後悔の話

皆さんは己が過去の行いを省みたことはありますか?
ああしておけばよかった、こうしておけばよかった。
誰にだってありますよね。
いくら悔やんでも過去は戻らないというのに。
それでも、人は過ぎ去りし時を求めてしまうのです。

しかし、そういった後悔は冷静になって俯瞰してみると自身ではどうしようもないものであることが往々としてあります。
その日、そのとき、その場所において、自身が最適な選択をとることが出来たか。
人間ですから、どう考えたって無理だったじゃんね、と笑えるくらいが健全なのかもしれません。
後にならないと後悔はできないですからね。
そして、後悔することが出来るということは、未来において自分自身が最適な選択を発見することが出来たと言い換えられると思うんです。
ああしておけばよかった、こうしておけばよかった。
あのときああするべきだったと、正解を後になって発見したと。
そのときには分からなかったことが、あとになって正解を導き出せた。
それはつまり成長に他ならなくて、喜ばしいことでもあると。
悔やむことが出来るんですから、自己の糧にもなっているのです。

なんの話をしているかというと、タンポンについてです。

私は学生時代、中古店にてアルバイトをしていました。
ブランドコーナー担当だったため、お客さんの使っていたバッグを査定する機会が何回もありました。
中古品ですから、買取に持ってきたバッグの中にお客さんの出し忘れていた私物が入っているなんてこともまあまああったんです。
大体は小銭とかポケットティッシュとかですね。
そういったものはお客さんに返却する決まりになっていました。

「お客さん、バッグの中にこんなもの入ってましたよ。お返ししますね」

お返しボックスと呼ばれているそれは、様々な客の私物を載せた歴戦の猛者でした。

そちらにお品物をお入れして、お返しする。
単純な話です。

なんの話をしているかですって?
タンポンについてです。

さて、そんなアルバイトを6年半も続けていましたから、バイトの中でもベテランになってきます。
なので、後輩の査定をサポートしたりします。
今回登場する後輩を仮にKとしましょう。
Kは年下の女性で、よくわかんねえ奴でした。
よくわかんねえ奴でした。
何を考えているのか分からない女でした。
シフト被るたびにカラオケに誘って来たかと思えば、誘いに乗った私を置いて、同じバイト先の男友達とサシでカラオケに行ってきた報告をしてくるような奴でした。
正直、苦手意識が強かったですね。
何考えてんのか分かんねえんだもん。

なんの話かもわかんねえって?
だからタンポンについてだよ。

んで、Kと一緒にバッグを査定していたときのことです。
お客さんが持ってきたグッチのバッグ。
真贋判定と状態の確認のために中を開けると、お客さんの私物が入っていました。
その私物こそ、タンポンだったのです。
生理用品ですからね。
致し方のないことだと思います。
しかし、男性店員の私からそれを返されると気まずいだろうなぁと考え、査定結果のお伝えをKに任せることにしました。

「Kさん、お客さん気まずいだろうからこれ返しといてもらえる?」
「分かりました」

なんてことのない、業務上の会話です。
正直、コンドームとか直筆のメッセージカードとか入ってることが何回もあったので生理用品ぐらいでは驚きもしません。
驚いたのはこの後です。


「私タンポンいれたことないんですよね」


Kは突然そういいました。
知らんがな。
マジで知らねえ。
返答に困った私はへぇーと軽く流して査定を続けました。

あのとき、私はいったいどんな回答を求められいたのか。
タンポン未挿入の告白をどう受け止めればよかったのか。

悔やんでいるわけではないのですが、正解が知りたい。
というかこの女はなんでそんな情報を私に伝えたのか。
まじでわっかんねえ。

まじでわかんなかったので、友人の中でも一番女に詳しいデパス君(仮名)にそのことを聞いてみました。
彼は私の話を聞くなり、説教してきました。

「お前は馬鹿か、そんなんだから駄目なんだよ」

一体どうして怒られているのか見当もつきません。

「その女はなぁ、お前にこう言って欲しかったんだよ」




「じゃあ俺のチンポン挿れる? って」





「そこですぐに、じゃあ俺のチンポン挿れる? って言えないからお前はダメな男なんだ」

そうなんだ。
知らなかった。
やはり、正解というのは後になって知るものなんですね。
後悔は先には立ってくれないんです。

ああしておけばよかった、こうしておけばよかった。
過去は戻りませんが、未来への糧にすることはできます。
もし、別の女性にタンポン未挿入告白をされても、次は即答できるでしょう。

「じゃあ俺のチンポン挿れる?」
と。








PS

Kがシフト被る度に、私を飯に誘うようになり、気乗りしなかったので行かないでいたら2か月が経過していたときのことです。
周囲の男性陣からKちゃん可哀そうだろ……と突っ込まれまくったので、本当に気乗りしなかったんですが飯に行きました。
流石に2か月間週4で飯に誘ってこられたら、なんだか罪悪感が沸いてきます。

なので洒落たバーガー屋に連れていき奢りました。

次の日、Kはめちゃくちゃ私の悪口言っていたそうです。

「社交辞令で言っていたのに、なんで本気にしてんの?」

あの日、あのとき、あの場所で。
もしも私がこう言えていたら、こんな悲劇は起こらなかったかもしれません。

「じゃあ俺のチンポン挿れる?」
と。


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