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“学会員”インタビュー⑩鬼ヶ島もやこさん

天海春香学会Vol.2出版記念企画として、「学会員」のみなさんへインタビューを行うシリーズ企画。

第10回は、鬼ヶ島もやこさんへのインタビューをお届けいたします。


インタビュー:そにっぴー/スタントン

文:スタントン

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あっ……きちゃったな、これは

鬼ヶ島もやこ:
宜しくお願いします。

——宜しくお願いします。早速お伺いしたいのですが、もやこさんはアイマスでどなたを担当されているのですか。

鬼ヶ島もやこ:
それがですね……私もちょっとわからないところがあって、一番最初に「あっ、この子が担当!」って思ったのは高槻やよいちゃんなんですよ。でも、アイマスとの出会いは春香なんですね。

——春香と出会ったのがアイマスの最初だったのですね。

鬼ヶ島もやこ:
春香というか……どっちかっていうと中村繪里子さんだと思うんですよ。「アイマスっていうよくわからないものがニコニコで流行っているぞ」って10年ちょっと前に知って「ふーん」って思っていたんです。NHKBSで、「MAG・ネット」っていうオタク向けの番組があったんですけど、それでアイマスの特集が組まれたときがあったんです。

『MAG・ネット 〜マンガ・アニメ・ゲームのゲンバ〜』(マグネット - )は、2010年4月から2013年3月までNHKで放送していた、漫画・アニメ・ゲームなどの大衆文化(サブカルチャー)を扱う情報番組・トーク番組である。

鬼ヶ島もやこ:
当時はオタクになり立ての時期で、「オタク文化全部面白い!」ってなんでもかんでも触れていて、MAG・ネットは情報収集にとても良かったので毎週見ていたんですね。アイマス特集回のなかで、オタクが律ちゃんと愛ちゃんのお誕生会をしている様子とか、アイマス有識者の方のインタビューのコーナーとかがあって、「オタクすっげー……」って最初引いた目で見ていたんですけど。


鬼ヶ島もやこ:
後半にライブシーンが映っている場面があって、そこでコールの紹介として「乙女よ大志を抱け!!」を歌っている繪里子さんの映像が流れたんですね。それを見て「あっ……きちゃったな、これは」っていうのをそこで感じじゃって、そこからはニコニコでアイマスを探して探して。最初は歌にハマって、ずーっとアイマスの曲だけ聞いてたんです。そのあとアニマスを見てキャラクターを知って、「やよい可愛いな」「Jupiterいいな」って、やよい・JupiterPみたいな感じでずっと過ごしていました。


手を引っ張られるような感覚

鬼ヶ島もやこ:
春香に対しては、アニマスのときにも特別な感情を抱いていたんです。リアタイで見ていたとき、私は17歳とかだったんですよ。高校2年生で、自分と同い年の女の子が自分と同じように悩んで頑張って、っていう様子にその当時はすごい励まされました。そのあと大学に入ったんですが、上手くいかなくて落ち込んでいた時期があったんですね。そういうときにアニマスの再放送をたまたま見て——特に24話とかの——春香の頑張る姿に手を引っ張られるような感覚になって……でもその時には担当じゃなくて、「神様だな」っていう目で春香を見ていたんです。

——なるほど、春香を担当という身近な存在としてではなく、ちょっと距離のある存在として見ていたんですね。

鬼ヶ島もやこ:
そうなんです、そうなんです。なんというか女神様みたいな、私を助けてくれる素晴らしい存在みたいな感じだったんですよ。それで、私が初めてゲームに触れたのがシャイニーフェスタだったんですね。Jupiterが好きでやよいが好きだから、最初はアイマス2を買おうと思ってバイトをしていたんですが、ちょうどシャイニーフェスタが出るタイミングだったのでアイマス2貯金を投げうってシャイニーフェスタを買っちゃったんです。


鬼ヶ島もやこ:
で、PSPを買ったので、「じゃあSPも買おう」ってなったんです。やよいが居るので当然最初はパーフェクトサンをやったんですけど……。


ああ、春香のプロデューサーでいいんだ

鬼ヶ島もやこ:
私が持っていた春香のイメージはアニマスの春香だったので、普通の女の子だけどものすごく包容力があって、神様みたいに思っていたんですけど、(SPをやってみて)"結構普通だな"って思ったんです。アニマスの春香とすごいギャップを感じて。でもそこでもまだ担当にはならなくて、ものすごく気になるアイドルだな、とは思いつつも、「どちらかといえば春香のファンなのかな?」って思ったんです。そんななかで、ムビマスから10thまでのどこかのタイミングで繪里子さんが言っていた「プロデュースの形はなんでもいいんだよ」という言葉にはっとしました。「ああ、春香のプロデューサーでいいんだ」って。

——その言葉は、9thライブの東京公演でのMCですかね。

鬼ヶ島もやこ:
ああ、9thだ!私、初めて行ったライブが9th東京公演のLVだったんですよ。そのMCもあって「どかーん!」っていう感覚を受けて、そこから春香Pになりました。結局、繪里子さんで興味を持って繪里子さんでオチたから、私は繪里子さんが好きなんだな、と思いますね。


——春香Pになってから、何か変わりましたか。

鬼ヶ島もやこ:
私は絵を描くんですけれど、春香はすごく描きやすくて落書きでもよく描いていたんですよ。でも、(春香Pになる前は)アイコンはJupiterだし、やよいPだし、(春香ばかり描くことに対して)Jupiterとやよいに申し訳ないなってちょっと思ってて。でも春香Pになってから「好きなんだからなんでも描けばいいじゃん!」って、春香だけに限らず他のアイドルについても描きたいと思ったときに描くようになりました。やよいはあんまり描かないんですけど……

——我々は絵を描かないのでわからないのですが、「作画コスト」が高い子ってやはり居るのですね。

鬼ヶ島もやこ:
やよいの髪の毛が本当に謎で!「あのチョココロネは一体どうなってるんだ!?」って思いながらいつも描いているんですけど、その点春香さんって楽なんですよ。春香って顔立ちもシンプルだから手癖でバンバン描いちゃいますね。春香Pになってから、「担当だから~」とか、「やよいPだからやよいをいっぱい描かなきゃ」とかそういうことに縛られないで、自分の好きな時に思い思いの絵を描けるようになったのは、(春香Pになってから)変化したことかもしれないですね。

——天海春香学会を知ったきっかけ、参加しようと思ったきっかけはなんでしたか。

鬼ヶ島もやこ:
私はななみんさん(※デザイン担当/寄稿者)のフォロワーで、ななみんさんのRTで「わあ、ななみんさんが表紙担当する合同誌あるんだ、面白そうだからやろう」って思ったんです。その時はVol.1が出ていることも知らなかったですし、どんな空気感なのかもわからなかったんですけど、「天海春香だしなんとかなるかな」って勢いで応募した感じですね(笑)。

——ありがとうございます。勢いで応募されてみて、どうでしたか。

鬼ヶ島もやこ:
いやあ、私普段カラーのイラストしか描かないんですね。ステージ衣装を着ているアイドルがニコニコしている絵が好きで、わりかしそういうのを描くんですけれど、今回は「学会」ですし、もう少し深いところ、いつもと違う春香を描けたのが面白かったですね。




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【注意】

この先に、鬼ヶ島もやこさんのイラストに関するご本人の解釈・解説があります。
それらを知る前にイラストを見たいという方は、イラストをご覧になった後に、以下を読みすすめていただくことをお勧めします。

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何においても盲目なんだろうな

——早速、描いていただいたイラストについてお伺いさせていただきたいんですけれども、衣装や持っているもの、小道具、沈んでいく構図が特徴的で美しいと思いました。今回表現したかったことや、コンセプトは何かありましたか。

鬼ヶ島もやこ:
やっぱり最初に好きになったのがアニマスの春香だったので、テーマをそこにしようと思ったんです。アニマスやムビマスを見て、あの世界の天海春香は「手放さない人」だと思ったんですよ。自分が手に入れた輝きやそこに至るまでの苦労も全部、全部何一つ放したくなくって、その抱えた重みで深いところまで落ちていくような気がしたんです。傍からみたら、あの子は暗いところに沈んでいてつらいように思えるけれど、春香本人はそれが幸せなんだろうなと思ったんですよ。なのでそういうイメージの絵を書きたかったんです。あの絵を描くちょっと前にDeep, Deep Blueが出て、その絵も描いたんですね。そのときは深いけど綺麗で暖かくて、まさに曲そのものの海を描いたんですけど、(学会誌に寄稿した)このイラストに関しては、もっと暗くて冷たい海に沈んでいて、それでも彼女は嬉しそうにしていて——それこそが天海春香で——それを絵に表したいという感じでした。

——ありがとうございます。見た人によって印象、感想が変わってくるイラストだと思いました。

鬼ヶ島もやこ:
あ、でも私はそれでいいと思ってます。私の答えは「私がこう思って描いた」ってだけの話であって、他の人の見方が違うならそれはそれでいいかなって。

——イラストの線や塗り方から「版画」のような印象を受けたのですが、作風やデザインについて意識されたことはありますか。

鬼ヶ島もやこ:
私、モノクロの絵って10年くらい描いていなかったんですね。それで、カラーをグレースケールにしただけじゃつまらないですか。ななみんさんも似たようなこと仰ってたと思うんですけど。私、「パタリロ!」や「翔んで埼玉」を描かれている漫画家の魔夜峰央先生のイラスト・漫画が——特に黒ベタに白い線が浮いている塗り方が——好きで、せっかくだったので、魔夜先生のその塗り方を参考にしてみました。


——イラストをモノクロで募集しているのは制作上の都合なので、制限をかけていて申し訳ないと思うんですけれど、白黒には白黒でしか出せない魅力があるのですね。

鬼ヶ島もやこ:
制限があるからこそ面白いな、というのは思いますね。私の意見なのですが、モノクロだとごまかしが効かないんですよ。カラーなら、後ろから光の効果をちりばめたりとか、上からライトを当てたりとかできるんですけれど、モノクロで同じことをしても、ただの白い線になっちゃったり、グレースケールにするとぼやけて締まりのない絵になっちゃったりすると思うので、モノクロとカラーだとやることが違うのかなあ、って感じましたね。

——春香Pとして気になるのは、やはり手に持っているティアラなのですが、何か選んだ理由はありますか。

鬼ヶ島もやこ:
「アニマスの春香が持って沈んでいきそうなもの」のイメージが湧かなかったんですよ。彼女がすごく大事にしているのが、アイドルとしてみんなと一緒に変わらず歩んでいくことだと思っていて、最初の状態のままずっと前に進みたいっていう春香のイメージに最も近くてわかりやすいメタファが、プロデューサーから春香へ贈る最初のプレゼントであるお姫さまティアラなのかなって思いました。


——ほどけるリボンも印象的ですよね。

鬼ヶ島もやこ:
あのほどけるリボンは……春香って、自分のことが客観的に見えてない子だとも思うので、「それがないと誰だかわからない」とも言われる、彼女の象徴であるリボンがなくなっていっても気づかずに盲進してしまう様子を描きたかったんです。春香は何においても盲目なんだろうなって思って。どこのパラレルにおいても、春香は盲進してしまう人なんだろうなあって私は思ってますね。

——他に、このイラストについて伝えたいことはありますか。

鬼ヶ島もやこ:
見ていただいた方の感想こそ私の作品なので、私が何か言っていても、「見た人が解釈したならそれでいいよ」ってスタンスなので、そのことはお伝えしたいですね。前エゴサしたときに、皆さんが海に沈んでいっているのをわかってイラストの感想を書いてくださってたんですけれど、ある方が「深い森の中に居る」って書いてくださってて、「ああそっか、そういう風にも見えるのか、春香が森の中に居るって感じた方にはこのイラストがどう見えたのかな」って興味がわきました。

——(そにっぴー)いいですね、インタビュー記事に「ネタバレ注意」みたいなことを入れておきましょうかね。

※文責注・入れました(天・∀・海)b


なんだこれは……

——学会誌の他の作品は読まれましたか。

鬼ヶ島もやこ:
実はですね、他の原稿をやってて、さっきやっと2時間くらい読んでたんです。けど、学会誌の半分も読めなくて「なんだこれは……」って思いました(笑)。

——それでは、いままで読まれたなかで気になった作品はありましたか。

鬼ヶ島もやこ:
見てて一番思ったのが……これはポジティブな意味で言いますが、頭のいい人が頭の悪いことしてんな!って思いました(笑)。そういう人達好きなので面白いんですけれど。

気になったのが、私Vol.1読めてないんですが、いきなりハルカニウムの話(※じんさん『天海春香によるエネルギー産生の謎 ~代謝におけるハルカニウムの働きについて~』)が出てきて……「あ、そういうこと書いている人いるんだ」って読み進めていたら、別の方(そうP@765AS春香派さん)が「私は前回ハルカニウムについて書きましたが~」って書いてて「ハルカニウムは他の人が書いたことから派生したものだったの!?なんだこれは!?」って(笑)。パラパラとしか読めてないんですが、読み込んでもよくわからないんだろうな、これ(笑)。

あと、薫る風さんの文章(※『水曜日にはコーヒーを』)も春香のプロデューサーから見えない日常が描かれていていいなあって思ったんですが、読んだあとに薫る風さんのイラストを見たときに「これが春香のプライベートか」ってときめきましたね。

鬼ヶ島もやこ:
イラストについてなんですけれど、白黒さんのイラストがすごく印象的です。さっき「グレースケールにするとぼやけて締まりのない絵になっちゃったりすると思う」って話をしたと思うんですけど、白黒さんについてはグレースケールでカラーイラストみたいなことをやってるし、それでいて鮮やかなので「すごいいいなあ、私はこんなことできないなあ」って思いながら読んでました。

あと、イラストの並び順がすごいなあって思いました。アイドル活動をしている春香さんが最初並んでいて、次にプロデューサーから見える春香さんがいて、その先に春香さんの見えないところ・内面を描いたイラストがきたあとに、それらを全部内包しての、らすぼすさんの「行ってきます。」に「あ~!」って思いました。


ライバルと天海春香

——もし仮に天海春香学会Vol.3に寄稿されるとしたら、どのような作品を作りたいですか。

鬼ヶ島もやこ:
私、春香学会だからって天海春香にとらわれすぎていたんです。で、予告ツイートを見ていたときにペペロンチーノさんが春香と伊織でイラストを描いてた時にはっとしましたね。

鬼ヶ島もやこ:
その他でも「春香と○○」みたいな作品はありますし。なので、自分の中でまとまり切っていないのでやるかどうかはわからないのですが、天ヶ瀬冬馬と天海春香、Jupiterと天海春香、みたいなイラストをやってみたいですね。でも、天海春香と我那覇響も描いてみたいんですよ!SPやってるので。「ライバルと春香」というのを描きたいなって思いますね。


手を引っ張ってくれる人

——あなたにとって、天海春香とは。

鬼ヶ島もやこ:
うーん……やっぱり、手を引っ張ってくれる人ですかね。冒頭で、落ち込んだ時に春香が手を引っ張ってくれたって言ったじゃないですか。あのときはぶっちゃけ、春香だけじゃないんですよね。春香が手を引っ張ってくれて、冬馬が前を歩いてくれた感じで。その二人が私を引っ張って前向きにしてくれてるな、って思いますね。春香さんは寄り添ってくれるイメージで、冬馬は「つらいところでも俺が先を歩くから、その後ろなら大丈夫だろ?」っていう感じの違いで、その二人が私にとって大事な存在ですね。

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イラストや経歴のことなど、深くお話しいただいたインタビューでした。

天海春香学会Vol.2は現在完売しています。

再販・増刷時にはツイッターにてご連絡いたしますので、お待ちいただけますと幸いです。


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