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PEPPERTONES(페퍼톤스)が好きな男による文章

 PEPPERTONES(페퍼톤스)に驚いています。彼らは2人ともKAISTという韓国の難関大学の出身だそうですが、そんなバックグラウンドを抜きにしても、彼らの曲からは音楽的IQの高さが滲み出ています。

・PEPPERTONESを知った経緯
 私が大学2年の時に沖井礼二氏のTwitterでReady,Get,Set, Go !という曲が紹介されました。これが正真正銘最初に聴いたPEPPERTONESの曲です。一聴して分かったのは、彼らが沖井礼二氏に影響を受けているということでした。(実際Wikiによれば沖井氏のCymbalsに影響を受けたと書かれている。) 沖井氏はさらに、この曲に出会えて良かったという投稿をしており、異国の地でありながらも、まるで師弟の様な関係性を感じさせる一幕でした。

・PEPPERTONESの音楽性
 彼らの音楽性は一言で表せません。しかし、あえてジャンルをつけるのであれば、オルタナティブロック(インディーズロック)と言えるでしょう。彼らは、本質的に良い音楽を追求しています。決してメインストリームの流行に左右されることがありません。これは楽曲の一貫性から明らかです。キャッチーな要素がありながらも、曲の中に物語が感じられて、そこに商業的な雰囲気を感じさせません。これこそが私のPEPPERTONESが好きな最大の理由と言えます。

・PEPPERTONESの特徴的な作曲手法
①片方の音程を固定して、もう片方を動かす
 これにより豊かで複雑な響きが得られます。例えばベースが同じ音を奏でて上モノがコードチェンジすると、特有の浮遊感が得られるオンコードとなります。またギターの開放弦をテンションノートとしてうまく利用することで、複雑な響きが得られ、さらにコード進行に一貫性がもたらされます。ボーカルメロディーに対しても同様なことが言えます。一般に同じ音程が連続したメロディーは退屈になりやすいですが、コード進行が土台を変えることでメロディーの持つ役割が時々刻々と変わってきます。

②規則的な反復の中に不規則なアレンジがある
 規則性と不規則性のバランスは作曲者にとって永遠の課題かもしれません。規則性は聞く人に安心感を与える一方で、退屈にさせてしまう原因でもあります。また不規則性は楽曲に刺激を加えてくれる一方で、やりすぎると筋が一本通ってない楽曲になってしまいます。彼らはこの絶妙な塩梅をうまく調節しています。
 規則性は容易に作れるので不規則性を作るにはどうしたらよいのか挙げてみます。例えば、メロディの一部を変える。コードを変える。歌う人を変える。楽器隊を変える。などです。もちろん歌詞が変わることによっても曲のニュアンスは変化します。

③裏声、口笛、掛け声といった遊び心
彼らはバンドミュージックに通常使われないような音を楽曲に融合させることができます。例えば裏声(ファルセット)はアジアの音楽では部分的に使われるのが一般的です。一方で、主旋律の大部分を裏声にする手法は洋楽でよく見られます。この意味で、洋楽的な要素を彼らは意識していると思います。
cf. SOLAR SYSTEM SUPER STARS
口笛は意外性のある飛び道具として効果的です。楽器隊にも埋もれない音域で、抜けが良いのも特徴です。歌詞がないことによって同じメロディーでも聞き手の印象は違いますし、間奏にサビの旋律を嵌め込む手法も散見されます。
cf. 공원여행 
そして、掛け声は個人的に大好きなサウンドです。インプロビゼーション的な意味合いが強いと思いますが、間違いなく音楽に人間らしさを与えます。音程が無いため、ライブでは様々なニュアンスを楽しむことができます。
cf. Freshman

・アルバムの感想と好きな曲について(フルアルバム)
1st. Colorful Express
冒頭で紹介したリード曲 Ready,Get,Set, Go !から始まるこのアルバムですが、全体的に渋谷系を中心としたJ-POPサウンドを感じます。2曲目のSuperfantastic もかなり人気曲で、とにかくコード進行が気持ちいいです。Everything Is OK は初期PEPPERTONES曲の中では、最も今のスタイルに近いと思います。二人で歌う曲が一曲しかないあたり、この路線で進むべきかどうか彼らも迷っていたのかもしれません。Fake Traveler はシン・ジェピョンの声が加工されていて、今はあまり見られない貴重な曲ですね。

2nd. New Standard
Now We Go という遊園地のような曲から始まります。Balance! はイントロのキメですぐに心を掴まれました。メロディが綺麗な正統派の名曲だと思います。New Hippie Generation はライブの超定番曲。学校の授業サボって抜け出せみたいな歌詞だったと思いますが、そんなことはさておき開放弦のコード使いが素晴らしい曲だと思います。MVで二人アコギ持ってるのは何故。 Drama はピアノ前奏後のイントロだけで満足できる音の密度感があります。バンドサウンドとチューブラーベルの音は意外と相性良いんですよね。個人的にイチオシしたいのはNew Standard という表題曲。掛け合いのボーカルでテンション上がるし、リフもカッコいいです。短い中にユーモア(主に音ネタ)が詰め込まれてます。最後にブゥ=3

3rd. sounds good !
表題は会話表現でいいね!という意味です。もちろん音が良いという誤訳も狙っているのでしょう。ゲストボーカルを多用した、この上なくポップなアルバムです。
Sing!のイントロ途中から出てくるシンセサイザー、地球上で一番気持ちいい電子音だと思います。買いたいので、知ってる方いたら型番とか教えてください。次にPing-Pong これはとりあえず聴いて欲しい問題作です。ベースの音が「金属」です。リミッターかけて、レゾナンス上げてスラップすればいいのかな… ピンポン球ラリーのアレンジは灼熱の卓球娘で経験していたので驚きはなかったけど、リリース年から考えるとこちらの方が先ですか。イジャンウォン曲のKnockは隠れ名曲という感じで、聴くほどに味わいが深まります。Bike' 09 というカートゥーン風のイントロから始まり、軽快な四つ打ちを決める曲はドライブにピッタリです。途中のSEは自転車のベルだけど笑。

4th. Beginner's luck
表題は初心者が得る幸運という意味です。この時点で彼らの音楽はある程度成功しているにも関わらず、謙虚な姿勢を表現しているのだと私は捉えました。加えて、新しいことに挑戦する人たちに向けた応援の意味も込められているのでしょうか。
1曲目の For All Dancers はイントロから拍トリックを仕掛けてきて驚きました。洋楽のノリがあって好きです。Good Luck to You はライブの超定番曲で、明るくキャッチーな曲です。2人の掛け合いが巧みに使われているのがLove and PeaceWish-listです。どちらも爽やかで好きですね。Asian game は独創的な曲で、サビで叫んだり囁き声になったり、普通思いつかないようなアイデアが光ります。Black Mountain は心が浄化されるようなスローテンポの曲で、一定のリズムを刻むドラムマシーンがより一層哀愁を漂わせます。この曲に限らずですが、アルバムを通して電子音のアレンジが随所に確認できます。

5th. High Five
表題はハイタッチという意味です。5枚目に合わせてますね。バンドサウンドが主体でライブ映えする曲が多いという印象です。期待感をもたせるロックサウンドのGOOD MORNING SANDWICH MANに始まり、最後は感謝のエンドロールで終わるという非常に粋な構成でした。CAMPUS COUPLE (With OKDAL) は調性が交互に変わる面白い曲でアルバムジャケットの大学らしい雰囲気にとてもマッチしています。私が特に好きな楽曲はTHANK YOUです。弾き語りでも聴きたくなるような完成された名曲だと思います。

6th. Long way
表題は直訳すれば長い道で、まだ先は長いという意味にもとれます。全体的に旅がテーマになっていて穏やかなミドルテンポの楽曲が多い印象です。long journey's end のイントロ弦モチーフは何かの引用でしょうか?個人的に気になっています。cameraのリフは十二音技法っぽくて機械的な感じが面白いです。イジャンウォン曲のbirdは優しい発声が好きで、とても落ち着きます。集団について行けずに取り残された鳥がテーマらしい。私がこのアルバムで敢えてオススメしたい楽曲はrunawayです。ロックサウンドで正直このアルバムのものとは思えません。ただライブの一発目にこれをやられたら高揚感で気絶するでしょうね。ラスサビのリードギターが好き。

7th. thousand years
表題は千年の年月(あなた達との年月)という意味です。どうやらthouは古語で"あなた"という意味があるようです。このアルバムは時世を反映した憂鬱な場面を思わせるumbrellaに始まり、落ち込む人々を力強く励ますGIVE UPで終わります。表題曲の台風の目では冒頭に雷雨のSEが入っています。雨というのは我々のなかで何か良くないことが起こったという共通認識を抱かせます。晴れの日にしか音楽を作らないと言われるシンジェピョン氏が雨を題材にしたのはよほど強い想いがあったのでしょう。私が特に聴いて欲しい楽曲はイジャンウォン曲のNight at the Safariです。イントロの印象的な開放弦オンコード進行とサビのぶ厚いコーラス、長尺だからこそできるメリハリの効いた楽曲構成などが素晴らしいです。

・最後に
PEPPERTONESのアルバムは日本において、あまり流通していません。Amazonも売り切れ状態です。ストリーミング配信のおかげで、彼らの音楽に触れることができますが、やはりファンとしてはアルバムを所有したいです。もし日本での入手経路を知っていたら教えて下さい!そして最後までこの記事を読んでくださったあなたへ、きっと上位数%のPEPPERTONESファンです。よかったらスキを押してくださると今後の励みになります。

おしまい

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