ムーミン谷の地図上のスナフキン


『ファンタジーの世界地図:ムーミン谷からナルニア国、ハリーポッターまで』(原題は、The Writer's Map: An Atlas of Imaginary Lands)のムーミンの項目を読みました。イギリスで2018年に出版された本の翻訳で、大きめで重いので借りる元気がありませんでした…

ムーミン谷に関する項目「さまよう者たち」は、イギリスの小説家 フランシス・ハーディングが担当しています。

ハーディングが挙げている地図は、『たのしいムーミン一家』と『ムーミン谷の夏まつり』です。彼はとりわけスナフキンに関心を示しており、『たのしいムーミン一家』の地図について、「根っからの遊牧民」であるスナフキンの居場所は「そんなに簡単にはわからないはず」だから、スナフキンが地図に書かれていることは正確ではなく「彼ならおそらく地図のインクが乾くまえにテントをしまっただろう」と書いています。

面白い指摘です。しかし違う考え方もできるのではないかと思い、ムーミンを読み返してみました。

『たのしいムーミン一家』はムーミンの小説では3作目ですが、ムーミントロールとスニフは2作目『ムーミン谷の彗星』でスナフキンに出会い、ムーミン谷へ連れてきたという経緯があります。『たのしいムーミン一家』の段階では、スナフキンはムーミンやしきでムーミントロールといっしょに冬眠をしており、春になると目を覚ましてムーミントロールやスニフと遊びます。ムーミンやしきにスナフキンのベッドもあります(新版『たのしいムーミン一家』p.188)。

ハーディングの見解を真っ向から否定するわけではありません。スナフキンが帰ってこない夜があることも、たしかに書かれています(新版『たのしいムーミン一家』p.55)。一人で過ごすこともあり、物語の後半の夏の終わりに南へ旅立ちもするので、スナフキンが一人で自由に誰にも知られずに行動することを好むのは明らかです。そして、スナフキンの行き先については、書かれていません。

しかし、『たのしいムーミン一家』ではムーミンたちと一緒に過ごす描写もたくさんあります。とりわけムーミントロールと仲が良いですが、ムーミントロール以外とも関わります。少なくともムーミン谷にいる時のスナフキンは、ムーミントロールが探さなければならないことはなく、たまにどこかにいなくなるけど決まった居場所もある、ということのような気がします。

加えて、『ムーミン谷の夏まつり』には、「スナフキンがテントを張っていた川のわきの場所」とあり(新版『ムーミン谷の夏祭り』p.19)、スナフキンは決まった場所にテントを張っていたようです。

作品を読み返しながら考えていると、本の冒頭の地図にスナフキンと彼のテントが描かれることはそれほど不思議なことではないのではないかと、個人的には思いました。


以上、見直しがちょっと甘めです。内容に誤りがあれば、後日修正します。

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