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美しい君へ




君は美しい。比べられるものではないが、君の美しさは私のそれを越えて行くだろう。しかしやはりそれ故に、君が身に浴びる醜さ、口に含むことになる醜悪もまた、私のそれらを超えていくだろう。なので覚えておいて欲しい、君が死ぬための海に沈みそうになったら、もう骨にさえ力が残されていないと感じたら、破滅や破壊そのものに喰われそうになったら、君の意志に依らぬ深い深いところから想い出して、どうか助けを求めて欲しい。私はその準備をしてきたし、そのためだけに生きてきたのかもしれないと、今は君の傍で思っている。多分、私たちはずっとこんなことを繰り返してきたのかもしれない。物覚えの悪い記憶を携えて、微かな風景に過去の永遠を思い返し、そして忘れながら、私たちはずっとこんなことをしてきたのかもしれないと、今は漸く想い出して、未来の私の君を見ている。私たちはお互いの記憶だ。揺らぎながら回り、あてどなく漂う合わせ鏡。あらゆるパターンから選び選ばれた儚いランデブー、別れ。ありがとう。ありがとう。我々は美しく、そのままに迎えに行くよ












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