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ホルスクエスト 第7話

第7話
砂漠の遺跡と魔族の男

砂漠を渡るため、ときかりの洞窟の近くにあるザリの村を訪れたホルス、ニサン、ミリコの3人。

ここは小さな村だが、世にも珍しい砂の上を走る船「砂上船」の港があり、砂漠の西側にあるジャピタの都へ定期便が出ている。

また市場にはゼピトの港から運ばれた品が並び、買い物をする人達で賑わっている。

ザリの村の砂上船乗り場からジャピタの都へは数時間で到着。
海の船ほど揺れはなく快適な船旅だった。

ジャピタは地上で最も古い都市のひとつ。
オアシスのほとりにある巨大な石造りの壁に囲まれた都市だった。
一行は道具屋で遺跡の探索に必要なアイテムを調達して、都のすぐ隣にそびえる遺跡へ移動した。

近くで見るジャピタ遺跡の迫力に圧倒される3人。
道中、砂上船からもちょっとした山のように見えたが、目の前で見上げると息を飲む巨大さだ。

ジャピタ遺跡は旧文明の物と言われてるが、ファルセンは旧文明を伝説上の月の民と結び付けていた。
5000年も昔の栄華は見る影もなく、あちこちが朽ちた抜け殻が化石になってたたずんでいるかのようだった。
ファルセンが持っていた月の民とコンタクトするためのあの箱。あれを起動できたとして、果たして月の民の末裔は今も世界のどこかにいるのだろうか?
ホルスはそんなことを思いながら、仲間と共に神殿内へ入っていく。

神殿の中は砂漠の熱気を遮断しているようでひんやりしていた。
目では分からないが、歩いているとかすかに地面が傾いているように思える。
しかも階段の段差が少し高めに作られていて歩きづらい。
今のところ魔物が出てくる気配はないが、こんな足場で一戦交えるのは危険そうだ。
一行は気をつけて進んでいく。

装置を動かす動力は素人でも見ればわかるとファルセンは言っていた。
本当にわかるだろうか。何度も入って調べつくした遺跡だから興味はない、とファルセンは同行してくれなかった。
お使いを押し付けられて腑に落ちなかったが、しらみ潰しに動力を探すしかなかった。

やがて3人は神殿の中心部にある少し大きな部屋に到着した。
他の部屋や通路に比べて部屋全体が明るい。

奥の壁には一面に巨大な絵が描かれている。
伝説に登場する「強大な悪」を思わせる黒くて大きな生き物の顔のようだ。
それに立ち向かうように入口側には人間たちと思われる絵が描かれていた。
ファルセンに話を聞いたからか、人間たちはどことなく月の民を思わせる容姿をしているような気がする。

壁画なんてボーッと眺めてないでこっちに来てみろよ、とニサンがホルスを呼ぶ。
あの壁の光、怪しくないか?と指さす。

ボロボロの部屋の中で1面の壁だけが青白い光を発している。
この部屋だけ明るいのはこの光のせいだったようだ。
近づいてみると壁には無数の丸と線が繋がったような形の窪みがあり、丸い部分には窪みと同じ形の青く光る石のような物がはめ込まれている。

これが動力でしょうか?
ミリコは手を触れずに光る石を観察する。
他にそれらしいものはなさそうだな、とニサンはいきなりナイフを突き立てて石を壁から剥ぎ取った。

大胆な行動にギョッとするホルスとミリコだが、どうやら壁から取り外しても特に何も起きないようだ。

ホルスたちは光る玉を鞄に入るだけ詰め込み、遺跡を立ち去ろうとする。

ホルスは部屋を出る前にもう一度壁画をちらっと見る。光源が減ったので少し暗くなった壁画がこちらをにらんでいた。
再び入口の方を向き直して歩いていく。

もうお帰りですか?

背後から声がした。
壁画の方を振り向く3人。
そこにはローブを頭から被った人物が立っていた。
暗くて顔を伺うことはできないがかなりの長身だ。

誰だ!?とナイフを構えるニサン。

初めましてジャラと申します。
と、長身の男は礼儀正しく名乗った。

近頃、楔(くさび)を調べ回っている連中がいると聞いて様子を見に来てみたのですよ。

3人はジャラの言葉がピンと来なかった。
声色は穏やかだがビリビリとした凄みを感じる。

太陽の民は相変わらず野蛮ですね。
番人を殺すなんて惨いことを平気でする。

楔、番人、ジャラの言っていることが分からない。
が、こちらを太陽の民と呼ぶのであれば、相手はもしかすると...

お前、月の民なのか?

ニサンが質問するとジャラは笑い出した。

まさか、あんなお馬鹿さんたちと一緒にされては困ります。
私は誇り高き魔族ですよ。

魔族とは、魔物を束ねるという存在のこと。
確かに実在する種族ではあるが、人前に現れる事など滅多にないはず。

あなた方の相手はその方にお任せして、私は失礼します。
生きてここを出られたとしても、これ以上私の邪魔をしないでくださいね。

ジャラは消える。

その方という言葉が指す方を見る3人。
縦にも横にもホルスの2倍はありそうな巨大なサソリの魔物が入口を塞いでいた。

両手のハサミを振り上げて襲いかかってくる。

3人は攻撃をかわして体勢を整える。
しかしすぐに次の攻撃が襲いかかる。
巨大なハサミと素早いシッポから繰り出される攻撃を防ぐのが精一杯でホルスには反撃する余裕がない。

ニサンは素早さを活かして足やハサミを斬りつけるが、一撃が軽い短剣では硬い甲羅に傷をつけることができない。
ミリコの魔法もあまり効いていないようだ。

ホルスは何とか効果的なダメージを与える方法を考える。
その間にも敵の攻撃は続き、壁画近くまで追い詰められる。
防ぎきれない攻撃が少しずつ3人にダメージを与える。
先程からシッポの毒針攻撃も受けている。深手ではないが確実に体を蝕み、次第に手足が言うことをきかなくなってきているのを感じる。

ニサンがこれはまずいかもしれない、と思った時、バチっという破裂音とともに視界の隅で閃光が走った。
何が起きたか分からなかったが、サソリのシッポの先端が鋭利に切り落とされている。

ホルスが何かしたのだ。

サソリが怯むのをミリコは見逃さなかった。
今です!と叫びながら守備力を下げる魔法を放つ。

ホルスとニサンは同時に斬りかかり、巨大な甲羅を両断した。

なんとか勝利した3人。
しかし毒を受けた体は思うように動かなかった。
3人はその場に倒れ込み、意識を失った。

続く

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