【ネタバレ】すずめの戸締り【個人の感想】

すずめの戸締り

※ ネタバレがあります
※ 個人の感想です。

 見た。すごい話だった。東日本大震災を真っ向から取り扱った大作だった。12年が過ぎてなおデリケートな問題を取り扱ったのは、どうしても表現したいものがあったからだと私は感じた。
そもそも、私が新海監督の作品を初めて見たのは10年前、秒速5センチメートルからである。そこで新海監督を知り、監督の作品はすべて見た。もっとも好きなのはありきたりであるが「君の名は。」である。
すべてに共通する~とか、彼の作品のテーマとして~とかではなく、自身がどう感じたか、という話として読んで欲しい。
 ① 美しい自然と恐ろしい災害。
  近年の監督の作品、「君の名は。」「天気の子」「すずめの戸締り」では、大きな災害がテーマにある。君の名は。では災害は避けられなかったが、人々は救われた。天気の子では、災害を避けるよりもヒロインが選ばれた。そして、すずめの戸締りでは、天気の子とは逆に、(のちに救われるにしても)一人の人間を犠牲にし、災害を防いだ。災害という人知を超えた理不尽に対し、人間がどう行動するか、に対する答えは、3作品で一通り描かれたと感じる。
  静と動、日常と非日常の対比は、物語の骨子である。高い表現力で美しく描かれた風景と、同じくらい高い表現力で描かれた圧倒的災害は、見る人の感情を揺さぶる。

 ② 美しいものをぶち壊す。
  きれいに描かれたものを壊したい。という意識を感じた。きれいに描かれた糸守に隕石を落とし、東京に大雨を降らせ、全国各地で地震を起こした。きれいなものを作りたい、という意欲と、きれいなものをぶち壊したいという欲望、どちらもとても理解できる。はるかにスケールの小さい話であるが、小学校低学年の時にコンクールで金賞をとった自由研究を自らの手で粉々にした時、快感で血がたぎったことを覚えている。

 ③ スーパーヒロイン すずめ
  強い。間違いなく新海史上ナンバーワンヒロイン。何がナンバーワンか。まず体力。化け物。足早いし、観覧車にぶら下がった状態から身体を持ち上げるだけの筋力。野宿もいとわない頑丈さ。野生児。
  次にメンタル。好きな人を諦めない。とにかく諦めない。泣いても立ち直る。人ともすぐ打ち解ける。積極的にヒッチハイク敢行するし、タフ。状況判断も的確。100万人の人命のために(一時的にしても)好きな人を人柱にする。その後絶対なんとかするという自信がないとできない。すごい。
  雲のむこう、約束の場所で浩紀は佐由理を救い、秒速5センチメートルでは貴樹が明里を探し、言の葉の庭では孝雄が百香里を救い、君の名は。では瀧が三葉を救い、天気の子では帆高が陽菜を救った。しかしすずめは自分で草太を探し、助けだした。久しぶりの戦うヒロインだった。大変好ましい。多分会いに来た草太に自分からモーションかけてごにゅごにょ。
  あと持ってるスイカもすごい。金無限に入ってる。上限ないんか。

④残念だったところ。
 すずめの戸締りは壮大な大作だった。それは間違いない。しかし残念だった部分がある。1、東日本大震災をテーマにしたがために、君の名は。のように過去を変えて多くの人を   
救うことはできなかった。それは残念。どうしようもないことだけど。ハッピーエンドが良かった。
2、都合の良い大人が出すぎる。
普通家出少女見たら警察なり児相なり連れていくか、親御さんに連絡、とするのが当たり前では?まあみみずが地震を起こす設定でいうことではないかもしれないが気になった。
3、すずめが過去の自分を慰めるシーンがあるが、なぜあれで過去のすずめが納得したか謎。小説読まなきゃ。あと吹雪く震災の現場に一人で戻っていくところも心がきゅんとする。かわいそうすぎる。
4、草太に惚れるの早くない?
 草太イケメンだしなぁ。でも惚れるの早ない?小説読まなきゃ。

以上が、私がすずめの戸締りから得た感想だ。新海監督は、とてもきれいな風景を描くことで有名である。美しい風景、日常、男女の機微、そういったものを映像化する監督、という印象もイメージもある。しかし、君の名は。天気の子、すずめの戸締りを経て確実に一皮むけた。おまえ誰目線やねんと思うが、次の作品が楽しみで仕方がない。


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