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ホルスクエスト 第1話

第1話
山奥の村と2人の少年

木の上で1人の少年ホルスが本を読んでいた。
この世界で生きる者なら誰もが知っている伝説。
彼は、本当か嘘かわからないこの物語が好きだった。

木の下で幼なじみのニサンが呼んでいる声がする。

山奥の小さな村ボコイ。
ここで生まれ育った少年ホルス13歳。
幼なじみで親友のニサン14歳。
ある日2人は村長からお使いを頼まれた。

このお使いが世界を巻き込む大冒険の始まりになる事をまだ2人は知らなかった。

村長に頼まれたのは、隣のマトリン山にある教会のシスター・マリーザに小包を届けるというお使い。
片道数時間の小さなお使いだったが、大人が同伴しない初めての冒険でもあったので、2人の心は踊った。

小さな魔物と何度か戦いながら、夕方にはマトリン山の教会に到着。
教会に住むルメルというお姉さんに案内されて、年老いたシスター・マリーザに小包を無事に届けることができた。

添えてあった手紙を読んだシスターは、たしかに預かりましたと言って、じきに日が暮れるから泊まっておいきなさい、と続けた。

ホルスは包みの中身が気になったが、その日は初めての冒険への興奮と疲れですぐに眠ってしまった。


そして夜が明けた!


翌朝、シスター・マリーザとルメルにお礼を言って教会を後にした。

初めての小さな冒険ももうすぐ終わる。
少しの寂しさと、誇らしさを胸に故郷の村へと向かう少年2人。

しかし何か違和感がある。
ニサンも何かを感じたようだ。

村はもうすぐそこだと言うのに村人たちの営みの声や音が聞こえない。
不気味なほど静かで鳥のさえずりや水の音すらも聞こえない。
2人の足音だけがテンポを上げる。


故郷に到着して2人は言葉を失う。

昨日までボコイの村があった場所は、何もなくなっていた。
人も動物も木も家も、川や高台のような地形の起伏すらもない、滑らかな黒っぽい地面が山の間に広がっていた。



続く


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