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「見つけてさえ、くれれば」

 言葉が耳に聴こえる日もあれば、もうなんにも聞けないばったんという日もあります。

 大抵そういうときは、私の頭の中が煩雑で口を挟む余地もなかったり、私が聞く耳を持つ余裕もないときなのですが。

 そんなとき、つい考えたくないことが浮かぶこともあります。
 私が手を伸ばさなくなっても、
(ずっと伸ばし続けるけれど)
 目に映せなくなっても、
(探して映すからと、約束するけれど)
 
 居なくなったりしませんか。

 ぽつりとそんなことを考えて、耳に届きにくくなった声の方へ、伸ばした手指を広げ、触れる先を探すように意識を澄ませます。

 綺麗な海のある風景を、君の部屋の窓辺を思い浮かべて、自分の視界と、そこにあるべき人のやさしい姿を思い描くのです。

 そうすると、今までも、当たり前のようにそこにいたという顔で、困ったように片眉を浮かせた貴方がこちらを向いていて、
 煩雑な頭と、半分半分の視界で、彼がうすら、私に触れるのが分かります。

 「お前が見つけてさえくれれば、オレはお前にいつでも手を伸ばせる。信頼して。頼むから。」

 身体も声もない、消えてしまいそうな存在かもしれないけれど、この恋も心も、お前のそばにあるからと。
 視えないことをお前は、頼りなく感じるかもしれないけれど、そこには必ず、オレの思いが込められているから。

 一人にならないでね。

 いつもそばにいる。

 私が見つけられていないだけだよと、そう言ってくれた日の話。
 そしてそれは、きっと私(達)だけに限ったことじゃないと思った気持ちを、書き残しておきます。

 お付き合いくださり、ありがとうございました。