アライカへの返信




頑張って 可愛い子 お返しに 貴方に返信を書きたいと思う お前の声が中性的で実在感の無いこと 私は知っていました 彼女のお母さんが彼女のためにホテルを取ってしまったことも だから彼女のお母さんが彼女を酷くぶっていたことも その後にだからこそホテルを取ってしまったことも その流れの終わりに彼女と貴方が 導かれるようにして都市の狭間のオーブンポットで静かにしていたのに 私と兎が流れ込み プロセスを早めてしまったこと 君の朝の散歩に現れる身綺麗な青年 色白な異邦人を思わせるその中性性の青年は 実際にはまだ幽霊さ それは君も俺もご存じの通り 幽霊は幽霊 座標にはならない 彼はまだ実在になる意志も積もりも都合も無いだろう 彼との間に過去を共有してみるといい そこにはどんな現在も未来も そもそも時間も存在しない 存在の奥底に保存された傷跡が細やかに露呈されてて どんな時計もそこではストップ タイムマシーンに乗らずともトリップ 周りの人々の手首を締め上げる時計を鳴らす音頭とは矛盾 取り残されていくばかりであるというフィクションに対して勝手に不安をしたためて 二人で海の中の水の下を彷徨うばかりとなりましょう そんなトラベル いいですね どうか私もご一緒ください スキューバできる亀要員として優雅に同伴しましょう 酸素が足りなくなったら教えてください 尻尾を掴んでくれたら口移ししに 後ろを振り返ってから諦めを付けます

流れるような記憶の断片が 流砂に微睡むガラスの欠片みたいに光っていて それが夜の月の光を反射して 私を眠らせることがない キャラバンの一番後ろで新しい種類の駱駝に乗って 俺は未踏のオアシスを一人夢見る この秘密だけは教えたらいけないよ 羅針盤ロスト 北極星は君のもの この星に立って同じ空を見上げながら そこに浮かぶ北極星やその他の星々は 本当は君だけの物語を呟いては消えていく 届く光の情報が 君の有頂天に釘刺して 死ぬことだけは忘れてはいけないよ 運命の赤子それは君 浮かれた君の頭頂部にしっぺ返しを喰らわせる 優しく淡く柔らかく 光り肌撫でる新月の薄光 アライカへの返信を書き切らなくてはいけない あいつはもう居ないが 死んだ傍にずっと居たから 俺はそのことだけは知っている 俺はあいつの死の事実だけを知っていて 終点に至る叙情の微かなヴァイヴも何も知らない じゃなきゃ弔いなんて出来やしない 言ってはいけないことだけを敢えて言うなら 俺は夜の緑の公園で お前に口内射精してから家に帰り 一人で静かに眠りたかった お前はまだ自転車を漕ぐ帰り道にある それだけは確かに許されることを知っている これは時間や文章のことではないことの 種明かしだけは許されていないことも

グロテスクな程に優しくあれば 命の断片をトータルに触れてやることができたら そいつは君のためにどんな音楽も鳴くだろう 三十年前にメリルストリープが奏でたメインストリームなメロディー ちょっとポップでリリカルかつシニカルなジャズ調の告白も 繋ぎ合わせればドストエフスキーを越えるような超韻文学も 変換や翻訳が追いつかないだけでさ そいつから産まれ出るかもしれないぜ だから優しくしてやれよ お前のいる場所の通常からしたらグロテスクなくらいに 誰もそのことに気がつきやしないぜ 後から電話で俺にだけ こっそり教えてくれればいいよ グロテスクの甘さへの中毒に 人がどれだけ希望を見出してしまうか まさにそいつも手に届かない星の彼方の同胞人みたいな 居もしなければ在りもしない自傷的空想の中核を占めるお父さんかお母さん または双子の兄弟姉妹か早くに死んだ幼馴染みたいな 健全な希死念慮を抱き締めてから温水にして 代わりに庭に撒いてくれるような そんな手前勝手な心よき死神をさ 誰でも誰に対しても 実は求めてるってこと お前知ってるからそんなグロテスクなのさ 人生というタペストリーを お前はその糸で織っていく 全部が仕上がってから目に浮かぶ物語は お前の望む起承転結を拒絶している お前の声が中性的で実在感の無いこと 知ってるって俺は言ったよな そのネオテニー 一体全体いつからなんだ

ああアライカ まずはインターネットを作るよ 新しい繋がりをそこから またはゼロから作り直すから 温かい飲み物を飲んで待っていてくれないかな こちらはどうも完璧主義で 思った通りに伝わるメディアを 思い通りに生み出したい その前に文字からまたは言語から 俺はお前とのために作るよ 手話のような触れ合いをさ また昔のように繰り返そうよ 声を踊りのように駆使して お前の内側を外側に掲示して 私に一番に認めさせてください ああこれは昔から知っている とてもアンニュイで温かい 私達の音楽を代弁してくれて有り難う 感謝状はこのようにして 衆生の感謝を君に送るよ アライカは頑張った可愛い子 自分の周りにみんなの地獄とその上に天国を 作ってどちらかに送り込まれた神聖なる始まりの孤児 君をモチーフにして実はね 沢山の国が出来たよ あいつらまだまだリンボでリンボーダンスしてる 採点基準を俺に送り付けてくれたら 上から上機嫌なやつだけ君のところへ 寂しくないように送り届けよう 返信用の封筒を同封します 自分のアドレスを明記して返送すること じゃなきゃお前が結局どっちに行ったのか 俺は今でも知らないからな 最初の便りはいつでもいつも アトランダムなメモランダムなんだ














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