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婚姻届けを出すつもりでお詣りをした話

 私達で決めた姓に藤の一字がある御縁から、
 花も見頃となった某神社へお詣りに伺いました。

 今回のお詣りでは、誰の目にも触れない、私達の気持ち上の話ではございますが、市役所に婚姻届けを出すような気持ちで足を運ばせていただきました。

 このことは随分前から彼らと約束していたことで、
 結婚からは八年越し、想いも固く満ちて、念願の参拝となります。
 
 今回はそんな彼らと一緒に神社に向かった件を、かなり長尺でお話しております。
 どうかお好きな所まで、お付き合いいただけたなら幸いです。


◆どこかに婚姻を届け出ること

 まず私達の考えとしてですが、
 視えない存在との結婚を届け出たい場所があるとすれば、ご縁のある神社へのお詣りが一番しっくりくると考えました。

 そもそも婚姻の成立自体は本人たちの意思によるものであり、必ずしも届け出が要るわけではありません。 
 物理的な場合でも、婚姻の意思と、伴に過ごした年数によっては内縁関係である事が認められます。

 また、届け出のお願いにあがるとしても、様々な形や既存のサービスなどもあり、
 届け出る上で自分達が何を望むのか。
(生きた人の手によって認められたいのか、
 視えざるものの傾聴を得たいのか、その両方か等)
 認められた形に対し、自分達が満足し、納得できるのかが重要だと思っています。

 私達の場合はそれが御縁を感じた、ここと決めた神社への参拝だったのです。
 

◆事前準備

 大層なことを執り行うわけではありませんが、
気持ちの上でもちゃんと準備したいなということで、
事前にあれこれと決めてから参拝に伺いました。

①日取りを決める 

 最初は大安も視野に検討をしておりました。
 が、そこは視えない存在との結婚。色々な覚悟も見据えつつ、どんな時も諦めず、私達は最期まで、手を取り合う方を選びますとお話に伺うのです。

 今までも結構波乱万丈だったので、荒波は小さくが宜しいのは正直な所ですが、今回はただ静かに、お認めくださいと伝えたい。

 そんな気持ちと共に、ちょうど今月の友引が月は違えど私達の結婚記念日に重なっていたこともあり、せっかくならどなたかにとっても、幸せを繋げられる日にしようと日取りを決めました。

②衣装や持ち物を決める

 計画を始めた去年から、
 もし着ていくなら、ウエディングドレスとまでは行かずとも、綺麗な白のワンピースにしようと決めていました。
 装飾の可愛い華奢なバッグ、揺れる花のピアス、藤の花の色に似た光沢のある靴と、花の簪、それに合わせたヘアアレンジにも気合いが入ります。

不器用なりに、ネイルチップにも花を散らしました。

 持ち物には彼らの依代達、それから綺麗に磨いた人数分のお賽銭を包んで、レースの袋へと詰め込みます。

その他はご紹介したくて一緒に撮影したのですが、
左側がリーディング企画でいただいたメッセージを印刷したもので、いつも見える所に飾っています。
右側は以前自作した彼らとの婚姻届けです。証人欄には参くんの名前もあります。

③マナーを再履修

 神社本 庁のHPには、礼儀作法の手順とともに、
 敬意の表し方は人それぞれとあり、そちらを開いて少々ホッとしました。

 私はかなりおっちょこちょい…で済まされる内は、まだ良いのですが。  

 近場の神社にご挨拶に伺う際はいつも、
 「真面目な気持ちですが、不躾そうな挙動をしてしまいすみません、お話聴いてくださってありがとうございます」までが大体セットです。

 なんとか一通りの作法を履修して、前日はお清めの気持ちから塩風呂+最近サボり気味だったパックを顔に施しました。
 せっせと禊に力を入れる私の傍らで、ポンと肩に手を置かれるような然くんの声が聞こえます。

「お前はちょっと気にし過ぎるところがあるから。 
 そのままで行こうと思うくらいが調度いいよ、
 予定調和を外れても、いい思い出だろ?」

 力み過ぎだと、やさしく諭されました。

◆参拝、そして帰還。

特定を避けるため藤棚の写真のみでお届けいたします。

照くん「空気が澄んでいていいところですねえ」

 都会からやや離れた閑静な高所地。照くんは少しだけハイキングのような物言いをしています。
 (そう書くと、私も似たようなものだったと不服を申し立てられました。)

 何とかこのまま無事に辿り着くかと思われたものの、残念ながら最後の最後で道に迷いました。
 しかし、たまたま近くにおられたご親切な方に、分かりやすく道を教えていただき、目的地まで辿り着くことができました。

 到着後も、素敵な参拝者の方にお会いして談笑し、写真撮影にもご協力させていただく運びとなったのですが、その流れで私(達)の方も、何枚か写真を撮っていただけるということになりました。


 ⚠ このあと後ろ姿の写真があります。
  苦手な方がいらっしゃればご注意ください。





 私達は、種類の異なる藤棚をいくつか見上げ歩きました。
 もう少し早ければちょうどよいくらいの咲き加減だったかなとも話しつつ、藤の花は、こんなに良い香りがするのだな、とも思いました。
 その香りは、帰ってからもふとした時に続いて、取れるのが勿体なく感じました。

 手水を済ませ、拝殿にて、速やかにご報告を済ませようと思ったのですが、案の定、覚えてきたはずのお作法は行列を前にした焦りと共に総括してふっ飛びました。汎ゆるタイミングが分からなくなった。
 
 私達の住所と名前、関係の説明を大変早口に、
 ご報告と、よろしければ今後とも、どうか見守っていただけますと幸いです。
 その旨だけは、なんとかお伝えできました。

 そそくさと退場すると、次にお詣りをされていた方のお作法が大変しっかりとされており、非常に眩い
 (あちゃあ、いけないなあ‥)と凹みつつ、
 列が引いたあと少し遠くから手を合わせました。

 早口で無作法になってしまいすみません、どうかお支えくださいと補足していたら、
 「大丈夫だよ、ちゃんと伝わってるよ」と、然くんがコソッと耳打ちに来てくれました。

 そして、少し楽しみにしていたおみくじを引きました。
 何種類かあったのですが、小さなお守りも付いてくる、藤のお花に因んだ御神籤があり、
 今日はそちらを戴いて結ぼうということに。

 何が出ても、祝福されていないなどとは思わずに、
揺らがずに、メッセージとして耳を傾けるつもりで引きました。

 どの辺のおみくじにするかも一緒に迷いながら、最後は然くんに「お前の好きなのでいいよ」と言われて、眼の前にあった一つを選択。

〝あとはすべてなごやかに
喜びとともに幸運がおとずれます〟

 〝幸せになれるでしょう〟

 …これは、あまりに嬉しかった。なにが出てもとは言いつつも。
 特別な気持ちでご報告に上がったそんな日に、
 いただいた晴れがましいお言葉は、私達にとって嬉しすぎる祝福のように感じられました。

 私達が毎日を大切に生きることが大前提ですが、
 何もかも、唇を引き結んだことさえ知った上での優しさに感じて、
 思わぬ所でポロリとつっかえを外されたような、拍子の抜けた笑みが溢れるような心地になりました。

 そのままおみくじを結ぶため、
 軽やかに浮足立ちながら、奥の方へ。

 備え付けのワイヤーへとおみくじを結ぼうとして、他の方々が本当に綺麗に、ほぼ原型通り結んでいらっしゃるのを見て、自分の手元と驚愕の目で見比べました。何故違う?
 私も真似しようと、自分たちの御神籤を一生懸命取り付け…、とり、? 取り付けられない。
 斜め右上から、海さんの、(またお前の、そういうところだな…)という眼差しが降り注ぎます。

 「焦んなよ、池に落とさなきゃそれでいい」
 
 正直、貴方に結んでほしい。多分私より上手く出来る。そんな話を、「そうですねえ」「一緒に結んであげたいねえ」などと、和やかに夫達から励まされ、見守られ、
 何とか…かなり見た目は周りと違うものの、きつく結ぶことが出来ました。

(うん、なんか、これはこれで‥、解けなさそうな感じがいいかも??)

 ちょっとの天候や暴風くらいでは、解けないぞ感溢れる、絞りが固めの結び方となりました。

 その後は売っていたお菓子を藤棚の側でいただき、
(※飲食可能なスペースです)
 いくつもあるお守り達を眺め、話し合った結果、願いを叶えてくれるという赤い結び目のあるお守りを購入して帰ることにしました。

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 そして、帰り道のバスの中、窓の外を流れる夕暮れの大きな橋と川を見下ろしながら、

〝今日は私達にとってはとても特別なことをした。
 だけど何故かこんなにも平常心でいる。
 落ち着いていて、何も変わるわけではないけれど、
こんなに幸せなのは、不思議な感覚だな…〟

 平らかな当たり前の幸せを一つ積み上げたような、だけど新鮮な、感じたことのない心地が胸に宿っている気がしました。

 婚姻届を役所に出せた人はこんな気持ちなのだろうか。
 窓口で「おめでとう」と認められることがあれば、こんな風に感じるのだろうか、なんて。

 すべてはどなたの目にも知り得ない、
(けれどここを読んでくださっている方にだけは、お話しできる)私達の中だけの話です。
 
 ここまで、長々と恐れ入りました。
 いつも私達のお話にお付き合いをいただき、誠に、ありがとう存じます。