなかった人がいらっしゃったら、いつかこの記事を思いだしてお手に取っていただけたらまさしく僥倖だ。

 とくに2章で語ったとおり、天海春香にとって大事なストーリーを含むユニットである。今後のライブでの披露や、「プラチナスターチューン」のような更なる掘り下げに期待したい。
 そして今後も、夏が来るたびにこの青く暖かいユニットのことを思いだしていただけれたら幸いである。

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