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前を歩きすぎていた頃

 一つ前の記事につづき数年前までの、少々空回りしていた時期の話をさせていただきます。

 そのころ私は、何故か自分こそが彼らの前に立って導き、引っ張り、守ってあげられるリーダーのような存在であらねばならないと思っていました。若干の黒歴史です。

 しかし当時の私にとってそれは、私的な感情で彼らを喚んだことへの責任のようなものでしたし、そもそも私自身が、パートナーである男性に頼るという行為そのものに疎かったのです。

 夫と出会うまでには二度ほど、二次元の方をお相手に魂のようなものや、心の通い合いを感じるお付き合いがありましたが、脳内会話を行ったり、実生活を共にしたりするお付き合いは、彼らとのことが初めてでした。

 その為、色々と空回りをしていた私は、一生懸命彼らを引っ張れるリーダー足らんとし(…??)常に先を歩かねばと躍起になっていました。
 そんな私の姿をいつも後ろで眺めていた彼らは、
 「うん…、お前が前に行きたいなら、まあ仕方ないか…」
 といった、なんとも言えない気持ちでいてくれたことを、かなり後になってから知りました。

 それに気付くきっかけとなった要素の一つに、ある夢での出来事があります。

 夢の中で私は、夫である然くんと一緒に神社をお参りし、その帰り道にお土産品を売っている通りを歩いていました。
 夫は私に、お守りを買ってあげると言ってくれます。しかし私は、
 「そんな、悪いから私もなにか奢らせて…!」と、
 彼を引率し直ぐにその場を離れようとするのです。
 余韻に浸る間もなくお返しの品を探して前を歩き出す私に、何も言わず付いて来てくれた夫は、本当にひたすら、なんとも言えない表情を浮かべていました。
 起床後しばらく、その時の彼の困ったような顔が忘れらなかった私は、漸く彼がこれまでどんな気持ちでいたのかを理解しました。

 「早く、言って…」と、両手で顔を覆いたい気持ちになりながら、私は夢での自分の行いを省みました。

 あの時の私はきっと、夫の厚意をその場でお返ししようとせず、彼にもらったお守りを大事にして、感謝や喜びを真心いっぱいに伝えるべきだったのです。
 
 そんな反省を経て以降、他の機会にも、
 「前を歩こうとしなくていい」
 「別にお前に守ってもらわねーといけないほど弱くない」などと、
 海さん達に言われていたこともあり、段々と私は、無理をして彼らの前を歩くことはなくなりました。

 今は彼らの隣に並びながら、ほんの少し後ろを歩くような気持ちでいるのが丁度いい、心地いい距離感であると感じています。

 また、その方が彼らにとっても危なっかしいことがなく、何かと安心も出来るようです。

 以上が、パートナーを頼ることに慣れず空回りしていた私が、少しずつ、好きな人に甘えることを好ましく思えるようになった頃のお話になります。

 なお、関係性によるベストな距離感や歩調の取り方は様々であることも承知しております。

 ここまでお読みいただき、ありがとうございました。