花束を。 前編
※この記事はうらたぬきさんワンマンライブ Flower のネタバレしか含んでおりません。
花、と聞いてどんな印象を持つだろうか。
私は昔から花というものが好きだった。見るものとしても、描くモチーフとしても。
一般的に、花は大切な人に送るもの。つまりは誰かを大切に思う気持ちを込めるもの。好きな人に気持ちを伝えるために送ることもある。卒業する時にありがとうという気持ちで送ることもある。誰かに元気になって欲しい時、誰かを見送る時、花を送る時は、必ずその花に誰かを思う気持ちを込める。
だから、今年のライブのテーマがFlowerだと聞いた時、純粋に嬉しかった。薔薇の花束を持つうらたさんを見たときに、これはうらたさんからの愛なのだと確信した。花言葉に準えた楽曲たち見て、愛しさと嬉しさで気持ちがいっぱいになった。
Flowerはdate.のように朗読があったわけではなく、Love!Love!のようにお手紙を読んだわけでもない。でも、108本の薔薇を持ってステージに立つうらたさんだけで、十分だと思った。
今までの楽曲と新しい楽曲をあわせて、可愛さもかっこよさも、大人な雰囲気もロックの激しさも、うらたさんの魅力の全てを見せてくれた。色んな個性を持つ楽曲が一つにまとまってうらたさんという花束を作り上げているようだった。
花に気持ちが宿るように、ひとつひとつの楽曲に愛を宿してくれていた。
そんな愛で満ち溢れたライブを、拙い文章ながら振り返っていこうと思う。
OPはどこかの豪邸から始まる。なに?なに?と思っているところに、高そうなソファに座り、たぬきのぬいぐるみを撫でるうらたぬきさんが映される。まるでペットのライオンを撫でる石油王さながらの堂々としたかっこよさ。こちらに目線を配るうらたさんに、まず一回恋に落ちる。(このたぬワンの間に何度恋に落ちるかカウントしていたらキリがない)
そして赤いジャケットを羽織り、車庫に向かううらたさん。えっ、車?!などと考えているうちに、車はオープンカーへと変身し、その助手席に薔薇の花束を置いて景色のいい岬を走らせる。これから結婚式場にでも向かうんですか?凱旋パレードですか?と常に思考と視覚の速度が合わずに振り落とされそうになるOPだ。
そしてOPからそのまま出てきたように、花束を持って現れた彼に既に心には『好き』の感情しかなかった。
始まりの1曲目はアルバムの1トラック目でもある『365日』、最初から愛全開、これぞうらたさん。にこにこ笑いながら、大きな薔薇の花束を抱えながら、これでもかというくらいに愛を伝えてくれる。玉屋さんの書くストレートな愛の言葉、それがこんなにも似合う人はいるだろうかといつも思う。
愛の数 愛の色 あなたにはあなたにふさわしい
花束を 言の葉を 愛の意味 どれを選んで送ろう
この歌詞のように、この歌には色で変わる薔薇の花言葉だったり、本数で変わる花言葉が散りばめられている。本数を重ねるにつれて愛が深くなっていくような薔薇は、うらたさんにふさわしい花だと思う。
そしてそんなうらたさんが私たちに送るのにふさわしいと選んでくれたのが、108本の薔薇の花束なのだ。うらたさんがワンマンを通して私たちに伝えたい気持ちというのは、ずっとずっと変わらない。
しかし「愛を囁き続けてもいいかな?」という歌詞のように、この曲はある意味序章に過ぎなかった。
続いては『ハイヒールプリンセス』と『グッデストルーラー』の、オラオラうらたさん2コンボ。
まずは、社会人の主人公に語りかけるようなセリフのある『ハイヒールプリンセス』。最初聞いた時は学生だったが、社会人になった今これを聞くとすごく胸に刺さる。それは痛いほどに。
みんなで全力の「もうたくさんだー!!!」を叫んだ後、本来であれば長台詞が入るところで、みんなで「うーらーた」コールをする。三度の飯より推しの名前を呼びたいオタクには最高の時間だった。しかも有休を取っているので、余計に良さを感じる。私の口から発したいのは上司や取引先への敬語なんかではなくて、推しの名前や推しへの愛だけなんだ。
続く『グッデストルーラー』も声を出せる曲。かっこいいうらたさんのセリフもありながら、私達も声を出せるなんて一石二鳥である。私たちが声を出すタイミングでイヤモニを外してくれるうらたさんが本当に好きだ。この楽曲でうらたさんは正しく私たちの“支配者”であるので、うらたさんが望むのであれば全力で声を出すしか私たちには無い。
『ハイヒールプリンセス』と『グッデストルーラー』、この2曲の間に自分のいる世界から、ライブの非現実の世界へと連れ出されていくのを感じた。胸ぐらを掴まれて俺を見ろと言わんばかりで、うらたさんから目が離せなくなる。頭がうらたさんでいっぱいになって、たぬワンの世界に浸っていくようだった。
そしてショートMCを挟み、「みんな声出せるかな〜」といううらたさんに全力で答える私たち。やっぱり推しに声を届けられるって最高だ。
「じゃあ、はいマウントです!って言える?」
これはもしかしなくてもあの曲だ!と会場のこたぬき全員が勘づいたことだろう。春ツアーでもやっていたけれど、あの時は声を出すべきか曖昧なままで終わってしまったこの曲。こうして声出しの指示を先にしてくれるのは純粋にありがたかった。
「せーの」
「「はい!マウントです!!」」
「あれって…?」
「「らしいよ星人!!」」
「これって…?」
「「らしいよ星人!!」」
みんなもリハしてた?というくらいには完璧なコーレス。これにはうらたさんもお前らすごいな…なんて言ってくれていた。これも愛だな、と思って心があたたかくなる。みんなうらたさんのことが好きだから覚えてるんだ。
『マウントリタガール』は、振り付けが印象的で、アップテンポで聞いているだけでも楽しい楽曲だ。振り付け動画をあげてくれていたのもあって、会場でも踊っている人が多くいて、一体感の生まれる楽曲でもある。そこにコーレスまで加わって、言わずもがな最強だった。だから、振り返り配信でうらたさんも良かったと言ってくれていて嬉しかった。自分たちが楽しいのも大事だがやはりうらたさんが満足感を得てくれるのが一番幸せである。
次は『偽味偽味LOVE』、『マウントリタガール』からのこの楽曲は非常に”わかる”だ。『マウントリタガール』の持つオタク同士のドロドロした質感から、毒を持つトリカブトをテーマにした偽味偽味LOVE、耳にスッと馴染むようで、心地が良い繋がりだった。
『偽味偽味LOVE』はダンサーなしに、うらたさんが一人で歌う。サビのシンプルな振り付けと、前奏のDANDANで毎回リズムに合わせて手を動かすうらたさんが好きだった。振り付けが複雑ではないからこそ、うらたさんのダークな歌声と、それに合わせた表情がよく記憶に残った。
十字切って 堕ちろ
という歌詞で、マイクを持つ手と空いた手で十字を作り、堕ちろで下を指すように手を下ろしていく。そこがすごく良い。ちなみにこれはうらたさんが考えた振り付けらしい、やっぱり推しって天才なんだ。
『マウントリタガール』でも手を正面に突き出すような振り付けがあるが、こういった振り付けの時に、うらたさんが顎を上に向け見下す角度になるのが好きだ。普通は下からの角度って盛れないはずなのに、うらたさんに普通など通用せず、黄金比なのではと思うほどのフェイスラインと、見開かれた鋭い眼孔心を撃ち抜かれたような感覚になる。最高とはこのこと。
『偽味偽味LOVE』が終われば次は『Jasmine』。先に言っておくと私は『Jasmine』が大好きである。SHIROSEさんの作るうらたさんの楽曲をこよなく崇拝している。去年は『Bad end』に狂わされていたが、今年は見事に『Jasmine』に狂わされた。うらたぬき×SHIROSE from WHITE JAM×Ryoheyはダメなんだ、もちろん『スーパーダーリン』も愛している。
話を戻すと、『Jasmine』を歌ううらたさんは、本当にジャスミンの香りがしていそうで、一度知ったら癖になるような妖艶な危うさを持っていた。すでにうらたさんを愛しすぎている私たちは手遅れなわけだが、とんでもない人を好きになってしまったなと再確認した。それほど、『Jasmine』のうらたさんには魅せられてしまう。「俺だけ愛せよ」なんて言われなくても、うらたさんしか愛せないんだ。
『Jasmine』の振り付けはかっこよさもありながら、どこか柔らかで、繊細で。元々うらたさんの踊り方が大好きだったけれど、ダンスレッスンで重ねた努力がしっかりと花咲かせていることが素人目にもわかった。見ている分には簡単そうに思えるけれど、確実に振り付けのレベルアップをしている。
個人的にRyoheyさんの振り付けは手の動きが特徴的で、手を美しく見せるものだと思っている。いつも指先まで意識が向いているうらたさんにはピッタリで、いつも手の方に目がいってしまう。「めちゃくちゃにしてあげる」や「好きの後遺症」の手を見ていると、前者は荒々しい激しい動きをしていて、そのすぐあとの後者では滑らかで柔らかい動きをしている。この緩急がたまらなく好きだ。
ダンスレッスンをしてくださっているのもRyoheyさんだから、今のうらたさんなら出来るのだと、『Jasmine』の振り付けを考えてくださったのだろうかと思うと、目頭が熱い。
そんな『Jasmine』から大きく変わって『ダンスロボットダンス』。
懐かしさも感じるこの曲、最後に声出しで聞いたのは2019年のそらまふうらさかの新年会だったと思う。date.でも歌っていた楽曲だが、同じ場所にいて声を出せて、良い意味で記憶を更新してくれたんだと思った。楽しそうにステージ上を動き回るうらたさんに、楽しそうに声を出すこたぬきたち、Flowerを見ている間に、何度声を出せることに感謝するのだろう。
「1、危ないことはしちゃダメ」
「2、指示には従うこと」
「3、自分の身は守ること」
「4、ど、ドキドキさせんじゃねーよ!」
見事に5公演、この瞬間に会場全ての人の心臓を射抜いたうらたさん。胸に手を当ててはにかむ彼のことを好きにならない人なんていない。
そしてこの曲の最後に、うらたさんが大きく足踏みをするのに合わせて、バンドメンバーがジャンっ!と音を出してくれるのが可愛らしくて大好きだった。
しっかりバンドメンバーとともに『ダンスロボットダンス』を締めて、SMCが挟まる。
「次はみんなが知ってるであろう曲を歌います」
「さすがに昨日知った人とか、連れてこられた人は無理だと思うけど」
「それでは聞いてください」
「シアワセは台本の外から!」
こんなにも知ってる曲があるんだというくらいには知っている曲だった。メジャーデビューをしたアルバムから、コロナの真っ只中も、さいたまスーパーアリーナも一緒に歩んできたこの楽曲。
もう何億回も言われていることは承知で、メンバーの名前が入った歌詞を歌う時に、それぞれの立ち位置を指すうらたさんが好きだ。この曲にはうらたさんの大事なものがたくさん詰まっている。
そんな楽曲の最後にうらたさんが108本の薔薇を抱えて、笑顔でこちらに差し出してくれた。
もし私たちの人生が決められた台本を準えて進んでいるのならば、その外からイレギュラーな存在として、“シアワセ”としてやってきて、全てを変えてくれたのはうらたさんだ。うらたさんの笑顔が“シアワセ”そのものだと強く思っているうちに、ステージが暗転していったのだった
そして幕間映像が始まる。「会場の皆さん」と突然良い声で語りかけられるわけだが、この素晴らしく良い声はうらたさんのご友人の武蔵さんなんだそうだ。まじでめちゃくちゃ良い声でした。ありがとうございました。
今年はバチェラーを模した映像で、白スーツを身にまとったうらたさんが豪邸を案内してくれる。私はバチェラーを見たことがないので、こういうものなのだと思ってみていた。きっと本物のバチェラーもカメラマンに生姜を食べさせるのだろう。
100%かっこいいだけじゃなくて、たまにボケを挟んできたり、よく分からないジュースを作り出してしまうあたりが、すごくうらたさんらしくていいな、なんてしみじみ思っていると突然の肉体美に殺されてしまう。今年のうらたさんは筋肉を見せることに抵抗がなくて恐ろしい。
しかもこの幕間、みんな大好きシャンパン爆発シーンのリプレイがある。もう二度と見れないと思っていた伝説の映像まで見れて、もはや涙が出そうなくらい嬉しかった。私たちがあの映像が大好きなこともうらたさんにはお見通しってわけだ。
最後にローズ受け取ってください、と愛の告白をするうらたさん。そこで映像は終わるが、ステージには幕間と同じ白いスーツに着替えたうらたさんが現れる。その姿はまさに花婿のようで、そうして歌う『No.1 Girl』は、うらたさんからこたぬきへのプロポーズだった。一輪の薔薇を胸元に差し、最後にはその薔薇にキスをした。一輪の薔薇の意味は「あなただけ」だ。
そして、その後に歌う『スイカズラ』。会えないあなたを想う曲。この曲を聞いて思い出す、『No.1 Girl』を歌った2019年の翌年、私たちが会えなくなった公演もまた、“花”だったということを。
ためいきばかりまた
増えていってしまっては
君も心配するだろうから
涙ふいて前を向かないと
わかってる でも
もう一度君に 会いたい
『スイカズラ』を聞きながら私の頭に過ぎるのは、あの会えなかった時期に、毎晩みんなが明日も好きでいてくれるだろうかと思う、と話したうらたさんのこと。
うらたさんはあの会えない間ですらほとんど弱音を吐かなかった。公演中止が発表された翌日の配信で声色がいつも通りで驚いたことを覚えている。コロナ禍にダミヘを買ったり、いつも楽しいことを届けようとしてくれていた。一番近く、一番優しく笑っていてくれた。だから私は、ふとうらたさんこぼした悲しい感情をずっと忘れられないでいる。
SNS上でしか、文面でしか気持ちを伝えられなかったあの期間は、寂しい冬のようだった。2021年になって、会うことが出来て、私たちは彼らからの愛を受け取ることが出来て、春になったのだと感じていた。けれど声が出せなかったあの時間も、彼にとってはきっと冬の続きだったのだと思う。実際に声を出して、愛をお互いに伝え合うことが出来て、初めて長い長い冬の雪が解けた。解けたからこそ、『スイカズラ』という曲として、過去の事として、彼は歌い上げてくれたのではないだろうか。
Flowerというライブは、冬を耐え忍んで咲いた、まさにスイカズラのような花だ。
そしてまたステージに映像が流れ、先程のバチェラーの撮影裏を見ることが出来る。
かっこつけながらも思わず笑ってしまううらたさん、その溢れ出た自然な笑顔が何より愛おしくて、私含め周りのこたぬきも感嘆の声を漏らしているのがさらに愛おしかった。
カメラさんとのやり取りを見ていても、スタッフさんとの関係の良さが伺える。うらたさんの無茶ぶりに答えてくれるカメラマンさん、うらたさんが無事シャンパンを開けた後になぜかすごく悔しそうにしていて、もうカメラマンさんすら好きになってしまう。また爆発したところ見たかったよね、私も同じ気持ちです。
『スイカズラ』でグズグズになったところから、映像で笑顔になって一息つけたと思ったのもつかの間、ここからうらたさん無双が始まる。
映像終わりの暗転したステージにちょこちょこと現れる影、暗転していても姿は見えているので、その時点で悲鳴があがり、その影が猫のポーズをとった所でさらに大きな悲鳴、そして照明がつき、生脚が目に飛び込んできて、脳が理解するためにコンマ数秒を置いてさらに悲鳴。悲鳴に包まれたステージにいるのは、完全にうらたねことなったうらたさんだった。
膝上まで見えた脚、猫耳のフードを被って、『うらたねこ』の可愛らしい振り付けを踊るうらたさん、内ももには猫のタトゥーシールまで入っている。しかもダンサーまで完全うらたねこ装備。さっきまでスイカズラで泣いていたとは思えない、まさに感情のジェットコースター。
これでこそうらたさんだと思う、悲しい感情をいつまでも残さない、そんなうらたさんだから好きなんだ──なんてその場で思う余裕はなく、私たちはキュートなうらたさんに(そしてその脚に)釘付けである。口を開けて見てる間に楽曲は終わっていた。
そして次に聞き覚えのあるイントロが始まる、それに合わせて後ろを向き体を横に揺らすうらたさん。かわいい、かわいすぎる。この曲は『可愛くてごめん』なのだけれど、もう可愛すぎるから謝んなくていいよ、謝らないでよ…と思っているところにざまぁwと嘲笑されるので、非常に気分が良い楽曲だなと思う。
『可愛くてごめん』は努力している子の歌だ。うらたさんの容姿の端麗さは努力でできていることを私たちは知っている。可愛くてありがとう。この衣装を着ると決めた勇気にありがとう。生きていてくれてありがとう。
そしてここでうらたさんは一度舞台袖に捌けていく。照れくさそうにしていたり、内もものタトゥーを見せてくれたり、しっかりと死体撃ちをしてから。
今の2曲は夢だったのではないか、と思うほどに一瞬の出来事で、狐につままれたような気持ちになる。そんなキョトン顔の私たちを、バンドダンサー紹介のかっこいいサウンドとダンスが意識を引き戻してくれるのだった。
後編へ続く
といいなとは思っています。ここまで読んでくださってありがとうございます。
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