一番古い記憶

保育園の運動会、先生を選んでビリに

 一番古い記憶、この瞬間に物心ついたのかと思うほどにはっきり覚えてる。保育園の運動会、たぶん3歳か4歳ぐらいだったと思う。手作りの紙の薔薇を鉢まで取りに行ってそれを持ってゴールまで走るだけの競技。それで、3個くらいあった蜂のところにそれぞれ先生がいた。その一人がお気に入りの先生だった。
 髪はボブで色が結構明るくて20人くらいに聞けば一人は金髪っていうくらいの明るさ、アイメイクも結構派手だったと思う。容姿以外は別に他の先生と違うことはなかった気がするんだけど、なんかその先生が好きだった。好きすぎて、将来は保育士になるって言ってたし、なんならその先生の苗字が鈴木で私の名前が葵だとしたら、将来は鈴木葵先生になるみたいなこと言ってた。なんだったんだあれは。
 まあそれくらい好きな先生がいて、その先生が運動会の時にたまたまいたんだよ鉢のところに。いつもは全然そんなことなかったのだけど、絶対その先生がいるところから薔薇をとるみたいな気持ちになっちゃって、自分の目の前の鉢にある薔薇は無視して先生がいるところの鉢に方向転換。一つの鉢の薔薇の数は限られてるから、わざわざ方向転換をして取りに行った私の時にはもう薔薇はなくて、それなら別の場所から取ればいいのにそれはなんか嫌で8の前にそのまま立ってた。そしてら先生が他の鉢から薔薇持ってきて先生の前の鉢に挿してくれた、濃いピンクの薔薇、それとって満足げにゴールした。こんなことしてたからもちろんビリ。でもそんなのどうでもよかった。一位になることよりその先生がいる鉢から薔薇をとることがその時何よりも大切だったんだと思う。
 他にこの先生のことで記憶にあることといえば、ど田舎だったから地域の情報とかすぐ入ってくるような環境で、先生の家を知ってて前を通るたびここが先生の家なんだなあと思ってた。あと卒園した後に結婚して苗字が変わったみたいな話を聞いた気がする。でももうその先生の苗字も覚えてない。
 なぜこの記憶がこんなに記憶に残ってるいのかわからない。一番古い記憶ってなんだろうと思っているうちに、これを思い出すからどんどん濃くなっていってるのかもしれない。でも、もっと他になんかなかった? 訳がわからないこの記憶じゃなくて。


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