隣の舞子

、、家が燃えていた。



そこにはバチバチと物が燃え響く現場に一人、哀愁の影を見せる者がいた。


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夏は初め、私はまだ彼を知らなかった。


いつしか彼に私は心を奪われていた。



「誠に申し訳ございませんでした!」

頭を深々と下げ、お客に詫びをする私、舞子。

高級な服屋、ブランドのECILと言う場所で働いている。

今はお客様の服の発注で、サイズミスをしてしまい謝っている。

「、、」

背が高い。180cmは超えている。

「、、お姉さんいくつ?」


「、、23です、!」


「そう。また来るから、サイズ頼むよ」


「かしこまりました、、 またお越し下さい!」


年齢だけ聞かれた、そしてかっこよかった。


そう、私は面食いだ。かっこいい人には目が無い。


「ちょっと舞子何してんのさ、サイズ間違えたのかい?!」

この人は店長の飯塚さん。姉御的存在。

「はい、すいません、、気をつけます、、。」


入店してから1ヶ月、ミスが多くて自棄になりそうだった。

それでもかっこいい人を見て、モチベーションを保っていた。


そして今日、特にかっこいいと思う人と出会った。



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「舞子さ またあんたイケメン探ししてんの〜?

もういい加減にしたら〜?笑」


そう言うのは友達の美香。高校時代からの級友だ。


「え〜だって辞められないんだもん かっこいい人って見てて飽きないじゃん!」


ここは有名なカフェ、2週に1回美香と二人で来る。


「ほんと舞子なんだから、、

で、最近仕事どうなの?」



「そう! いい人見つけたの!」

目を輝かせて舞子は喋る。



「、、もうさ、、仕事の話じゃ無いけど、そんなにかっこいいの?

テンションいつもと違うし」

若干、呆れながら美香は言う

「凄いんだよ 背高くて、小顔で、綺麗な二重で、

そして来週また来てくれるの」


「来週? 何?何があったの?!」


私のミスがきっかけなんだけどね、、」

舞子は肩を窄めながら喋る。

舞子的にも結構落ち込んだミスらしい。

「ミス? でも会えるきっかけができたんでしょ きっと何かの縁だよ

来週話しかけてみれば?」


「ん〜 緊張するし難しいよ!」

今回は自分のミスで再び来てくれ、とても立場的にも難しい、と思う舞子


「いいじゃんチャンスだよきっと もう2度と会えないかもしれないよ!」


「も〜 美香は楽観的なんだから

美香こそ最近どうなの、上手くいってるの?」


美香には二つ上の彼氏がいる


「最近ね〜、まあまあかな。可もなく不可もなく。でもそう言うのが一番良いのかもしれないね」


「へえ〜そうなんだ なんかいいね 羨ましいよ〜」


「そう? でも舞子は今のチャンスがあるでしょ 掴まなきゃちゃんと」


「、、そうだよね ちょっと頑張ってみるよ」


いつも通りの会話、落ち着いて過ごせる時間がどれほど大事か、この時はまだ分かっていなかった。


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「ああ、今日も終わる。よくやったな俺、、」

目眩から解放されて寝床に着く。

「ああ、、」

気怠げに、疲れ切って、ベットに体を潜り込ませる。

「また、明日もか、、」

深く息を吐きながら、言葉を流す。戦いを幾度と無く繰り返した様な、そんな言葉だった。


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「いらっしゃいませ!」

今日は例のあの人が来る日、とても楽しみにしていた。


「、、(いつ会えるかな、、、)」

期待を胸に、浮き足立つ舞子


「ちょっと舞子、仕事に集中しなさいよ?」

飯塚さんから注意が入る。

「はい! 集中します!!」

どうもよそよそしい様子が周りに映っているのだろう。

舞子からは、緊張と楽しみが垣間見える


「こちらお会計一万二千円になります!」


淡々と、順調に仕事をこなしていく。


「ありがとうございました!」


そんな中でも消えない緊張感。


「いらっしゃいま、、」




「久しぶりお姉さん。」

例の人だ。

「、、いらっしませ! 

お久しぶりです、、!」


突然店内に入ってきた。

「変わってないね、服準備してある?」


「あります!少々お待ち下さい!」


自分の気持ちとやるべき事がまとまらない。


ただ準備していた服を取りに行くのに、頭は混沌としていた。


「こちらになります!」


「、、ありがとう」


「チャンスだよ、掴まなきゃ」

美香の声が聞こえた

「あの!、」


「、、?」

「お名前なんて言うんですか?」


「名前、ああ 雪人」


「雪人、雪人さん、、」

「そう、雪人、どうかした?」

「いえ、!あの、なんでもないです」



「、、そうだお姉さんの名前は?」


「、、!舞子です、、」


「舞子さん、か。

そうだ、連絡先教えてよ」



急な展開だった。

「、、

わ、分かりました、!」

「これ」

連絡先が書かれた紙が渡される

「メールでもなんでもいいから連絡して」

「、、はい!!」



「ちょっと舞子?!」

飯塚さんに見られた

「失礼致しました、お会計一万五千になります。」


お金が置かれる。


「一万五千円ちょうどお預かりします」


焦りながらもチャンスを掴んだと思った。


「こちらレシートです ありがとうございました!」




そう言った矢先、雪人は目の前から消えていた。


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消えた。視線を下にずらした一瞬に。

何が起きたか分からなかった。


普通であれば目に映る身体、それが無い。

超常現象と言っても過言では無い状況

舞子はただ呆然とする他無かった。

「ちょっと大丈夫?舞子」

飯塚さんだ。呆気に取られてた所に気付いてくれた。

「ああ、ちょっと、、」

「なんか様子変だけど、休める時は休みなさいよ?」

「分かりました、、ありがとうございます」

疲れから来るものか、いや、確かに消えた。


頭が追いつかなかった。


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「今回は何処ですか」


「今日は住宅街の地下じゃな

恐らくそこに情報があるわい」

「ここ、ですか。分かりました、探してみます。」


淡々と並べられる言葉、そこには涼しくも熱い情熱が滞っていた。


「、、じゃあ夜月博士、行ってきます」


「おう、気をつけてな、

あ、そうじゃ、あまり使いすぎるでないぞ」


「わかってます、最小限に留めます」


その会話を終えた瞬間、雪人は消えた。



「ここか、」

辺りを見渡すと住宅街に出た。


目的の場所の地下に移動を始める。


「新しい住宅街だな、、」


見渡せば築7年と言ったところか、8階建てが並んでいる。


「あった、ここだ」


地下の入り口を見つける。

「鍵か

、、」

博士からもらった鍵を使う

「よし、、」


奥には下へと階段が続いており慎重に進む。


「部屋だ、」


奥へと進む前に物音を聞く


「、、誰もいなさそうだな」


ドアノブを掴み開ける、部屋には机があり、その上には資料が置かれていた。


「あった、これだ」


放火事件簿ファイルを見つけ出した雪人。

「、、このなかにあるはず、、」


瞬間移動少年と放火事件


「見つけた、これだ、、」


「一人の少年は家に取り残されていたが、超常的な能力で安全な場所まで移動したという。また、少年の家族は意識不明の重体であった。放火事件は組織によって企てられてると言う」


、、、



哀愁を漂わせる姿が昔と変わっていなかった。


「大した情報じゃないな、、」


基地に戻ろうとする雪人。


また瞬間移動を使った。


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「だから本当だって!」


電話越しに喋るのは美香

「いやわかんないって、何?雪人って人が瞬間移動したって?」

「そう!消えたの!」


「もー、全くわけわかんないけど、疲れてるんじゃないのー?」


話しても信じてもらえない事は分かっている、だけどどこかで心を落ち着かせたい。その一心だった。

「、、もう分かった、寝るよ、ちょっと疲れてたんだよねきっと」

そう言うしかなかった


「私も寝るよ、無理しすぎないでね」

「ありがとう、、そしたらまたね」

ツーーッツー



「(はあ、ほんとわけわかんない)」

雪人さん、関わると色々面倒なことになりそう?

そんな疑問が出てきた

「(そういえば連絡先の紙貰ったな、、)」


おもむろにメールを送ろうとする舞子

「(なんて送ろう、、)」


今日はありがとうございました。 急に帰られてびっくりしましたよ、!

またいらして下さい。


「送信、と」

「(こんなのでいいかな、、)

(まあでも、連絡先知れたしいっか!)」


布団に潜り、目を閉じる舞子

「(今日も頑張ったな、、)」


自分を労い、沈んでいくように眠っていった。


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バチバチッ


何かが燃える音が聞こえた。


それは煙に変わり徐々に家を蝕んでいった。


「、、何??!」

煙に気づいた舞子は声を上げる。


「ちょっとやばくない?煙ってどうしよう 誰か!」

咄嗟に窓を開ける舞子


家が燃えていることに気付く。


「どうして?! 早く出ないと」


扉を開け下に降りようとするも、炎が邪魔で下にいけない。


「最悪、、どうしよう出られない」


炎が激しく燃え上がる。


このままだと逃げれずに息絶えてしまう。


「誰か!」


窓を開けて助けを求める、しかし周りはどう助ければいいのかわからない


119も呼ぼうとしてもすぐには来ない


「終わった、、」


諦めかけた







「大丈夫?」




そう言うのは長身で小顔の男


「雪人、、、」



「ほら、捕まって、」


雪人の手を硬く握る舞子


その瞬間家の外に脱出した。

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「いやぁ、間に合ってよかったよ」

一時はどうなることか焦りに焦った舞子


「もう、なんなのよ本当に、、」


「ごめん、忙しくさせて、でも大丈夫俺がなんとかするから」


「そもそも、瞬間移動するってどうなってるの?!」


「ああ、これは生まれつきの能力みたいなさ」


瞬間移動は間違ってなかったと確信する舞子


「もう、、ほんとによく分かんない、、家も無くなったし、、」


「それなら大丈夫、ウチに来なよ研究室みたいなとこだから広いよ」


「もう、、そう言う問題じゃないけど、、


とりあえず助かってよかった、ありがとう」


「どういたしまして」


















































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