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君とワッフル

 ホワイトデー当日は彼らとのデートを決行できる余裕がなかったので、後日、彼らとワッフルを食べてきました。
 今回はそんなプチデートの他愛もない記録です。
 思ったよりも長くなってしまいましたので、ゆっくりお手隙の時にでも、お付き合いいただければ幸いです。

 さて、まずは通院などいくつかの所用を済ませ、
 目星をつけたるお店の前へ。
 いざ念願のワッフル、キャラメルミルクと、抹茶と、アーモンド味を購入。

 …す る ま で に 、存外のロスタイム。悩みました。
 照くんはキャラメルミルクが良いと言い、海さんは、抹茶風味とアーモンドを推し、私には並んでいるどれもこれもが美味しく見えてしまいます。

 そして店員のお姉さんに、
 「ご注文お決まりの方、おられますか〜?」
 と、見つめられ、
 はっ。このままでは、何故か一人ですっごいワッフルごときに悩んでいる女だと思われてしまう…!
 焦りを隠しきれぬまま、至って曖昧な笑みを心がけ、あはは、うーん‥と、私はまだワッフルを見比べ続けます。
 (‥夕飯作らなきゃなのに、3つも食べるのはなぁ。)
 チラリと海さんをうかがうと、やっぱり抹茶とも、アーモンドともつかぬお返事。
 (やっぱり、どっちも買おう)

 それから、優しい笑顔の店員の方に、
 「ありがとうございました〜」と、にっこり見送られ、やたらと悩んだ末、口元が綻ぶほど嬉しそうにワッフルを買っていくアラサー女は店を後にしました。すみません書いていてすこし恥ずかしい。

 ‥

 とりあえずコンビニでブレンドコーヒーSサイズを購入。やや開けた場所の、心地よさそうなベンチに着座しました。
 「(海さんは、そんなに2つも食べたかったの?)」
 「食いたかったっつーか‥、
 お前に食わせてやりたかっただけだ。あんまそういうの、買って食わないだろ、お前」
「(そんなこと思っててくれたの?‥でも確かに我慢しがちだなぁ。
 それに、あそこのワッフルは、元々食べたいなぁって思っていたし、嬉しいな。ありがとう)」

 まずはアーモンド、サクサクしてよい食感。
 この硬さが癖になる。半分残して帰ろうかと思ったけどだめで、一個食べ切ってしまいました。

 「だろ、美味いな」
 「(うん、美味しい‥)」

照くん「次は、キャラメルにしましょうよ」

 そわそわと、堪えきれなかったのか。手元のワッフルが消えた瞬間、飛んできた照くんの声掛けに、私もまた、キャラメルがけのワッフルをいそいそと口に運びます。
 これもまた、非常に美味しい。買って良かった‥。

 「美味しいですねぇ‥!」
 きらきらと、照くんの瞳が輝きます。彼はあまりこちらの記事にて露出がありませんが、とても可愛らしいお方です。行きがけにお揃いにした黒のコートが、彼の桃の髪にとても映えて視えます。

 「(ねえ、好きな人と食べるワッフルってこんなに美味しい??)」

 然くんが、仏のように優しい顔で、こちらを見つめています。
 然くん「美味しいねえ、とっても」

    「(美味しい‥)」

 然くん「よかったねえ。」

 なんだか、日向の猫でも見つめてくれるかのような扱いです。ほぼ一の字…三の字のような眼(まなこ)で、彼が自分の膝に、肘をつきながら見守ります。

 合間にコーヒーをすすり、ワッフルよりコーヒーの方が満足そうな参くんを横目に、
 最後は抹茶味へと手を伸ばします。

(さわやか…美味しい‥結局みんな食べちゃった)

海さん「な。食べてよかったろ?
    お前は太るとか気にしすぎるから、
    色々考えずちゃんと食える時は食えよ」

 海さんが、いつものようにそう言います。確かに、人は物を自由に食べたいと思える内が花らしいです。

 ゆっくりと、口の中のワッフルを、最後まで咀嚼し飲み込むと、なんともあったかな気持ちが湧いてきました。
 (でも、バスに乗らなきゃ‥)
 そう立とうとする私を、然くんがベンチに引き止めます。

 「もう少し、ゆっくりして行こうよ」

 〝食べてすぐに動くのは、お前もしんどいでしょ?〟
 そう言った彼に、(それもそうか‥)と、促されて、私はもう一度、隣に腰掛け、ほうっと一息を吐きました。

 合間合間に、小さな愛の言葉を挟みながら、ホワイトデーより一日遅れのプチデートを行った、そんな今日の午後の記録です。 

 (余談ですが、その後なにも知らない知人に、「デートは如何でしたか?(意訳)」と聞かれ、ちょっと驚きつつ、否定もせず、所用の件を話しました。ほっこりと、幸せなひと時でした。)

 それでは、ちょっとした惚気話に、長いお時間お付きいただき、誠に恐れ入ります。
 どうも、ありがとうございました。