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アルジャーノンに花束を。

 墓まで持って行くほどでもないですし、ともして遙か昔の事、時効ってヤツですので是非とも緩やかにお願いします。

 小中高とそれぞれ1回づつ、新聞に掲載された事項の “ 神の手 ” となりました。

ーー

 小学四年生の夏。

 さぁ明日から夏休みだと浮かれるものの如何せん手足が石のよう。
 校舎の私物を何から何まで一度に持ち帰れというのだから非力な私にはたまったモンじゃありません。

 授業で書いた絵画や作文、こんなモノは躊躇なく学校裏にある焼却炉に捨てたのですが

 『こりゃ焼き物だもの燃えないか……』

 仕方なしと歩く帰り道には田畑が水面をキラめかせていた……「あ、手でも掘れるなこりゃ」

ーー

 ひと月程の後、その土地では遺跡発見が紙面をわかし発掘された古代郷土品等が市民会館に展示となっていて、小学生は入館無料というお話。それでは暇つぶしにと覗いてみたのです。

 あれ? 埋めたはずの作品が……私は縄文時代からタイムスリップでもしたの?

ーー

 中学生の頃、学校には週2回行く程度でした。と言っても特段ヤサグれているワケでも何かに打ち込んでいるワケでもなく、だら〜っと青春を浪費する私。

 繁華街をウロつくような性分でも無く、山や森に入っては木の上で寝ると言うナントモな日々

 とある秋口、私が揺られまどろむ木根から友人の声で「釣り竿もってきたぞー」

「ヤマメは君には強敵だよぉ?」

 さも熟練のような事を言ってはみたけれど、そこはやっぱり山女魚、二人がかりで日が落ちるまでの成果は5匹にも満たず。

「これっぽち持って帰ってもなぁ……もうココで夕飯にしちまない?」

 友人が言った

 ……

「!!っ、 秋口の草ぁ、アホぉ!!危なく私達まで丸焼きじゃないのさコレじゃぁ!!」

ーー

 高校生。

 新学年に上がる頃、ちょうどその時期は夜間に働いていた運送ステーションのバイトもヒマだからと休みが多くなる。

 高校生になっても相変わらずだら〜っとした雰囲気で当時お世話になっていた下宿に向かう最中、正面から『今日ってハロウィンだっけか?』と思わせるような人影が姿を見せた。

「よう、ユッキー。何、今帰り?」

 中学時代の友達だ。ズタボロの制服に崩れたトンガリ頭、肩にはなんてーの?グランドをならす木で出来たトンボだかレーキってヤツをかかえている。

「んあ? イキっている隣高に乗り込んだんだけど、たまたま手に掴んだコイツでな、やつらボッコボコよ」

「……はイイとして何で持って来たのさそんなモン」

 なんて事を話ながらタバコをふかしながら帰る夕暮れ。なんとまぁ昭和っぽい青春。

 友人は不良グループの中でも存分目立つ存在なのだけれど、唯一? 私には厨ニな一面も見せるヤツだ。まぁ中学時代に散々抜いてあげたのだからナニガシ特別扱いなのだろう。

「まぁた木登りか、ホント好きだよなユッキー」

「ここからだと頭を垂れた苗が金色の海みたいなんだよ。……あ、昨夜テレビで見たんだけどさぁ。これって面白そだと思わない? せっかくトンボがあるんだし」

ーー

『スクープ!!突如出現っ!宇宙人のミステリーサークルか??』

 ……すみません、犯人は私と友人です。  

ーー

 と紙面を3度程。もう時効です♡

 大人になってからはですね、紙面は飾らなかったですけれど、町内をざわつかせた事が一度ありまして。

 住んでいたアパート。滅多に帰宅する事もなかったのですけれど、それでも時折はいそいそと隠れ家のように安眠を求めて鍵を開けていました。

 のに、ヤカマシイのですっ!!。アパートの道路向いに10台ほど置いてある自動販売機がどうやらヤカラの溜まり場になっているよう……いえ、アパートを選ぶ時に細部まで気を配れなかった私が不徳致したのですけれど。

 で、やや思案いたしまして自動販売機の前に花束とお線香、それとペットボトルのお茶とお菓子を数個並べてみたのです。

 ええ、なにがしで読んだイタズラです。

 それは噂がウワサを呼び、日々花束は増えていきました。

 それからひと月を待たずとして、思惑通りにヤカラ達は姿を消しました。さぁこれにて目的達成。

 ……だったのですが、後も尚捧げ続けらる花束や線香、架空の不幸話に陶酔し手を合わせる人々。
 
 それは違うモノを呼び集めてしまったようでして、すっかり本物の “ タマリバ ” となっていました。

 どうやら幽霊さんの寄り合い場を作って差し上げたみたいです私♡


 


少しだけ愛をください♡