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春の航海

People In The Box 2024年 春の航海
仙台macana

一体どんな選曲だろうと、朝から色んなアルバムを聴いて楽しみにしていた。

日曜日に聴く、日曜日/浴室。
Ghost Appleはどの曲も好き、そしてそれはすべてのアルバムに言えることだけど、日曜日は特に好き。Peopleの歌詞は考察し得ないというか、本当のことは波多野さんにしかわからないというかもはや彼自身にもわからない世界かもしれないので多く語るものではないけど、死を意識することが生を強く実感することのような、そういう空気を纏っている作品がたくさんある。ただそれは年々「生活」なのだと思うようになってきた。

「リリースでも、周年でもない、ごくシンプルなツアーをやりたいとずっと思っていて、このタイミングで出来て嬉しいです。我々の短くない歴史の中から優れた名曲たちが今よみがえる」という1度目のMCの通り、名曲たちが次々に演奏されていく。そういうことをさらっとユーモアであり本気で言ってしまうところが好きだし、演奏とMCのギャップは相変わらず凄まじい。

昔の曲も今の彼らが演奏することでまさによみがえる、というかそれ以上に良さを増していた。ライブは何度も観ているけど、その度に圧倒される。素人ながらにこんなことを言うのは失礼も承知だけど、本当にずっと上手くなり続けているというか、プロだからとかじゃなく純粋に音楽が好きなんだなと感じる。複雑なんだけど違和感は全くなく心地よい、むしろシンプルなんじゃないかとも思えてくる、3人それぞれが異なるリズムのようでぴったりと重なる瞬間、音のない間も彼らの音楽の一部だ。

音楽を聴いて思わず泣いてしまう時は歌詞にはっとしたり共感したりということがほとんどだけど、今日3人が向かい合って演奏している時に気付いたら泣いていて自分でも驚いた。どういう感情なのかわからなかったけど、彼らの音楽を聴いている時は邪念がないというか、集中、没頭、ライブが進むにつれてどんどん感覚が冴えて心なしか視界がクリアになっている気さえする。これが音楽を体感するということなのかもしれないと、今こうして言葉にしてみて思う。

名曲がよみがえるならあれも聴きたかった、というのはもちろんあるけれど、本当に良い時間だった。

余韻できるだけ引き延ばしたくて、春の街をしばらく歩いた。


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