〇 ノ 十 ・ Ⅰ




何処にいるの何処にいるの 手の鳴る方へ落ち延びろ今 やってくるやってくる風が 風がまた北から来たからお前の匂いがこちらに訪れ 私の身体をどうしても風上に導いてくれるよ お前の代謝に内分泌を知っている 知っている先に想像上の舌触りを感じる 手の感覚を越えて舌触り歯触り呑み込む時の喉の粘膜の摩擦感に灼熱 お前は昔から咀嚼し辛いんだ この点だけは変わらない その目をする者を噛み砕けはしないよ

わおんわおん 何処にいるの何処にいるの 探してしまうよ探してしまう 月の光に森を彷徨いながらも探してしまう 月に光が満ちた夜の明るさを頼りに私が森を点検する時 ここには何があるここに何がある お前の匂い面影を探してしまう 誰でもいい誰でもいい お前であるなら誰でもいいんだ お前であり得るなら何処でもどこの誰でもいいしかしお前はいつの誰だって言うんだ 教えてください教えてください 私はあなたに出会ったことがありますか 私はあなたに用事と使命がありますか あなたはわたしにありますか 同じコップで飲んだ水のことを覚えていますか コップは本当に同じではありません でも水については本当でした それらの一つを知っていますか それらの一つ一つを憶えていますか 使わないならコップは要らない

割れよ割れ 和音破れよ 蓋をすればそれだけ強くなる 守るがいつの間にか壊すになっちゃう 力加減の引き潮が難しい 満ちるについては任せておけば安心だ 私じゃないわたしに譲り渡して仕舞えば終わり 間違いがない 間違いがない間違いがない 間違いがないために生きている訳じゃない間違えてしまいたい 紅茶が欲しいと言われたら新芽を摘んで口移ししたい クッキーと言われたらフィットチーネ 愛と呼ばれたら残酷 殴打らしくなく時に愛撫 振り返りながら疾走して思うこと 感情の振り子を仕舞ってください 波に優先されるは凪なんです

しまった 至極しまった 満月の夜の明るい森に生きている者共が 先にロンドを踊っている 命の持ち前を離れて皆んな輪になって踊っている しまったしまった仕舞ってしまった 自前の命のメトロノームを仕舞ってしまった これじゃ入るリズムタイミングが分かんないよ 仕方がないから今日はさ 二人あっちで噛み噛みしながら絡み合おうぜ わおんわおん 我を割れよ和音破れよだからいつからあなたは何処にいますの お前であるなら誰でもいいんだよ それからの話をしたいよ 波を止めて凪になったら風を頼って海を渡ろう 森を離れたそれからの話をしようよ 帰る迄の話 最期また森に帰る迄の話 私があなたを三度忘れて 我も忘れて森にまた帰る迄の話を わおん










ae