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LOVE D RIVE語り (Long Mix)

9月6日は右寺先生のお誕生日です!! おめでとうございます!!!

LOVE D RIVE (The other remix)とone seek (super long remix)。
2003年4月9日発売のbeatmania THE PROMINENT収録。
5鍵のことを何も知らずに購入して聴いて、今もなお私の感情を揺らし続ける曲です。

2020年11月のテクノワールド遠征時だとか、1万5千字くらいのbeatmania THE PROMINENT語りだとか、機会はあったにも関わらずロング版については意外としっかり語っていなかったんですよね。

プロミネ発売20周年に合わせて全力で語るぞ!! ……と思っていたのですが……いかんせん、重い。曲に込められた感情が重い。気力を振り絞らないと筆が進まない。言い訳でしかございませんが。
ということで、LOVE D RIVEの分しかまとまっておりませんため、LOVE D RIVEの分だけお出しします。one seekの分も今年中には出したい……出します!!!
ちなみに画像は一昨年ワンドロで描いたやつ。

昔取った杵柄と言えなくもない、小さい頃に習っていたピアノと音楽の授業で身についていた初歩の知識+今年2月に買った音楽理論の本+WaveTone
をちょっとだけ活用しまして、調や音階の話も少々。

[HAPPY HARDCORE] LOVE D RIVE

恐らく、「Love Drive / Loved Rive」のダブルミーニング。
drive は「衝動」、rive は「引き裂かれる、張り裂ける」。
サビで「君が僕を愛してくれるのをずっと待っている」と歌ってはいるものの、その日は来ないのだろうと「僕」も理解しているのでしょう。抑えがたくも報われない思いを抱えて生きる決意の歌。

BE LOVINの続編のつもりだったとのコメント通り、ジャンル名は同じく「HAPPY HARDCORE」。似たフレーズもいくつか。そしてこの2曲、どちらもハ長調のようです(BE LOVINは後半で転調しますが)。
ハ長調とは、ピアノの白鍵だけで鳴らす「ドレミファソラシド」。童謡やピアノの練習曲にもよく使われているため、誰もが幼い頃から親しんできた調のはず。素朴で明るい響きをしています。――LOVE D RIVEがそういう音でできていると気づいた衝撃たるや。20年間もこの曲を聴いて泣いてきたんですよ!? メロディーも構成もシンプルだと感じていましたが……思ってた以上にシンプルだった……。

明るいはずなのに「情報」に流されていた? その懸念が深まったので、改めて繰り返し聴いてみても、流されているとは思えなかった。確実に、ただ明るい曲ではない。そういえば初めて聴いたときからずっと、明るいとも暗いとも言い切れない「複雑な味」を感じていた。
5鍵FINALのロケテ前に1日で作られた曲が割り切れているはずもなくて、ロングバージョンでもそれがそのまま残されていたのであれば、当時の割り切れなさを残す意図もあったのでしょうか。

そもそも「HAPPY HARDCORE」ですよ。いくらBE LOVINの続編で、ジャンルとして当てはまるとしても、この曲でこのジャンルを冠しちゃいますかね!? その高揚感は「HAPPY」が源泉ではないでしょう!? ロング版も泣かせに来てますし「このジャンルを冠していること自体が沼」なんですよね……。

Game size

ロケテスト初日:2002年5月16日
FINAL稼働日:2002年7月26日

ゲームサイズは1分23秒。5鍵の曲なので非常に短い曲です。構成もシンプルで、サビから始まり、間奏を挟み、Aメロを2回繰り返し、もう一度サビで終わり。とは言え、2回目のAメロはリズムパートが控えめに、ピアノがメロディアスになり、雰囲気を大きく変えています。実質Bメロ。最初のサビはソロボーカルだったものが、2回目のサビではハモりパートを重ねてよりドラマチックに。

この曲の歌メロ、びっくりするほど素朴なんですよ。特にAメロから取り出してみれば、それこそ童謡並み。「チューリップ」あたりを歌ってみればわかるかも。なのに曲全体からは朗らかさなんて感じられない。やっぱり胸がキュッてなりますもん。
ざっくり言うと、「LOVE D RIVEのAメロは『チューリップ』と同じだけど、サビはそうではない」んです。「ヨナ抜き長音階」と呼ばれているもの……の話にはまだ責任持てないのでこちらの記事を貼っておきます。曲コメントで「なんか和風の泣きっぽい感じになってしまいました。」と書かれていたのも、おそらくここあたりの理由なのでしょう。

サビ始まりの歌い出し「I see you always from far.」。この部分の歌詞とメロディーで、この曲で言いたいことはおおよそ提示されているはず。最初からたっぷり3小節ほど伸ばす音は、ハ長調の軸となる主音「ド」。意志の強さも、それを抱える苦しさも感じてしまいます。
ここの see の意味合いは「実際に見る」ではなく「想像する・思い描く」、「今はここにいないけど忘れられない存在を想う」的なニュアンスだと解釈してます。「遠くからずっと君を見ている」だと怖いじゃないですか!

間奏の付点8分のリフは音色こそ明るくて勢いを感じるものの、その内面には落ち着かなさを抱えている印象も。8分主体のBE LOVINは太陽みたいな明朗快活っぷりでしたからね。音ゲー的にも少々精度が出しにくくなりますし。

「ドレミファソラシド」のうち「ド、レ、ミ、ソ」だけが使われているシンプルなAメロは、この曲における強靭な骨組みや土台なのではないでしょうか。「君以外の誰だって君ほど愛せはしない」との思いを固める土台。後半のピアノに注目しても暗いメロディーには聴こえないのに、切なさを感じるのは何故だろう……。ピアノの音だから? キックが急に途切れるから? シンプルな歌メロとのギャップ? これに関しては今のところ、ただただ不思議がるのみです……。子どものはしゃぐ声が裏で聞こえて、それ自体は楽しそうな声なのに、この曲のやるせなさを引き立てているようにしか感じられない。つらい。

Aメロの終わりで駆け上がるピアノが、サビと同時に到達する最高音は「シ」。サビの歌い出しの音「ド」とは「濁る」和音になります。ただ、歌メロと違って長く伸びている音ではないんですよね。それなのに心なしか胸が詰まる感覚すらあります。……音楽って、不思議だ……。ともあれ、ゲームサイズではここで初めて「I love you honestly.」と歌うあたり、ただ幸せなだけではない愛の形を感じます。
ピアノはサビの前半で消え、柔らかい輪郭の音が鳴らすコードは(まだ印象止まりではあるものの)スッキリした着地ではなくて、当時のコメントに残る未練のよう。

ee'mall経由でポップンに移植された際の担当キャラは、DTO(10-2P)。当時としても衝撃は受けましたね。右寺先生ご本人がモデルとなっているキャラクターが、右寺先生ご本人が歌う決して報われないラブソングを担当するだなんて……!!
しかも2Pのカラーリングはグレー寄り。LOVE D RIVEには個人的に「様々な色が折り重なった結果の無彩色」という印象も持っているため、なんともおあつらえ向きです(主観)。
背景は J-R&B 3 / Can't Stop My Love のものを流用しているあたりも抜かりないですね。ほぼ同義ですからね。

ゲームサイズの印象をはっきりさせておかないと、以降のロングバージョンの話もできないなと思いまして。

Long Mix

beatmania THE FINAL OST発売日:2002年10月23日

サントラにおいてひとつ前のトラックである、蝶の羽 (Long Mix) のアウトロで降る雨音からシームレスに繋がる穏やかな波音。それがそのままピアノになって、メロディーへと展開していくようです。落ち着いてはいても、寂しさが拭い去れない、といった雰囲気。凪いだ海と日が傾き始めた薄曇りの空が似合うだろうな、とずっと思ってます。
広がっていくメロディーは、ゲームサイズのAメロの後ろで鳴っていたものとおおよそ同じ。ピアノを引き立たせるためかリズム隊が一旦下がるところも似てますね。
誰よりもそばにいてほしい存在が、もうどこにもいない、二度と会えない――どうあがいても変わらない事実と、ひとり向き合う。サビに近づくにつれて上昇するストリングスは、捧げるべき存在を喪ってもなお溢れる感情そのもの。
(ちなみに、この上昇するストリングスと同じメロディー、実はBE LOVIN (LONG) のイントロ終わりにも入っていたりします)

こみ上げる思いを歌声にすべて託したサビ頭のロングトーン。未だに目を閉じて聞き入ってしまいます。射抜かれるんですよ。不純物を一切含まない光線のごとくまっすぐに。揺るがない思いに応える存在はいないとわかりきっているから、その力強さこそが哀しい。
右寺曲にはロングトーンに感情が強く深く込められてるものがしばしば見受けられる中、これは最たるものだと感じます。ブレスが残っているのは右寺曲では珍しいかも。
後ろのピアノはゲームサイズとは違い、歌と同時に綺麗な着地。しかしストリングスには割り切れなさが残る。ここで止めるとですね、それはそれはやるせない。ハ長調なのは変わらないのに!

静寂のあと、ゲームサイズ準拠の展開になだれ込みます。これまでバラード調のアレンジに浸っていたのもあるでしょうが、音の密度の高さに違和感すら覚えるのも事実。「Drive / 衝動」は落ち着いた状態から見たらそういうものだ、とも取れるかも。

"Can you realize?"

再びBPMが下がり、一息に駆け上がるストリングスは、「届かない」悲哀がダイレクトに刺さる。
ゲームサイズで鳴っていたピアノの、サビ直前からサビにかけてのメロディー。歌の裏に隠れることもなく、しっかり伸ばされる「シ」を強調されるとこんなにも苦しさを感じるものだったんですね……。
そして最後の最後、「I love you until I die」。あまりにもシンプルで強い言葉を、ハ長調の軸「ド」に、すべて託して――叫ぶ。胸が締め付けられ言葉に詰まっても、もう一度息を吸って、前を見据えて、決してぶれないように。

曲の着地が、本当に綺麗なんですよ。何の未練もためらいも感じられない。この言葉を抱え続ける決意を、決して楽ではなく器用でもない生き方を、ここまで美しいものとして表現しちゃうんですよね……右寺先生ってお方は……。
ピリオドを付けてないのも、意図的なんでしょうか。終わりじゃない、って言いたかったんでしょうか。

[LOVE]の形はいろいろありますが、そんないろんな形を感じてくれたらと思います。

beatmania THE FINAL Original Soundtrack ライナーノーツ

ところで。しっとり歌われる前半のAメロ、その最後のフレーズ「I can't see you anymore anywhere.」の see は「実際に見る」方の意味でしょう。で、ゲームサイズにもあった「I see you always from far.」の see は「想像する」。この単語のイメージは「視界に入るものをぼんやりと見る」といった感じだそうです。
……つまりこれらを踏まえると、「you」は「かつては意識せずとも視界に入るほどの存在だったけど今はどこにもいない」みたいな流れが見えてくるわけですよ……。簡単な単語ほどニュアンスの違いが刺さる!! そこまで意図してたかどうかはわかりませんけどね!!

The other remix

beatmania THE PROMINENT発売日:2003年4月9日

ライナーノーツのコメントは、Long Mixのものと比べると簡素な印象。しかしプロミネに改めて収録するにあたり、Long Mixを――当時これに込めた感情を、そのまま持ってくるべきではないと判断したのでしょうか。

やはり穏やかな波音に加えて聞こえるのは、小鳥のさえずり。朝なのかもしれない。
アコースティックギターのアルペジオはLong Mixのピアノより最高音が上がっていて、明るさというか生命感が足され、寂しさをほんの少し乗り越えたように感じます。ただLong Mixのピアノはあとから重なってくるので、喪失感は薄まらず残っている? それでも時間の経過とともに様々な感情が降り積もっていったのでしょうか。
1分11秒から複数重なるギターのフレーズは、言葉のない歌のように雄弁。わざわざ言葉に「翻訳」するのも野暮かも。
また、ストリングスの音色も変更されているようで、より繊細な響きで他のメロディーを引き立ててくれています。

ゲームサイズ準拠の部分は、現実時間の経過を思えば「どんどん遠ざかる過去」のようにも思えます。
プロミネ発売の10ヶ月半ほど前、ロケテ版にも収録された、5鍵FINALのD-crew新曲。その未分化の衝動が別バージョンのリリースと共に変化していくのを、私も味わってみたかったですね……。

"Be calling now!"

駆け上がるフレーズはギターに置き換えられました。恐らく、自身で弾いたものに。
序盤で「寂しさを少し乗り越えた」と感じたのに、内に抱く覚悟が、より鋭くなったようで……Long Mixから思いを新たにしたのでしょうかね……。二度と癒えない喪失の痛みごと、「君」を決して忘れずに生きていくのだ、と。そういうことを……そういうことをする……!!

たぶん終わりではない

音楽理論、もっとちゃんと勉強するつもりだったんですよね。でもうっかり推しが増えてしまって以来、すっかり忙しなくなって入り口だけ履修したっきりになっております。
もっとハモリの話とかもできるようになりたい! 右寺曲のハモりは至高なので!!

one seekの話もリミットを設けておきますか……。
今年の20,novemberまでには。がんばります。

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