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 好きなラジオ番組の話し。2020年10~11月の毎週金曜の夜に放送していた『MAN TWO MONTH RADIO 小林千晃の千折不撓(せんせつふとう)』が好きでした。

 小林千晃さんはとにかく“飾らない人”なんだと思う。
 私がそう思ったのは、彼が2ヵ月間だけパーソナリティを務めた番組『MAN TWO MONTH RADIO 小林千晃の千折不撓』を聴いたからだ。
 ラジオにおける小林さんは、自身を取り繕わずに剥き出しのトークができる一方で、同じ声優から「甘くて響きのいい声」と評される声のトーンはとても落ち着いている。その2つのかけ算で心地よい時間を送り届けてくれる希有なパーソナリティだと私は思う。

 印象的なのは、リスナーからの相談に応えるコーナー『千晃くん、あのね』でのこと。「知り合って間もない人からの不躾なLINEに困惑している」というおたよりに対し、小林さんは「いますよね、最初の一歩がでかいやつ」と軽快な表現でリスナーをくすりとさせつつ、躊躇なくブロックを進言した。「心をひらいて弱音を吐いてくれる友人がいるけれど寄り添い方がわからない。自販機で買ったココアを手渡すのが精一杯だ」という相談には、「あなたがいること自体が充分に支えになっているはずだよ」と力強い言葉をかけつつ、穏やかなその声で「季節に応じてあったかいココアと冷たいココアを使い分けてください」と、想像の斜め上をいくアドバイスで締めくくった。
 頼りになるお兄さんを演じるわけでもなく、共感して寄り添うことに徹するわけでもなく、小林さんはどんな時もベールも被らない。その飾らなさが最大の武器であり、愛らしさすら感じる。“飾らないという飾り方”も存在するが、小林さんの在り方はとてもフラットで、そんな計算を感じさせない。学校の昼休みに友人と話すかのようなラフなスタンスだ。

 おたよりの読み方にも惹かれる。合いの手を入れながら、まるで会話をするように進めていて、間の取り方もうまい。その絶妙な緩急と声の温度は、時間の流れを自由自在に制御しているんじゃないかと錯覚してしまうほどだ。 

 普段は“攻められる前に攻めよ”の姿勢でとてもアグレッシブな小林さんだが、ラジオではこんな意外性も見せてくれる。先輩の斉藤壮馬さんを、なかなかご飯に誘えないのだ。
 LINE交換したことを嬉しそうに報告しつつ、「ご飯に誘ってね」と言われたからには誘いたいが、「どう連絡すればよいのだろう?」といじらしいほど真剣に悩む。気づけば、隔週ペースで斉藤さんとの進捗状況を報告することになったが、なかなか進展せず、ついには「ご飯に誘ってね」という言葉に嫌疑をかけ始める。「いや、でも、聞けないじゃないですか、『あれは社交辞令ですか?』なんて!」。そう語る小林さんは、普段のラフなスタンスとは裏腹に、とても可愛らしい。

 今でも小林さんがラジオや配信番組に出演するたびに、「またひとりラジオをやってほしい」という声が上がる。わずか2ヵ月だけの番組だったが、それだけ『千折不撓』は愛された番組だった。
 もしまたひとりラジオが始まったら……。声優として実力をつけ、勢いに乗っているだけに、見ている景色も違ってきているだろう。それでもそこには相変わらず優しくて、等身大で、何より“飾らない小林さん”がいるのだろうなと思う。


文:線、編集・校正:『ラジオの時間』編集部 村上謙三久様


 こちらのコラムへ応募したものでした。

 今回、素敵な企画のおかげで好きだった番組のことを幸せな気持ちで振り返ることが出来ました。貴重な機会をいただきありがとうございました。
 掲載には至らなかったのですが、編集部さんのご厚意に甘えて編集・校正をしていただきまして、とても嬉しかったので記念にアップします。
(私の元の文は順序ががちゃがちゃで全体の流れがよくなかったのですが、お力添えのおかげでめ〜ちゃくちゃ変わって感動しました。校正いただいた後で更に私のほうで触っています。おかしなところがあれば私の力不足部分です。)

 『別冊声優ラジオの時間 ラジオ偏愛声優読本』は2021年6月21日(月)発売です。小林さんのロングインタビューが掲載されます。
https://www.amazon.co.jp/dp/4799506781?psc=1&tag=kensaku999-22&th=1&linkCode=osi


以下、補足・脱線。

MAN TWO MONTH RADIO
 若手男性声優がパーソナリティーを務めるラジオ番組シリーズです。パーソナリティーは2ヶ月毎に交代します。番組タイトルは『MAN TWO MONTH RADIO {声優名}の{オリジナルタイトル}』形式。
 小林千晃(こばやしちあき)さんは33代目パーソナリティーです。毎週金曜23:00〜23:30に、インターネットラジオ『文化放送超A&G+』にて放送されていました。『千折不撓』は、『百折不撓』の百の字を千晃の千の字にした造語です。

「甘くて響きのいい声」と評される声
 評したのは小林裕介さんです。
 出典:小林さんのラジオは9番目くらいを目指す』(2020/10/30配信分)
 https://www.onsen.ag/program/kobayashi

 『千晃くん、あのね』
 印象深いおたよりを引用いたしました。
 当初は、『小林くん、あのね』という名前で番組サイト内で告知されていたのですが、小林多いしな~俺色にしよ(意訳)という理由で、名前くんあのねに変更したそうです。当時の実況TLの肌感覚ですが、コーナー名が好き!という方は多いと思います。私も大好きです。

 斉藤さんと小林さん
 こちらの記事が大好きです。小林さんのマネージャーさんと斉藤さんのやりとり。
 https://natalie.mu/comic/pp/moriarty02

アイス
 
本文では触れませんでしたが、『これからのアイスの話しをしよう』というコーナーがありまして、リスナーさんから寄せられたアイス情報を紹介し、時には食べていました。
 小林さんはTwitterをしていらっしゃるのですが、小林さんファンの方が小林さん宛にアイス情報をリプしているのを時折見かけるかもしれません。それは、番組最終回で「アイス情報はこれからも待ってます(笑)」と小林さんが話していたのもトリガーになっていると思います。待っているそうです。
 番組内で紹介されたアイスはすべて番組公式ブログに掲載されていますので気になる方はそちらをご確認ください。