虚構

あの時、彼女が貸してくれた映画をなんとなく見て、なんとなくと言っても、眠れなくてテキトーにテレビつけて、アマプラをぼーっと眺めていて付けた映画。それがたまたま昔の女が貸してくれた映画だったというだけなのだが。これが俺のなんとなくである。

初めて見た時、面白いと思ったし、彼女とは付き合う前だったし、彼女の面白いと思うものを面白いと思いたかった。だから面白かった、ドキドキしたなんて、本当のような嘘、今となっては嘘だ。そんな言葉を書き連ねたルーズリーフを手渡したな。楽しかったな、あの時は、やっぱり、人間関係は確立するまでが楽しい。ドキドキする、毎日新しいことばかりだ。知らないことばかりで、新鮮なのだ。最近になってそう思う。でも、今も新しい人と関係を築くとなっても、そんな考えはすっかり抜け落ちてしまう。関係は終わってからこう、反省点?みたいな。あの頃はこうだったなあ、なんて思うのだ。あの頃はこう思ってたなんて、今思うのは、それは嘘じゃないか?偽りじゃないか?ってこういうこと考えちゃう時は大抵ひまなんだ。なんか暇だから。こんなの考えてもどうしようもないし、他人の作品みて他人の人生観を自分に上書きした気になるしかない。それで俺って、彼女のどこが好きだったんだろう?なんか、独特なとこ?なんだろうな、言葉にできないや。今は好きだと思ってないからかな。昔のことだからかなぁ。まあ、わかんないしいいや。わかんないし、この映画ももうすぐ終わるや、こんなにつまんなかったっけ?つまんなかった。あの時だってきっとつまんなかった。でもこの映画を薦めてくれた彼女が気になってたから。それが効いたんだね。こんな面白くないのに。とおもうことが、今の自分を肯定する唯一の手段なのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?