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LOVERS HEARTにおける春香の躍進について

(著者:そにっぴー)

前書き

 2021年のミリシタ4周年を皮切りに始まったMILLION THEATER SEASON(以下MTS)。4つのチームに分かれて進行しているMTSはBRIGHT DIAMOND、CLEVER CLOVER、そしてLOVERS HEARTを経て、残すはSHADE OF SPADE1つとなった。
 天海春香学会として着目すべきは、3~5月に実施されたLOVERS HEARTに我らが天海春香が参加したことだ。私はMTSでの春香の出番が本当に楽しみだったので、ミリシタ内でイベントを走ると共に曲やコミュを考察することにした。その結実として、本稿にて春香がMTSでどのような躍進を遂げたのかまとめていきたいと思う。
 展開としては、LOVERS HEARTで春香が登場したイベント『CHEER UP! HEARTS UP!』、『空色♡ Birthday Card』において、それぞれ「楽曲」、「コミュ」、「筆者のイベラン」の3観点から語っていく。ミリシタに触れてなかった方には春香の新しい魅力の一面を知るきっかけに、イベを頑張った方には頑張りを労うエンドロールになれば幸いである。
 なお、あくまで文中の解釈は筆者のものであることを事前にご了承いただきたい。異なる見解はもちろんあるものと思われるので、是非皆様も思い思いにMTSにおける天海春香について発信していただければ幸いである。

1.応援の力 ~CHEER UP! HEARTS UP!~

1-1.CHEER UP! HEARTS UP!の楽曲と天海春香

 LOVERS HEART3曲目のイベントとなったのがプラチナスターツアービンゴ~CHEER UP! HEARTS UP!~。メンバーは望月杏奈、矢吹可奈、ジュリア、そして天海春香だ。
 この曲は題名に「チア」が入っているとおりスポーツの応援歌をモチーフとしており、ダンスもチアダンスの要素を取り入れたものとなっている。
 曲調はアメリカの学園ドラマやK-POPを連想させるポップで軽快なものとなっている。そのため熱血・根性を思わせる『ビッグバンズバリボー!!!!!』等の「応援」とは違った魅力がある。

 MTSの楽曲はどれもそうなのだが、ミリシタ内では歌唱参加メンバーの歌唱パートを自由に決められるほか、ソロ音源を聞くこともできる。どのメンバーの歌唱もそれぞれ違った魅力がある中で、『CHEER UP! HEARTS UP!』の春香ソロは大変特徴的なものとなっている。
 まず、『CHEER UP! HEARTS UP!』は英語の歌詞が多い。天海春香役の中村繪里子さんは英語の発音を流暢に行うことが多く今までも話題になっていたが、この曲ではその歌い方がリミッター解除と言わんばかりに存分に発揮されているのだ。最初はビックリするかもしれないが、何回も聞いていくうちに滑らかな英語が段々とクセになってくる感覚を味わえる。
 また、チアソングである本楽曲はロックのように激しい起伏があるわけではなく、しかしバラードのように落ち着いているわけでもない。春香の歌い方をよくよく聞いていくと、全体的に落ち着いている中にも単語単語が飛び上がって元気が溢れている感じがする。まさしく『CHEER UP! HEARTS UP!』が表現している絶妙な塩梅をよく表現していると思う。筆者が好きなのは、例えば「見上げた空は 虹の予感」の「予感」の「ん」が跳ね上がっているところ。このような歌い方は他の春香曲でも見られ、春香らしい魅力を感じる。他にはサビ前の「Baby keep tryin’ yeah Baby keep tryin’ yeah」の息多めの歌い方。優しさだったりセクシーさだったり、聞く人によって違った印象を受けるだろう。

 『CHEER UP! HEARTS UP!』は歌詞も魅力的だ。「応援」というと激しく強い鼓舞を意味することもあるだろう。しかし『CHEER UP! HEARTS UP!』が描く「応援」は「ありのままのあなたにエールを贈る」という意味合いが強い。1番だけでも「誰でもない キミでいいんだよ」「キミだけの色で未来描いて」「ありのまま生きる キミは Beautiful」と、「ありのままのあなた」を肯定する歌詞が多く登場する。後述するイベントコミュもそうだったが、これから頑張るあなたも、頑張って疲れてしまったあなたも、疲れているあなたも、元気になってほしい……という広範囲の人を対象としたチアソングとしてこの曲が作られているということだろう。
 春香が歌ったことがある曲でいうと『乙女よ大志を抱け‼』の溌溂な鼓舞よりは、『君のままで』の「ああ、いつもの君のままでいてほしいの」のメッセージが近しいと言える。最も『乙女よ大志を抱け‼』も紐解いていくと等身大の女子たちを応援する歌となっており、『CHEER UP! HEARTS UP!』のメッセージ性は春香によくマッチしているといっても過言ではないだろう。


1-2.CHEER UP! HEARTS UP!のイベントコミュにおける天海春香

 次に『CHEER UP! HEARTS UP!』にまつわるイベントコミュに触れていく。
 あらすじはこうだ。杏奈、可奈、ジュリア、春香の4人は中央エリアの駅前でチアダンスを披露する企画に挑戦することになった。

※恐らく新潟駅南口と思われる

 最初はチアを恥ずかしがっていたジュリアだったが、春香たちの後押しもありチアを頑張ることにした。その後春香たちにチアを見た人たちからファンレターが届くようになり、その中には杏奈のチアに元気をもらい、告白を決意したという子がいた。その子は結果を報告すると言っていたが、なかなか続報がなく、杏奈は自分の応援の自信を無くしてしまう。しかしそんな杏奈を可奈が励まし、春香のジュリアもそれに加わり、ようやく気持ちを持ち直す。結局その子の告白はうまくいかなかったようだったが、無事次の恋を見つけられたようだ。そして最後にはその子にちょっとした奇跡が起こるのだった。
 このコミュでは楽曲に合わせて「応援」という「気持ちを届ける行為」を題材としながらも、杏奈が抱く「気持ちが届かないこと」のもどかしさや不安に焦点が当たっており、非常に読み応えがある。その中でも春香について特筆したい点が2つある。

 1つは、春香とジュリアの絡みだ。この2人は同じ赤色をイメージカラーに冠しながら、同じユニットで関わる機会は今までなかった。そのため絡み方については未知数な部分が多かったのだが、蓋を開けてみれば濃厚な絡みが待っていた。
 まず第1話で、チアを不安がるジュリアに対して「ジュリアちゃん、私も不安だけど 、みんなのためにも、一緒にやってみない?」と春香が励ましている。続く第2話でも、「ジュリアちゃんは、ストリートライブでたくさんの人に元気をあげてたんだね。今回はチアライブだけど……伝える気持ちは、きっと変わらないって思うな」と声をかけており、ジュリアが経験してきたストリートライブと今回のチアの共通点を素早く見出すというファインプレーをしている。
 かと思えば、その第2話でチアがSNSにアップされて好評を博しているのを恥ずかしがるジュリアに対して「でも『ジュリアちゃんのおかげで今日も頑張れそう!』だって。ジュリアちゃんの応援、ちゃんと届いてるよ!」とイタズラっぽく声をかけるシーンもある。このセリフの春香の「でも」は「いひひ、で~も~」とかなりイタズラっぽさが詰め込まれており必聴である。
 極めつけは第4話のやり取りだろう。変わらず盛況のチアライブの後に「今日のジュリアちゃん、すっごくキラキラしてたよ♪」「でも、今日も可愛かったって書いてあったよ? ウインク失敗しちゃった後の照れた笑顔が最高とか……」とグイグイ詰め寄る春香が楽しめる。恥ずかしがるジュリアもまんざらではなさそうで、つい口元が緩んでしまう。
 春香とジュリアってこんな近しい間柄だったっけ? という(いい意味での)困惑を伴うコミュであったが、なんだか春香らしいな、とも思った。というのも、私が連想したのは春香と千早の関係だ。媒体によって描かれ方は異なるが、春香が千早に対して話しかけるときに「千早ちゃんはこんなにかわいいのになあ、こんなに素敵なのになあ」というニュアンスが込められているように感じる。春香は一見ぶっきらぼうに見える子に対して、その子の魅力や好きなところを前面に持ってきたいのかもしれない。春香がジュリアに対して前述のような関わり方をしていたのも、一見ぶっきらぼうに見えなくもないジュリアの魅力をたくさん伝えたいからなんだろうか。

 春香について特筆したい2点目は、恋愛ネタに対する春香の反応だ。第3話にて前述のファンの子から告白を決意したメールが届いた際、春香とジュリアはこのようなやりとりをしている。

春香「でも、告白かぁ……どうなるんだろうね? なんだか私まで、ドキドキしてきちゃった!」
ジュリア「ははっ。普段はしっかりしてるのに、ハルも意外と、こういうことにははしゃぐんだな?」
春香「だ、だって告白だよ!? 一大事だよ!? 気になっちゃうよ~!」

CHEER UP! HEARTS UP! イベントコミュ第3話 恋の応援、お任せあれ!

 「しっかりしている」と評されている春香であるが、恋愛の話題に対してはしゃいでそわそわしている様子が見られる。劇場の中では先輩扱いされることが多い春香だが、その実は17歳の普通の高校生であることを再確認できる、愛おしい反応である。
 また、続く第4話ではこのようなやりとりがある。

可奈「そういえば……しばらくメールが来てないね。告白するって言ったきり……。」
春香「もしかして、告白……。うまく、いかなかった……のかな。」
ジュリア「それは、わからないだろ。まだ告白してない可能性だってあるし。」
杏奈「うん……。……。」

CHEER UP! HEARTS UP! イベントコミュ第4話 待ち人を探して

 仲間をまとめる立ち回りをすることが多い春香だが、このシーンでは春香の方から先だって不安を煽ってしまうような発言が見られる。それだけ春香もファンの子の恋の結末が気がかりで仕方なかった、と捉えるのがよいだろう。直後にはちゃんと杏奈のフォローに回っている。

春香「……杏奈ちゃん。とりあえず、もう少し待ってみても、いいんじゃないかな?
春香「他にも色んな理由が考えられるし……ね? とにかく、私達は最後まで見守ってあげよう!」

CHEER UP! HEARTS UP! イベントコミュ第4話 待ち人を探して

 頼れるセンター扱いされることが多々ある春香であるが、彼女は決して完璧超人ではなく、普通の女の子が劇場の中で先輩としての役割を果たすべく頑張っている……そのことを再確認できる一幕であった。それにしても、恋の話題で一喜一憂する春香のなんてかわいいことだろうか……。


1-3.CHEER UP! HEARTS UP! イベラン記録

 筆者は「春香色のステージ」というラウンジのマスターをしており、LOVERS HEARTの春香登場イベントについては「個人TPRかつラウンジPL」という目標を立てていた。そのためにラウンジメンバーにはPRを目標とすることをお願いしており、自分が走るだけでなくラウメン向けにPRボーダーを予測するという作業もあった。不器用な筆者はてんやわんやであったが、それ含めてのイベラン記録として大目に見て頂きたい。

 まず事前準備について。
 社会人にとって、稼働時間に大きく関わるのはイベント期間中(5/1~5/8)の休日の日数である。私はカレンダー通りの仕事だったため。CHEER UP! HEARTS UP!についてはゴールデンウィークと被っており走れる日は多かった。平日だったのは5/2(月)と5/6(金)だったが、なんと上司の計らいにより休暇を取ることになった。つまり、期間中全休である。なんともありがたい話である。
 その他、眠気覚ましのキレートレモンやガムを用意し、イベント当日を迎えることになったのだが……。

 

LAWSON presents 夏川椎菜 2nd Live Tour 2022 MAKEOVER

 イベ開始日、まさかの夏川椎菜のライブツアー(埼玉公演)とイベ被り――。イベント開始からライブ開始までずっとイベント叩いてたが結局100位以内に入れず、焦りを抱きながらの初日になってしまった。あ、ライブ自体はめっちゃ良かったです皆さん夏川椎菜をよろしくお願いいたします。
 しかしライブ後や翌朝ずっとプレイしてたので、5/2 8:30には100位以内に入り、その後イベント終了まで100位から漏れることはなかった。
 また今回はツアーイベントだったので、前半戦も後半戦も「お仕事→5倍イベ曲ライブ」という流れは変わらなかった。すなわちお仕事を必ず挟むので、オートライブパスにはほとんど困らなかった。私はこのことを利用し、アニメ視聴等を挟みながら長時間のイベントを乗り切ることにした。ジョジョの奇妙な冒険スターダストクルセイダースはいいぞ。オーパスに余裕が無いと後半戦の身動きがとりづらいシアターイベント(ひたすらイベント曲を叩くしかない)との違いである。

 100位ボーダーに関しては、「自分のptの100位のptの差だと、最短何時間で追いつかれるか」を常に気にして走るようにした。というのも「○位」という順位だけ気にしていても、たとえば「100位とほとんど差が無い95位」と「100位に大差をつけている95位」はまったく異なるからだ。また、「最短何時間で追いつかれるか」は裏を返せば「○時間は何もしなくても大丈夫」となる。結果から言うと、ゴールデンウィークでイベントを走れる人が多いとはいえ、全休だと十分な睡眠・昼寝・外出を挟んでも余裕を持って走ることができた。
 しかしボーダーはそこそこ速かった。最初は最近のツアーイベントを参考にしながら走っていたのだが、TPRもPRもそれを上回るようになり、やがて『DIAMOND JOKER』のボーダーがそれぞれ近いことが分かった。PR狙いのラウメンに対しては『DIAMOND JOKER』の数字を出しつつ安全圏のpt数を呈示するようにした。せっかく頑張るのだからPR漏れを味わってほしくなく、少し厳しめにptを積むよう煽ったのだが、皆さん無事に満足のいく結果を出せたようで安心した。

 そんなこんなで高いボーダーに苦戦しながらも、走れるときに走り続け、最終日の午後3時過ぎには「今止まっても100位ボーダーには絶対追いつかれない」という計算になり、無事イベント終了となった。

 『CHEER UP! HEARTS UP!』と同じ7日間174時間のイベントでTPRが200万を超えたことはそうそう多くなく、たくさんの人がゴールデンウィークを活用して爆走していたことがよくわかる。私自身も、無理なく頑張ることができたので満足いくイベランであったと言えよう。
 ……しかしまあ、来年のゴールデンウィークはソシャゲ漬けではなくゆっくり過ごしたいものである。


2.届けるということ ~空色♡ Birthday Card~

2-1.空色♡ Birthday Cardの楽曲と天海春香

 『CHEER UP! HEARTS UP!』から連続して実施されたのが、プラチナスタートレジャー『空色♡ Birthday Card』だ。LOVERS HEART全員が歌唱に参加するMTSの集大成であり、今までのスートだと『ダイヤモンド・クラリティ』『Shamrock Vivace』と同じポジションを占める重要な曲である。
 改めてLOVERS HEARTのメンバーを列挙すると、天海春香、如月千早、北上麗花、佐竹美奈子、ジュリア、高槻やよい、高山紗代子、天空橋朋花、七尾百合子、福田のり子、松田亜利沙、望月杏奈、矢吹可奈となる。
 曲は優しく切ないバラード調で、何らかの理由で別れてしまった元恋人に対して健気にハッピーバースデーを贈る曲となっている……というのはゲームサイズから得られる情報。フル尺を聞くと、恋よりも優先しなくてはならない夢を叶えなければならなかったことが伺える。不仲による失恋ではないため、逆に曲のやるせなさ・切なさが増強されるとも言えよう。

 『CHEER UP! HEARTS UP!』と同様に歌唱者のソロ音源をミリシタ内で聴くことができるが、MTS集大成の曲であるため前述の13人全員分のソロ音源が用意されており、大変聴きごたえがある。特に本曲は感情がこもったバラードであるため、ソロ音源を聞き比べるとそれぞれ異なる特徴が発現していることに気づくだろう。気持ちに芯が通っている真剣な歌い方であったり、泣きそうで震える声であったり、それでも大切な恋を後悔しない笑顔の声であったり……。なお筆者のお気に入りは、気持ちの大きさがしっとりと込められている亜利沙の歌い方と、美奈子の終盤の「届け」の歌い方。まだ聴いてない方は是非ミリシタ内でMVを見ていただきたい。

 もちろん、春香ソロ音源については語りたい箇所が多々ある。全体的には『CHEER UP! HEARTS UP!』で見られたようなノリの良い発音は抑制されているように思える。曲中の「Happy Birthday」の歌い方を聴いてみるとそのことが分かるだろう。
 その代わり目立つのは、吐息交じりにも聞こえる優しい歌い方だ。例えばAメロの「そうだ…忘れていた赤い◎(にじゅうまる)」や直後の「おめでとう」、サビの「きみに恋をしてよかった」は分かりやすいだろう。春香の歌い方はまるでセリフを囁くように聞こえることがあるが、このようなフレーズを聴いているとまさに春香の感情がセリフのように心に届き、胸が締め付けられる。
 極めつけはサビの「もう平気だよ」の歌い方だ。以前ミリオン6th仙台公演・SSA公演で春香の『笑って!』をカバーした島原エレナ役角元明日香さんは、春香(中村繪里子さん)の歌い方に関してこのように述べている。

 「(『笑って!』の)大サビに入るときの「笑って」の「わ」のところの音が、オリジナルの春香さんがすごくキーをちょっと外すくらいの勢いで笑うニュアンス、セリフっぽく入れてるから、できれば、ここは同じようにして大サビで盛り上がって笑顔に終わるようにしたいですっていうことを蝶々さんに相談させてもらって」

UNI-ON@IR!!!! TV #01 12:05付近
https://www.youtube.com/watch?v=4hYbZfCxOlY

 角元さんの観察眼はさすがだなあと思う所存である。気になった方は実際に『笑って!』を聴いてみるとよくわかるだろう。強く気持ちが詰め込まれた歌詞に関しては、上手に音を外さず歌うことをあまり気にしておらず、言葉が持つパワーを前面に押し出した歌い方をしている。「大丈夫だよ もう平気だよ」という歌詞にはまさしく、たくさん悩んだ後にようやくたどり着いた前向きな気持ちを絞り出すニュアンスが込められている。短いフレーズではあるが、春香の魅力の真髄が色濃く表れていると言えるだろう。

 春香が今までに歌唱したバラードと言えば『またね』や『笑って!』、『さよならをありがとう』などが挙げられる。それらと比較して、『空色♡ Birthday Card』は「泣き笑い」といったニュアンスが色濃く出ているように思える。『またね』はゲームだと春香ソロ音源が聴けて、これもまた泣きながら笑顔をたたえているような健気さが伝わってくるのだが、『空色♡ Birthday Card』はそれよりも笑顔で前を向こうとする側面が強く表現されていると言えるだろう。
 また、2番サビの「偶然に会えたら話せるといいな」という歌詞も心を打たれる。「偶然」としばしば対比される言葉として「運命」が挙げられるが、「運命」は『またね』及び『笑って!』のキーワードでもある。『またね』では1番Bメロに「あの日初めて知った 隣のクラスにいたなんて 運命だね?」と、『笑って!』ではCメロに「突然の着信『昨日見かけたよ!』って これもまた運命だね? 勇気をくれた」と歌われている(余談だが『またね』には「偶然」や「奇跡」が類義語として登場する)。「偶然」と「運命」は捉え方によって類義語とも対義語とも捉えることができるが、『空色♡ Birthday Card』の「偶然」には「運命性」が薄く、『またね』及び『笑って!』の「運命」には「偶然性」が薄い、ということを提唱したい。
 すなわち、『空色♡ Birthday Card』における「偶然」は実現可能性が高いことを期待していない。これから先2人が交わることは無いと思いつつも、何かの拍子に会ったとしたら前向きな自分を見せたい……と、実現可能性の低い未来を仮定しつつもちゃんとした意思表明を込めている。
 対して『またね』及び『笑って!』における「運命」は「きっとそのようになることが強く約束されている」という感覚に裏打ちされている。ここでは、曲中に登場する相手と親密な関係だった・関係にまたなれることを強く期待している。
 上記のような対比を考えると、『空色♡ Birthday Card』の「偶然に会えたら話せるといいな」という歌詞もまた違って聞こえてくる……かもしれない。

2-2.空色♡ Birthday Cardのイベントコミュにおける天海春香

 MTSは全国を4つのチームが4つのエリアに分かれて巡業するという大枠になっている。プラチナスタートレジャーのコミュは通常のコミュの他、エリアの各地をアイドルが訪れるものが用意されている。数名ずつが登場する「エリア」と、全員のアイドルに個別に2つずつ用意されている「おでかけ」に大別され、全部読むとかなり満足感のあるボリュームになる。

 春香が登場するエリアコミュ「アイドル in 弾丸ツアー」は春香の他にのり子、亜利沙、美奈子が登場し、新潟の弾丸ツアーを楽しんでいる一幕が見られる。スケジュールの空きが合致した4人は魚市場や神社参拝を楽しんだ後、ご当地グルメのイタリアンを食べ、「美人の湯」として有名な温泉に行くことを話す。
 亜利沙をはじめ、アイドルである少女4人は美人の湯に興味津々な様子である。春香はというと、

春香「みんなで新潟を楽しみ尽くして、美人になっちゃおう! もちろん、プロデューサーさんも、ですよ♪」

空色♡ Birthday Card エリアコミュ アイドル in 弾丸ツアー

 と、プロデューサーを弾丸ツアーにノリノリで連れまわしている様子が伺える。仲間やプロデューサーと一緒にはしゃげることが楽しくて仕方ない様子がよく伝わってくる一幕だ。
 余談だが、新潟で美人の湯を冠した温泉を探すと「加茂七谷(かもななたに)温泉」がヒットする。展望も良く、機会があれば訪れてみたいものだ。

 春香とのおでかけコミュも見ていこう。1つ目では金沢の由緒ある茶屋街をイベントで訪れていることがわかる。同じ765プロの紬の実家が関わっているイベントであるため意気込む春香だったが、その最後で転んでしまったことを気に病む。テキストだと

春香「Pさん、お疲れ様でした……うう……」

空色♡ Birthday Card 春香とおでかけ1

 と普通に落ち込んでいるように見えるが、ボイスを聞いてみると「うぅ……」の部分で赤ちゃんが唸るような声を出して悔しがっているのがわかる。春香に言ったら怒られそうだが、正直大変にかわいい。
 一方で、プロデューサーはイベントが成功したことを労い、また春香が金沢のことをよく勉強してきたことをほめる。イベントに向けて予習を怠らない春香の真面目さが伺える。春香が多くの人から愛されるゆえんだろう。
 そんな春香をプロデューサーは、訪れている金沢にかけてこのように評す。

プロデューサー(それから春香に、金沢の話を聞いた。春香ならこの土地と同じくらい、たくさん歴史を作れるだろう)

空色♡ Birthday Card 春香とおでかけ1

 ゲーム内のプロデューサーがこのようにアイドル天海春香の資質を見出し、押し出していく様子が見られるのは、春香Pとして大変嬉しく思う。

 おでかけコミュの2つ目では、春香と有名な甘味処に訪れている。美味しい和菓子に舌鼓を打つ春香とプロデューサーだが、美味しそうに食べるプロデューサーの様子が春香は気に入ったようである。

春香「ふふっ、本当ですね。Pさん、すっごく美味しそうに食べてる!」

空色♡ Birthday Card 春香とおでかけ2

 このセリフもボイスで聞いてみると、イタズラっぽくプロデューサーをからかっているのが伝わってくる。ちょっとお調子者なところがあるのも春香の魅力だ。
 また春香は趣味のお菓子作りの一環で和菓子に挑戦することにしたようで、本屋でレシピを買っていくことを提案する。春香が作ってくるお菓子というとクッキーのような洋菓子のイメージが強く、和菓子に挑戦するのは新鮮と言えるだろう。

プロデューサー「もちろんいいけど……でも、旅先で本を買ったりして、荷物にならないか?」
春香「大丈夫です! ……Pさん、期待しててくださいね♪」
プロデューサー「? ああ、わかった。」
プロデューサー(そして帰り道、春香は『金沢の和菓子』というレシピ本を買っていた。これはひょっとして……!?)

空色♡ Birthday Card 春香とおでかけ2

 このような一幕もあり、プロデューサーと春香のちょっと甘酸っぱい距離感が垣間見える。プロデューサー側が少し鈍感なところが、またいじらしくもある。今後、春香が和菓子作りに挑戦した際の一幕を描いたコミュがどこかで登場してくれたら嬉しい限りだ。

2-3.空色♡ Birthday Cardイベラン記録

 『空色♡ Birthday Card』を巡って戦うプラチナスタートレジャーには大きな特色がある。登場するたびにイベント形式や走り方の最適解が大きく変わってきたのだ。「各シーズンに参加するアイドルが歌唱する楽曲から3曲をプレイし、最後にイベント楽曲を固定でプレイする」という基本は変わっていないのだが、PR・TPRを目指そうとするとその走り方を毎回変える必要が出てくる。
 初めてのトレジャー『ダイヤモンド・クラリティ』最大の特徴は、「お仕事」が無いことだ。これによりイベント期間中はずっと楽曲をプレイし続ける必要があり、2MとMMで効率に大差が無いことを差し置いても体力的に大変ハードなものになっていた。その代わりお仕事によるハイスピードなジュエル消費が無いため、通常では考えられないほど少ないジュエルで上位に入賞することができた。見かけ上のジュエル消費4桁でTPRに入賞したという報告もある(参考:ムーPさん:MTSやダイヤモンド・クラリティについて褒めたりトレジャーを走った感想を話したりするブログ)。
 続く『Shamrock Vivace』ではトラブルがあったものの、オートライブパスが余計に配られることで負担軽減が図られた。一番大きな変更点は、お仕事が解禁されてチケット走りができるようになったことだろう。これによって、自分のスタイルに合わせてライブ走りとチケット走りを選べるようになったが、上位入賞のための消費ジュエル数は増加することとなった。しかし上位を目指す人にとって最も特筆すべきは、諸条件を考慮すると2M走りが最高効率になったことだろう。MM走りと同等、ではなく、2M走りの方が効率が良いのだ。これにより前回とはプレイスタイルが大きく変わることとなった。
 そして『空色♡ Birthday Card』においても、大きな変更が図られた。最も重要なのは、2M~MMで獲得ポイント数に大きく傾斜がついたことだ。これにより、最高効率がMM走りとなった。加えて前回同様お仕事によるチケット走りができた。これらの変更により『空色♡ Birthday Card』の大きな特徴は
・MM走りが最適解になるため、イベランによる身体的負担が大きい
・消費ジュエルの多さが他の形式のイベントと大差なくなった
ということになる。筆者の個人的な意見ではあるが、『ダイヤモンド・クラリティ』には「普段だとジュエルが足りなくて上位に入れなくても、今回は時間と気力・体力があれば勝てる」という魅力があり、正直この形式を維持するべきだったのではないか、と考えている。普段勝ちにくい人が勝ちやすくなるイベントがあっても良いのだから。

 そんなわけで『CHEER UP! HEARTS UP!』に引き続きTPRを目指す私は、今までよりも厳しい戦いが予想していたわけだが、蓋を開けてみるとその厳しさは予想を超えていた。

 見かけ上のポイント数が伸びやすい形式であることを差し置いても、TPRボーダーが500万を超えてしまった。筆者は期間中に有給を2日とり、睡眠も毎日3~4時間に抑えたのだったが、それでも結果はギリギリだった。それだけ『空色♡ Birthday Card』にかける想いが強い人が多かった、ということだろう。

 実際のイベントの回し方としては、お仕事でチケットを貯め、時間が短い3曲(本イベでは『Happy Darling』『キラメキラリ』『PRETTY DREAMER』)をMMでプレイし、最後に任意の難易度で『空色♡ Birthday Card』を叩くというものである。身体を労わりつつイベランの手を止めないとなると、やはり重要になるのはオートライブパスの使い方である。お仕事を挟んでドロップするのもそうだが、期間中にイベント限定オーパスが100枚ほどもらえる他、報酬で通常のオーパスもかなりもらえた。そのためご飯・お風呂・少しの用事・疲れたときなど遠慮なくオーパスを使うようにした。また筆者の場合は毎月マニーと交換でもらえるオーパスもかなり貯め込んでいたためそれも我慢せず放出した。コツコツ貯金が功を奏したいい例だろう。
 オーパスの有効活用の他、曲をプレイする際のメンバー編成も重要となる。他のイベランにおいて2Mで回すために組んだ、スキル「ダメージガード」や「ライフ回復」を持つSRカードを入れた編成を活用した。MMをプレイし続けるととにかく指が疲れる。そのため、たとえばダメージガード発動中は少し手を止める、増えたライフを信じて曲の終盤は叩かない……等々の小さな工夫を重ねた。なおダメージガードの終了に気づかずに余所見をしていると、一瞬でライフが消えて数秒の時間と10ジュエルを無駄にするので注意してほしい。何回もやらかしたので。

 前置きが長くなってしまったが、イベランそのものの話をしよう。
 イベ開始日の5月17日(火)は午後に仕事の休みを取り、翌日(18日)3時過ぎまでほぼノンストップに走った。一時は30位台にタッチしたが、3時間ほど寝て仕事に行き、帰宅すると90位台まで落ちていた。再度翌日(19日)夜中まで走り、仕事に行って帰宅すると今度は100位より少し下の順位に落ちていた。このように、フルタイムで仕事に行くだけでも大きなハンデが生まれてしまうような状況であった。同じようにノンストップで走り続けるも、翌日(20日)3時間ほど寝て起きると朝の時点で90位台。仕事から帰ると100位ボーダーから置いてかれていた。本当に100位狙いの人達が全然止まらず走っているのがよくわかる。私も毎日3~4時間寝ているのでまだまだではあるが、これ以上睡眠は減らせないので勘弁してほしい。
 ようやく動きがあったのは21日(土)。カレンダー通り休日だったので一日中走り、やっと100位以内に戻ることができた。続く22日は、というと……

 そう、ISF09にようやく天海春香学会としてサークル参加できたのである――。新刊のジャーナルの他、たくさんの参加者で作り上げた学会誌や16歳衣装本も多くの方に手に渡って嬉しい限りである。この場を借りて皆様にお礼申し上げます。
 それはそれとして。ISF09に売り子として参加しつつも、イベントはオーパスで回し続けた。限界極まる感じはまさしく『紙・心・ペン・心 -SHISHINPENSHIN-』の世界である。目しょぼしょぼだし腰バキバキだし。移動時間等のロスも大きかったが、22日(日)が終わるあたりでは90位台で耐えていた。
 さて、23日(月)と24日(火)はというと、2日連続有給を取ることができた。もちろん睡眠以外ノンストップで走り続けるしかない。24日(火)が終わるあたりで最高40位台まで伸ばすことができた。
 しかし、イベント最終日である25日(水)。この日は普通に仕事に行き、帰宅すると……なんと95位。ここから最後の最後まで走るも、かろうじて順位を維持するのが精いっぱいであった。イベント終了1時間前の20時になって、ようやく理論的に100位ボーダーに負けない差を付けることができた。長く苦しい戦いだったが、最後の最後まで諦めずに手にした勝利の喜びは忘れられないだろう。

 前述したラウンジも無事2連続PL入賞を果たした。個人81位という数字はTPRの中で目立っているように見えないが、今までで一番大変かつ達成感のある順位である。あと1日休日が少なかったら、あと1日どこかで寝落ちしてたら、TPRに届かなかったかもしれない……今考えても冷や汗ものだ。
 2連続TPRとなったわけだが、正直これっきりにしたい気持ちはある。どちらのイベントも4~5万ジュエルを消費しており、疲労も浪費も半端ない。しかし、春香のために全力で駆け抜けたこの1か月間……「頑張ったな」と心から思える。悪くはない気分だ。

3.まとめ

 以上、MTSにおいて天海春香がどのような活躍をし、またどのようなイベントが与えられたのかについて一部始終をご覧いただいた。『CHEER UP! HEARTS UP!』及び『空色♡ Birthday Card』という素晴らしい楽曲を頂いたことの価値は計り知れない。既存の楽曲に見られる春香の魅力が漏れなく詰め込まれており、それだけでなく何かしら新たなエッセンスが加えられていたからだ。またイベントコミュにおいても、他のアイドルとの絡みや趣味において新たな一面が見られた。MTSならではの1対1のやり取りもあり、春香Pとしては嬉しいものであっただろう。
 さて、執筆時では直後にMTSのLOVERS HEART集大成となる配信イベント、「THE IDOLM@STER MILLION LIVE! SEASON-@IR!!!!! 〜LOVERS HEART〜」が開催される。天海春香役の中村繪里子さんも出演されるため、LOVERS HEARTを楽しんだ人も、本稿で初めて触れている人も、2000円で素敵な時間を過ごして頂きたい。

THE IDOLM@STER MILLION LIVE! SEASON-@IR!!!! ~LOVERS HEART~ | ASOBISTAGE | アソビストア (asobistore.jp)

 また、LOVERS HEARTのCDも今後発売されるため、ドラマパートでの掘り下げが期待できる。まだまだ、LOVERS HEART天海春香の快進撃は止まることを知らない。我々も全力で、春香と一緒にさらなるキラメキの中に飛び込んでいこう。

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