H/KS




夜中に電話をするといつも出てくれた。こんばんはって言ってくれた。おやすみって言って電話を切っても怒らなかった。怒らせようと思ってやったこと、全部関係なかった。雨が降った時、街が雨に沈んだ時に、ううん比喩じゃないよあの日に、電話してきた。電話してきてくれたと思えた。何が目的だったの、あれ。気持ちがいいのは気色悪いよ、あなたとのシステムでは。

もう何年になるの。お前と出会ってしまって。お前なんて呼んだことなかったね。本当はいつも心の中で見下してるの。それで初めて対等になれるから。お前の言うことはいつも二番にしてた。じゃないと乗っ取られちゃうじゃない。私、あなたが幽霊見れるって、知ってるのよ。

なんで後ろの背景を見ちゃうの。それは過去のことなのにあなたに見えるの。私の代わりに言葉にしないで、私の代わりに感じたりしないで。感情は全部全部フェイクじゃない。少なくとも初めの感情じゃないでしょ。一周回って辿り着いたんでしょ。それってさ、私が求める共感じゃないの。

嫌いじゃないし好きだよ。でもざわざわするの。それで私が嫌いになるの。でも全部じゃないのよ。全部なんて書けないのよ。そもそも私私達、言葉なんて使わないのよ。もっと違うところで生きてるの。だからさこんな無駄なこと、させても私はパペットで、しかもばらばらに糸が張り巡らされて、その網の中を結局、あなたに歩かされてるのよ。私のいないところでこんな、こんなことしちゃうあなたに、預けられるわけないじゃないこころ。

せめて音楽でいてよ。悪い気にさせないでよ。安心できる花を送ってよ。開けるときビリリと、心の破けない手紙を書いてよ。タフだなんてどうでもいいのよ。まるまるしてていいのよ。せめて音楽でいるのよ。せめて音楽でいるの。






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