第13話 きまぐれシェフのでざーと
ーー「溶けちゃうよぉー、死んじゃうよぉー。あいさま~ぁ、部室にエアコン入れようよぉ、ムサシローンも全額返済できたんだしさぁ」
「暑かろうが寒かろうが、お前がグータラしてんのはいつも通りじゃねーか、朝倉っ」
夏休みも間近にせまる7月。学園祭での私達の演奏は大盛況に終わり、その成果は予想以上の活動予算となってオカカル部を潤わせる事となった。
策士。抜け目ない、あなどれない、アドレナリンなトモ先輩はちゃっかり学園祭の様子を撮影していたらしく、後日から販売を始めたDVDの売り上げもあいまって、楽器をそろえる為に組んだローンも完済。なおさら新しくエアコンまで買えるかもしれないと言うのだから、破竹の勢いもいいところだ。
学園の評価と期待にこたえる為にも、これは日々練習を積み重ね、さらなる高みへとオカカル部は邁進する所存でございますっ!
……って、おいこら先輩方。
ーー「先輩方……れ、練習はしなくていいんですかっ、練習は。かれこれまるっと2カ月っ、なーーっんにもしてないじゃないですかあっ」
「まぁまあ沙也加ちゃん、そんなにカリカリするとオッパイも小さくなっちゃうよぉ。ほらあ、今日のデザートも最高なのだからさ。はい、あーーんっ」
「目的も達成したし、ウチが貸したローンも終わったしな。たしかにがんばる必要がなくなったのは確かだ。まぁとりあえず食えや、牧村」
飽きたな……この人達ぜったいに飽きたな。ほっといたらこのままダラーッと夏休みが来て、ダラーッとクリスマスを迎えて……そうなったら部室にコタツとか持ち込んで鍋とかやりはじめて。
いやいやイイんですよ、それで。楽ですしね、デザートは美味しいですしね。……しかしですよ、私は両親の大反対を押し切ってバンドを始めたワケなのですよ。
情熱を持って青春を謳歌したいと言った私の芝居を鵜呑みにした両親は『沙也加、最高のステージだったね。次の演奏も楽しみにしているから』と期待しているワケなのですよっ。
そ、それなのにこの人たちときたら、後輩を捕まえて更年期のヒステリーみたくいいやがってぇえっ!
『……ハァハァ、な、なんとかしないとぉ。私の青春っ!』
少しだけ愛をください♡