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東京芸術劇場シアターオペラvol.17J. 野村萬斎演出『こうもり』※ネタバレあり


開演前に白ワイン


https://www.geigeki.jp/performance/concert272/

野村萬斎さん演出のオペレッタ「こうもり」見てきました。
まだ山形公演が残っており、ネタバレになるので見たくない方はこちらで回れ右でお願いします。
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狂言の萬斎さんの演出は「こうもり」の人をだますことで生まれる滑稽さが狂言と共通しているという視点から始まり、主人公のアイゼンシュタインを質屋で金持ちではあるけど、ちょっと鼻もちならない男として設定していました。
舞台は上手下手奥のそれぞれ3方向に能舞台の橋掛かりが設置されており、
まんなかの広い板間には何枚か重ねられた畳が正方形に置いてありました。
この舞台装置としての畳の使い方がいかにも日本らしい「引きの美学」で素晴らしいのですよ!
計12枚の薄い畳を、各幕の最初に黒子の方々が動かして
1幕:質屋の居間として1枚ずつ4×4の12畳として使用
2幕:オルロフスキー公爵主催の鹿鳴館のパーティという設定で金屏風前のひな壇(真ん中8枚分、左右それぞれ2枚ずつ。スポーツで出てくる表彰台みたいなイメージ)
3幕:人違いされて牢屋に入っているアルフレードの牢の中の牢名主用の重ね畳
にするのです。この動かすときも時も演奏に合わせて黒子さん達が置く姿が見慣れた羽生さんのスケートのようで、心の中で「ほぅ!」と思ってしまいました。萬斎さん、羽生さんのそういうところを参考にしたわけじゃないですよね(笑)?
今まで黒子を使うオペラやミュージカルはいくつか見ましたけど、音楽の一部になっているのは初めてでしたし、セットと言えるものはこの畳がメインで、ちゃぶ台などの小道具と、金屏風、ろうそく立て、牢屋の扉になる柵くらいでしょうか。大がかりな移動式舞台装置はまったくなく、すっきりした舞台なのに、ちゃんと場面が変わったとわかるようになっているあたりさすがです。ここに能舞台で普段狂言をやっていらっしゃる萬斎さんらしさがありますね!

1幕は出演者はほぼ和服。2幕のパーティでは鹿鳴館時代のバッスルスタイルのドレスと燕尾服。ここで面白かったのはコーラスの方々は黒い服で、布にドレスや燕尾服が描かれているものを5人一組で首から下にさげ、それで歌ったり、移動したりするところ!途中はけるときにおひとり躓いてしまわれて、足元見えなくて大変だなと(^^;)。ここのシーンでは笑わせるセリフがあったので、なんとセリフのやり直しもアドリブで(笑)
実は今回看守のフロシュ役の桂米團治さんが、出番までは狂言回し役として講談師としてMCを務めていました。このこうもりは、舞台が始まる前段階(なぜファルケがアイゼンシュタインに復讐したか?)があるので、ちょっとわかりにくいのですよね。なのでその辺の背景を米團治さんが説明するという形式になっていたり、途中歌手だちのやりとりに茶々いれたり、最高だったのが2幕のパーティでは、オルロフスキー公爵(公家の若様設定)に抱きすくめられるシーンも(笑)!
看守になってからはなぜか観客に輪唱をさせるという大活躍ぶり。
これなら初めてこの作品を見る方でも楽しめるという演出になっていました。こういう面白い演出で、また違うオペラも増えると良いなと思います。
私はメトロポリタンオペラでやるような豪華なセットでの上演も好きですが、こうもりは大好きな作品ですし、今回のこの演出は主人公の社会的階級や登場人物の性格などが、日本の設定にしても違和感がなかったので和風の演出でもすごく楽しめました。
今回コンサートホールでの上演で、オーケストラの演奏はとてもクリアで各楽器のそれぞれも際立ちよく聞こえて良かったのですが、いかんせん私の席が2階の下手よりだったせいか、歌とセリフの言葉が籠って聞こえたのが残念でした。劇場の反響がもともと生歌向きではないのかな。ディスク化されるといいなぁ。

お歌は皆さん素晴らしかったですが、特にオルロフスキー公爵の藤木大地さん、そしてアデーレの幸田浩子さんが特に素晴らしかったです。
藤木さんは声量、声の伸びやかさだけでなく、公爵のいたずらっぽさも歌に現れていたし、セリフの言い方、米團治さんとの絡みなど演劇としての完成度も高かったです。
幸田さんはアッキーと共演した「キャンディード」以来の舞台(映像などではなんどか拝見しましたが)でしたが、相変わらずちゃっかりした可愛らしい女性を演じるのがお上手だなと思いました。
アルフレードと看守のやり取りが、通常の演出だと色々お遊びがあって面白いのですが、ここがあまりなかったのが残念かな。どちらかというと看守と警察署長とのやり取りのほうが多かったです。

最近はメトのライブビューイングを見ることで精いっぱいで、なかなか舞台でオペラを見ることが少なくなりましたが、やはり舞台で生歌はいいですね~。今度大好きなJuan Diego Florezが来日するみたいだけど、羽生さんの推し活と並行するのは経済的にも大変なので、今後のスケジュールを見ながら考えたいです。






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