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“学会員”インタビュー⑮なかやまPさん

天海春香学会Vol.2出版記念企画として、「学会員」のみなさんへインタビューを行うシリーズ企画。

第15回は、なかやまPさんへのインタビューをお届けいたします。


インタビュー:そにっぴー/スタントン

文:スタントン

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わからなくなった

——なかやまさんの思う、春香の魅力はなんでしょうか。

なかやまP:
うわあ、難しい質問がきましたね(笑)。この質問の答えを結論からいうと、天海春香学会Vol.2の編集後記にあるように「わからなくなった」が正しいですね。魅力はたくさんあるんですけれど、春香さんを見ているだけでドキドキしたり、癒されたりするんですよ。ドキドキや癒しを与えるなにかが(春香には)あると思うんです。それを適切に表す言葉が……いまの私のなかにはないです。

——ご自身の気持ちを昂らせる、ざっくり言うと「好きな存在」ということでしょうか。

なかやまP:
そうですね。
たとえば、はるるんbot(@harurun_bot2)ってあるじゃないですか。あのアカウントの画像を延々とスクロールして見ていられます。
……いやあ、本当はこの質問に対して内面から切り込みたかったんですけれど、学会誌を読んで色々な人の意見を見ていくうちによくわからなくなって……言葉に出来なくなってしまいました。


パンドラの箱

——早速作品についてお伺いします。前回の天海春香だけでSSを書くという試みから少し趣向を変えていらしたと思うんですが、今回この文章を書かれた動機はなんでしたか。

なかやまP:
初めは、前回(Vol.1)のものを進化させて、別の言葉でSSを書こうと思っていたんです。ムビマスの「わたしはあまみはるかだから」という言葉を使って、もう少し長い、ストーリーのあるSSにしようと思っていたんですが、上手くいかなかったんですよ。書いてみたものの、自分のなかの「面白い」ラインに達しなかったので、締め切りが迫るなかでどうしようか悩んでいました。
それで、春香の部屋の本棚に着目しようとは前々から思っていたんです。それこそアニマスを見たときから。たぶん、私以外にもあの本棚を見て「あっ、○○の参考書あるじゃん」って発見した方はいままで何人もいらっしゃったとは思うんですが、それを全部調べられたら面白いだろうな、という思いはずっと前からあったんです。


なかやまP:
ただ、このコンセプトで春香学会に出すには勇気がなかなか出なかったんですね。結局文系か理系か、という結論までもっていくことになるんですが、それって、「決めちゃう」訳じゃないですか。それで(論理的に結論を導いてしまった場合は)議論の余地がなくなってしまうので、「答えが出ちゃったらどうしよう」って思ってたんです。パンドラの箱を開けないように踏み込んでいきましたね。

——今回特筆すべき事項として、本棚から文理選択、そこから一歩進んで志望校まで書いてらっしゃいました。それこそパンドラの箱を開ける寸前までいった感じがしますけれども、ここまで書こうと思ったきっかけは何かありますか。

なかやまP:
そうですね。結局、文理選択については「完全にこっちだ」という確証がないものだとわかったんですよ。文章内では「理系」と結論付けたわけですけれど、一応、文系の可能性も捨てきれなかったんですよ。だからこそ理系という前提で文章を膨らませても議論の余地、楽しんでいただける余地ができたので、そのまま書かせていただきました。

——途中で方向転換をなさったわけですけれども、それを感じさせないくらい用意周到な文章でしたので、提出されたときは驚きました。

なかやまP:
元々目星がついていた書籍とそうでない書籍がありまして、そうでない書籍については調べるのに苦労しましたね。
実はひとつ、文章について謝らないといけないことがあるんです。

——お、なんでしょうか。

なかやまP:
嘘といいますか、事実でないものを書きました。【さいごに】で、「この研究のために、快く情報の提供をしてくれた河○塾勤務経験のある友人T」と書いているんですが、


こんな友人Tはいなくてですね、







実は私なんですよ。






直接情報が入ってくるわけではないんですけれど、(教育関係の事柄について)どうやって調べればいいかわかる業界には居たんです。なので文理選択や志望校まで踏み込んで書けました。

——そうなんですか!面白い事実でしたね。私(そにっぴー)は教育学部出身なので、教育要項の話を懐かしいなって思いながら読んでいました。

なかやまP:
インタビュー記事読む人にはバレてもいいので、今回お伝えしちゃいました。
提出がギリギリだったので、提出後に体裁とか手伝っていただけてありがとうございました。出版年代のとこ※とか私のなかで甘い部分があったので、言っていただいて助かりました。

※いただいた初稿ではアニマス放映後に出版された書籍をモデルとする内容が含まれていたため、査読時に指摘させていただきました。

——Amazonで書籍を探しましたけれども、結果的に古い版のものでも対応できそうだったのでよかったです。

なかやまP:
ありがとうございました。参考にした書籍のURLとか全部送っておけばよかったですね(笑)。

——塾のバイトや教育学部時代に見慣れた本ばかりだったので、私(そにっぴー)は査読しやすかったです。でも、この「花言葉の本」とかよく探しだしましたね。

なかやまP:
探すのに苦労しました。しかし、本棚のなかで浮いていますよね。これだけ勉強の本じゃないので、気になります。

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お茶の水女子大生・管理栄養士天海春香

——最後に導き出した結論として、「お茶の水女子大生天海春香」「管理栄養士天海春香」という概念が登場しましたが、その着想を得たときはいかがでしたか。

なかやまP:
そうですね。お茶の水女子大って女子大のなかでも一番偏差値が高い大学なので、とびぬけちゃったな、とは思いましたね。ただ、普通ってなんだろうと考えたときに、「普通の進学校」であれば「普通に」志望校にするのは問題ないだろうな、と思いました。あと、リケジョって私のなかでポイント高いので、春香さんに白衣着て研究室に居てほしいなって思いましたね(笑)。管理栄養士ってだれかのために(直接)役立ちますし、春香さんらしいな、とも思いました。

——反響が大きい文章でしたし、この文章はよい先行研究になったと思います。

なかやまP:
そう言っていただけてよかったです。最初は(内容の正誤に)自信がなく不安になったので、一回目の提出の後にバンダイナムコチャンネルに入りなおして、「見落としはないかな?」ってアニマスを観返しました。せっかく出すからには情報に穴があってはいけないな、と気を付けましたね。


——今回の結論もかなり注目に値するとは思うのですが、その前提として、恐らく天海春香がSSH(※スーパーサイエンスハイスクール)相当の進学校に通っていることになります。その一方で彼女は、「授業中Zzzっと夢見ちゃえ」のように普通の女の子らしさを売りにもしています。そのギャップについてはどのように思われましたか。

スーパーサイエンスハイスクールとは文部科学省が科学技術や理科・数学教育を重点的に行う高校を指定する制度のことである。

Wikipedia -スーパーサイエンスハイスクール

なかやまP:
そうですね……既存の春香さん像って、そっち(進学校や勉強ができるということ)には向いていないとは思います。ただ、進学校だからってみんな勉強ばかりしているわけではないと思うんですよ。おしゃべりもするだろうし、買い食いもするだろうし。また、春香さんは恐らくその進学校のなかで(学力の)トップ層ではないと思うんですよね。だからこそ、進学校の高校生であっても、普通の高校生という部分と両立しうるんじゃないかなって解釈しました。「お茶の水大志望」って言ったときに、その目標がどこまで現実感あるのかは別にして、目指せるくらいの進学校かなと思います。

——他に、文章内容について伝えたいことはございますか。

なかやまP:
春香さんが2011年近辺の高校2年生で進学校に属しているとするなら、的を得た結論になったと思っています。あの当時の理系人気、資格志向は相当強くて、看護、臨床検査、薬学、栄養士、このあたりの人気も高かったんです。そのなかで、春香さんだったら管理栄養士一択かなと思うんです。それで条件を絞っていったらお茶の水女子大志望になったので、この結論については、自然に導けたものだと自負しています。


実物はアクセスする手段

——春香学会の参加者の方のなかには、春香さんに現実性を与えたいという方が一定数いらっしゃいます。ご自身でも現実性を与えたいと思われましたか。

なかやまP:
そうですね……例えば春香さんがロイヤル英文法をつかっていることが分かったときに、自分自身がロイヤル英文法をつかったら、なんとなく春香さんと繋がれた気がするんですよ。手に取れるもので春香さんと繋がれる、ということが非常に大きなことだと思ったんです。

なかやまP:
コスプレで、アイドルと同じ衣装を着ることによってそのアイドルの視点を得たりとか、ムビマスで千早が使っているカメラを実際に使ってみて千早の気持ちになったりとか、アイドルにアクセスする手段として実際のものを使ってみるのっていいんじゃないかなって思います。ほら、聖地巡礼とかも似た感じだと思うんですよ。舞台になった場所に行くことによって感じるものがありますし。現実性を与えるというよりは、アイドルにアクセスする方法として、実物を使った感じでしたね。


他作品について

——学会誌のなかで、気になった作品はありましたか。

なかやまP:
まずイラストですが、やっぱり、表紙のななみんさんですよね。ツイッターをフォローさせていただいているのでイラストの進捗ツイートも拝見していたのですが、Vol.2の顔、シンボルとしてほんと好きなイラストだなって思いました。
それから、白黒Pさん。動きがいいですし、指に結ばれているリボンも気になりますよね。ステージに駆け出す瞬間をとらえた良いイラストだと感じました。
次に夏井わたさん。この春香さんの表情がいいですよね。春香さんの優しさとかおちゃめさとかが出ていますよね。
それから薫る風さん。めっちゃデートしたいなって思いますよね。「まったくも~」とか言いながらついていきたいです(笑)。


なかやまP:
最後にミワのいぢさん。スナップ写真集みたいな感じなのですが、息遣いがきこえてくるような感じがして、ドキドキしました。

——ありがとうございます。文章ではいかがですか。

なかやまP:
文章では、草さんの『投票企画で勝利を目指すために』ですね。私もTCのとき茜ちゃん陣営で戦っていたので、あのときの分析は興味深く読ませていただきました。(当時ファイナルデイ役を春香と争っていた)宮尾美也って、TBのネコ役争いで茜ちゃんがぼろ負けした相手なので、38時間一斉投票の怖さを間近に見ていたんです。なので、運命的だなと感じながら読ませていただきましたね。


なかやまP:
あと、れぽてんさんの『Cleaskyと「笑って!」~ミリオンライブ6thライブツアーのASカバーがもたらしたもの~』です。私、ちょうど6th仙台の現地に居たんですよ、茜ちゃん目当てで。当時も「いいカバーだな」とは思っていたんですが、これだけ意味付けとか考察されているのを見て仙台公演でのCleaskyのパフォーマンスを思い出しましたね。


なかやまP:
それから、minecoPさんの『春香ちゃんを降りた日—或る元天海春香推しの回想—』ですね。読んでいて泣きそうになりました。なんというか、学会誌での色々な春香さん像を見て「春香さんって一体なんなんだろう」って思っていたときにこれを読んじゃったから、だいぶ心が揺さぶられましたね。


なかやまP:
あとはそにっぴーさんの『天海春香の運命論』。これを読んでからこの方(文中で引用した哲学者の入不二基義氏)の書籍をまだ読んでいないのですが、確かに「あるからある」んだろうな、と思いました。ただ、読んでいて、春香さんにあるものとないものとの区別がだんだんつかなくなってきました。手に取ったものしかないんだな、と。言葉では表せないんですけど、ストン、と納得できました。


なかやまP:
それから……最後にかけてのSSにだいぶ心を揺さぶられました。ゆきますくPさんの『「ゆめ」の続きの話をしよう』『(独白)』影井霧さんの『輝きのその後で』フブキPさんの『理想を瓶詰め』。本当に別の人がこれを書いたんですよね?

——と、言いますと?

なかやまP:
なんでしょう、一つのストーリーといいますか、流れが綺麗でして、"瓶詰め"なんかは楽しいSSだと思って読み進めていったら、最後の2ページくらいで……春香さん側からこっち側になにか思ってるなんて発想をしたことなかったので、心がざわつきましたね。
それで「うわー、春香さんがわけわかんなくなった!」って思いながら編集後記を読んだら「天海春香がわからなくなった」って書いてあって「その通り!それはそう!」って感じでした(笑)。
インタビューを受けるんだからって思ってまた読み返してメモもしていたんですけれど、だんだん、言葉がなくなっていくんですよ。やられました、降参です!


自由研究?

——もし次の学会誌の企画ができたとしたら、どんな作品を書いてみたいですか。

なかやまP:
春香さんについてはまだまだ気になることがあるので、調べてみたいですよね。ただ、行き着く先がどうなるかわからないから、事前に調べて、落ち着いた状態で書きたいなって思いますね。もっと実践的なことを書いてもいいかなとは思いました。自由研究みたいな、「春香さんに関する○○やってみた」みたいに体張るやつでもいいかな(笑)。


稀有

——あなたにとって天海春香とは。

なかやまP:
今回学会誌を読んでいて、春香さんを表す言葉がだんだんなくなったんですが、一つだけ残った言葉があるんです。他の方の言葉を借りるんですが……「稀有の普通」です。

稀有な普通、矛盾しているように思えるが、それこそが彼女の魅力なのだ。

——「業務引継書」、天海春香学会Vol.2、P239

なかやまP:
その言葉だけが、私の心の中に残りました。


———

アイドルへアプローチする手段、という話が大変興味深いインタビューでした。

天海春香学会Vol.2は現在完売となっております。

増刷・再販時にはツイッターにてご連絡いたしますので、引き続き宜しくお願いいたします。





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