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【ロック名盤100】#23 Bridge Over Troubled Water - Simon & Garfunkel

 今回紹介するのは、サイモン&ガーファンクルが1970年1月にリリースした「Bridge Over Troubled Water」(邦題「明日に架ける橋」)だ。彼らの事実上のラストアルバムである。アート・ガーファンクルはこの頃すでに俳優としてのキャリアを始めており、解散が近づきつつもデュオが作り出した彼らの最高傑作だ。
 ポール・サイモンによる完璧といっていい作品群が展開される。ソフトで聴きやすい仕上がりになっているが、かといって甘々なポップでは断じてない。ジャンルや色彩に富み、自分たちのルーツを大事にしているのが伝わる曲ばかりだ。2人の美しきボーカルはもとより言わずもがなだし、アレンジも秀逸。サイモン&ガーファンクルというデュオの幕引きは最高のアルバムによって彩られた。

1 Bridge Over Troubled Water
2 El Condor Pasa (If I Could)
3 Cecilia
4 Keep the Customer Satisfied
5 So Long, Frank Lloyd Wright
6 The Boxer
7 Baby Driver
8 The Only Living Boy in New York
9 Why Don’t You Write Me
10 Bye Bye Love
11 Song for the Asking

 表題曲は言うまでもない。同時期にリリースされたビートルズのあの「レット・イット・ビー」に匹敵するゴスペル風味の大名曲と言っていい。アート・ガーファンクルの美しき歌声が不意にも涙を誘う。続く、アンデス音楽を完璧にアレンジしてみせた名曲「コンドルは飛んで行く」でも再び涙腺が緩む。しかしこれは表題曲の感動的な涙とは違う。故郷の、自分の記憶の奥深くを感じさせる懐かしさを伴う涙だ。「ボクサー」も美しき和声と心地良いアコギが魅力的。
 しかしフォーク・ロックのデュオとして成り上がっただけあり、彼らはスローテンポのバラードだけでは終わらない。「キープ・ザ・カスタマー・サティスファイド」「ベイビー・ドライバー」あたりが僕はとても好きだ。エヴァリー・ブラザーズの代表曲として知られる「バイ・バイ・ラヴ」のライヴでのカヴァー・バージョンなんかも触れるべきナンバーだろう。最後は「ソング・フォー・ザ・アスキング」で優しく締めくくる。
 彼らのフォーク・ロックは、ボブ・ディランやバーズほどうるさくない。極めて静かで、聴く者の心を撫でるような歌が詰まっている。ロックならではのカウンターカルチャーとしての尖りはない(というのは安直だけど、言いたいことは伝わると思う)。ロックリスナーにも、たまにはこういう日があっていい。

↓「明日に架ける橋」

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