甘いコーヒー
数年前まで一口飲んでは眉間に皺を寄せていたコーヒーも、いつの間にか飲めるようになっていた。
砂糖とミルクは欠かさず入れて、時にはスティックシュガーを二本。
苦味より先に甘味がくるコーヒーもどきは、大人になったようでなりきれていない自分を表しているみたいだった。
そんな私の隣で友人はブラックコーヒーを飲んでいた。
昔はみんなで炭酸ジュースを飲んでいたのに、いつの間にか手にはアルコールを持つようになった。みんなはビールを注文するけれど、私には苦くて飲めたものではなかった。
昔は時間がいくらあっても足りないほど推しの話をしていたのに、恋愛や仕事の話が増えてきた。みんな当たり前に恋愛をしているのに、私はそれを無駄なことだと思ってしまう。
周りだけがどんどん変わって、前に進んでいく。
そんな人たちに、あなたは変わらないねと言われる。
私だけが立ち止まって、歳だけ重ねた大人もどきでいる。
たくさんの人を見送って、一人で佇んでいても、それでも自分はこのままでいいやと思えてしまう。ついて行きたいとは思わない。
私はお酒よりジュースが飲みたいし、おしゃれなカフェよりも公園で遊びたいし、恋愛する時間があるなら推しのことを考えていたい。
そんな自分も変わらなきゃいけないと、最近そんな考えがぐるぐると頭の中を巡っていた。
15年、こんなにも長い時間を“うらたぬき”として生きていてくれた推しはすごい。
もちろん全く何も変わらないというわけではない。活動の規模や、方針、何を思うかだって、15年も生きていれば変わっていく。
でも、“うらたぬき”でいることは変えないでいてくれた。
去っていった人もたくさんいたけれど、うらたさんは変わらず配信をして、歌を歌って、ライブをして、何年も朝におはようと呟いてくれている。変わりゆく人をたくさん見ているはずなのに、それでも自分自身を変えなかった。
これから先どれくらい続くかはわからないけれど、うらたさんがうらたさんでいてくれる間は、私も変わらなくていいだろうか。
うらたさんという大きな存在を、ただただ追いかけていていいだろうか。
きっとどれだけ歳を重ねたってうらたさんを好きでいる気持ちは変わらないし、ブラックコーヒーを美味しいとは思わない。
甘いコーヒーを片手に、ずっとこの場所で見守っていたい。その時間が長く長く続いて欲しい。
いくらひとりで立ち止まっていても、その前にうらたさんがいる限り心は進んでいけるから、これから先も変わらない日々を。
15周年おめでとうございます。
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