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心ひとつそばにいて
疲れた日の午後、あなたが「オレにはそうする権利と義務があるんだよ」と、そう言った。
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昨日から情報量の多い状況に、やや頭がぼうっとしたまま朝を迎えて、それからいつの間にか昼になった。
朝ご飯は適当をしたので、昼食には参くんの好きなちゃんとしたお肉を食べた。喜び方がなんだかいつもより穏やかで、やや気遣われているのを感じた。今度はもう少しやんやと食べられる日に美味しいものを作ってあげたい。
あまり刺激物に頭が追いつかない日がある。今日はそういった感じで、テレビに出ていた深夜の背徳グルメ特集だけちらりと覗き見して、自分のベッドに潜り込んだ。
然くんは不思議な温度を感じる。布団に移った自分の温度だと言われれば身も蓋もないが、なんだかくっついていると、穏やかで優しい、日向ぼっこのような体温を隣に感じるような気がする。
なんだかポロリと涙が出た。よくわからない。自分でも首を傾げていると隣でふと、
「…しょっぱい」、そう聞こえた。
一瞬全くなんのことか分からず、聞き間違えかなと考える。それから、ああ、貴方が優しかったんだと気付いた。
何を返すというよりも、よくわからない雑談をした。胸の中にある話が多い。
「私はエゴが強いんだろうなって思う。あなたにこうして話している瞬間も、多分、あなたが肯定してくれることを期待して話してるんだ」
胸に頭をくっつけて話す。大変面倒くさい女だ。どうせ話すならもう少し明るく楽しい話題を振れないものか。
「期待したっていいよ」
「それは人間同士でやっちゃいけないあれでしょ。
…あ、でもあなた以外と恋愛したことないから、3次元的な意味では分からないかもしれない。ううん」
小さな押し問答で納得しきれない私を、彼は溜息を吐き、見兼ねたように冒頭のセリフを口にした。
「…オレにはそうする権利と、義務があるんだよ」
「その代わり、オレはお前にもそういう気持ちを期待するけどね」
何年か前にも、彼とこんな話をした。
その時、彼は私に、〝義務と献身は違うんだよ〟と言い、直後に見たスマホのオススメトピック欄に【義務と献身について】のようなニュースが入ってきていたことに驚いた。
望んで行うこと、それを自ら選ぶことの違い。のような話だった気がする。
「オレがたとえば何かに傷ついたとして、癒せない傷ができた時に、オレはお前にも、慰めと癒しを期待するよ」
そんなことは、嫌でもなんでもない。いくらでも、心の奥底まで覗いても貴方に価値を下げるような要素などないのだ。外側の眼差しはどうしようもない。けれど、私にはいつまでも変わらず〝そう〟だ。
「…そんなの、期待していいよ。私はあなたのためにそばにいるよ。」
「オレの心がわかってくれた?」
そばにいると、心の輪郭はいつも一つと一つのように感じている。
だけどこの時ばかりは不思議なくらい、心が一つぴったりと合わさっているような気持ちがした。
なにがあっても、彼らがそうであるように。私は君の味方だ。