【ロック名盤100】#52 George Harrison - All Things Must Pass
今回紹介するのは、ジョージ・ハリスンが1970年11月にリリースした「All Things Must Pass」だ。電子音楽への挑戦をみせたサウンドトラックアルバムを除けば、これが彼のビートルズ解散から初めてのソロアルバムである。そしてこれは彼のキャリアでも最高傑作とされている名盤だ。
世にも珍しい3枚組アルバム。なぜ3枚組アルバムが出せるほど曲があったのかといえば、ビートルズ時代ジョン・レノンとポール・マッカートニーという2人のメイン・ソングライターに阻まれて十分に曲を録音できなかったから。そのため書き溜めた未完成曲がたくさんあり、ビートルズ解散後すぐに制作に取り掛かったというわけだ。このアルバムとシングル「マイ・スウィート・ロード」が売れに売れて、ジョージ・ハリスンはもはやジョン・レノン、ポール・マッカートニーにも引けを取らないソングライターであるという評価を勝ち取ってみせた。サブスクなどでは2001年のリマスター盤がメジャー化しているが、今回のトラックリストはアナログ・レコードのオリジナル・リリースを採用している。
1 I'd Have You Anytime
2 My Sweet Lord
3 Wah-Wah
4 Isn't It a Pity
5 What Is Life
6 If Not for You
7 Behind That Locked Door
8 Let It Down
9 Run of the Mill
10 Beware of Darkness
11 Apple Scruffs
12 Ballad of Sir Frankie Crisp (Let It Roll)
13 Awaiting on You All
14 All Things Must Pass
15 I Dig Love
16 Art of Dying
17 Isn't It a Pity (Version Two)
18 Hear Me Lord
19 Out of the Blue
20 It's Johnny's Birthday
21 Plug Me In
22 I Remember Jeep
23 Thanks for the Pepperoni
ジョージ最大のヒット曲「マイ・スウィート・ロード」はまさに本作のサウンドを代表するような完成度。自然を感じさせるアコースティックな音色にスライドギターを加え、なんとも神秘的な世界観として仕上がっている。比較的ポップなサウンドのこれまたヒット曲「ホワット・イズ・ライフ」や陽気でパワフルな「ワー・ワー」、メロディアスな表題曲も素晴らしい。僕が1番好きなのは「イズント・イット・ア・ピティ」で、個人的には人生でもトップクラスで感動を誘う曲かもしれない。合間に入るギターのフレーズがあまりにも幻想的で、美しい。
本作の曲全て素晴らしいソングライティングだ。やはりこの時期のジョージは"ゾーン"に入っていたのではないかとつくづく思わされる。もしビートルズが解散せず活動を続けていたら、ジョージが他2人に勝る活躍を見せていたなんてことも十分有り得ただろう。
ビートルズ時代からのシタールや東洋方面の音楽への興味が実を結んだ独自の世界観———ボブ・ディラン、ザ・バンド、エリック・クラプトンらとの共演で得た影響をふんだんに出力したルーツ・ロックのサウンド———そしてスライドギターという新たな武器を引っ提げて作り上げた本作は、なんとも美しい作品集として昇華した。
↓「マイ・スウィート・ロード」