私が日常使いしている‘RuPaul’s Drag Race’ Quote集①

コメディ、ファッション、人間ドラマ、ミュージカル、リップシンク、ミームといった、面白いTVショーを作るのに不可欠なすべての要素を盛り込んだこの素晴らしいリアリティ・TVショー『ル・ポールのドラァグ・レース(以下”ドラァグ・レース”とします)』はいまやエミー賞の常連、そして(一部の)国民的人気番組となりました。もはや名前を耳にしたことがない人の方が珍しいのではないのでしょうか(誇張しすぎ)。

ドラァグ・レースが世の中にもたらした意義や、その番組の面白さについては日本でもいろんなとこで書かれているので、私がいまさら語るのもおこがましいというか、その素晴らしい文章を読んでくださいという感じです。しかし、どうしても日本には伝わりにくい、けどその人気を理解するうえで重要な、ドラァグ・レース内でのクイーンたちのアイコニックな発言に今回は焦点を当てて紹介していきたいなと思い、この記事を書きます!やっとドラァグ・レースについて書ける!

実際、クイーンたちの印象的な発言がツイッターでミームとして拡散されて番組の人気を後押ししている側面も非常に強いのですが、そこら辺よくわからない、方もいるのではないかと思います。そこで、この私が、日常使いしている(狂気)発言を紹介し、その面白さを僭越ながら解説していきたい、そんな内容のnoteになっております。

ドラァグ・レース内のアイコニックな発言は本当に挙げたらキリがない、というか。すべてのモーメントを心に刻み付けたいという感じなのですが、いま私が紹介したいと思うものを5個選びました。(ごめんなさい、10個書こうと思ったんですけど、熱弁しすぎて文章が長くなってしまったのでやめました、、、)ドラァグ・レースを見たことがあるあなたも、そうでないあなたも、是非皆さん日常使いしてみてください。

①Tatiana(タチアナ):「Choices(選択肢)」

「まるで本物の女性みたい」という意味でドラァグ界隈で使われる"Fishy"なクイーンの代表格として知られる、シーズン2のTatiana(逮捕された際のマグショットすら美しかったという伝説も)。シーズン2では皮肉交じりに言う"Thank you"が、Tatianaの持ちフレーズとなっていました。

日本人でも理解できる簡単なワードなのですが、言い方や文脈次第で面白くなるという英語ならではの効果(?)を巧みに用いるのがこのTatiana。

その6年後にオールスターズのシーズン2にカムバックした際に披露したのが"Choices"でした。誰でも意味はわかる簡単な英単語ですが、日本語で一言で表すとしたら難しいこのフレーズ。このシーズンはNetflixで配信されてないので翻訳案がないのですが、あえて一言で言うなら「選択肢」かなぁ。実際には「何かを決定しなければいけない重要な場面で、数多くの選択肢がありながら、”あえて”それを選ぶ」というニュアンスがこの一言に凝縮されていて、適したタイミングで用いることでその面白さを効果的に発揮しているんですね。例えば、誰かほかのクイーンの”チョイス”を揶揄する意味で"Choices"とも言えるし、自分主語で「私には選択する権利があるのだから、もちろんあのクイーンはパートナーには選びませんよね」という悪口の意味で"Choices"とも言えるわけです。

ちなみに、最新シーズンの大統領選の討論会を模したエピソードでは、その舞台に"Choices 2020"と名付けています。これも、「私たちにはいろんな候補を大統領を選ぶ権利があるわけだけど、間違った選択をすることはないね?」っていう含みがあって面白い言葉選びですよね。(日本語字幕では「チョイス2020」になってました)

【私はこんなときに日常使いしています】
あなたの親友ってほどでもない、適当な関係の友人が職場の不満や悪口を自分のことは顧みずにひたすら話していたとします。確かにそれはそうなのかもしれないのですが、結局その仕事を選んだのも職場を選んだのもその人の意志・選択です。精神を病むほどの辛さを味わっているのなら話は別ですが、辞めるという選択肢もあるわけです。何も行動を起こさず、ただ愚痴や悪口を述べているだけの友人がいて、そんな不平不満をもうこれ以上聞きたくないわって時にはこう言いましょう。「Choices⤴」

②Aja(アジャ):「You're perfect, you're beautiful, you look like Linda Evangelista. You're a model. Everything about you is perfect! Did you stone those tights? Oh, you're smiling! They eat her up EVERY SINGLE TIME. She's on that damned stage. She ftsdbsds. She could walk out there in a fucking diaper and they'll be like: "Valentina! Your smile is beautiful!".(あなたって完璧で美しい、Linda Evangelistaのようなモデルみたい。あなたは何もかも完璧!あなたがそのタイツにラインストーンをつけたの?あら、笑ってるのね!ジャッジはValentinaを毎回例外なくベタ褒め。ただステージに突っ立てるだけで。ashdabefaf。オムツを穿いて登場したってこう言われるでしょうね。『Valentina!あなたの笑顔って素敵!』って)」

ドラァグ・レースのファンの間ではあまりに有名なシーンですが、まずは動画を見てみましょう。

ただでさえ唐突で面白いのに、謎にエイジアンテイストなバックグラウンドミュージック、話を聞くクイーンたちの豊かな表情、Ajaのガチさも手伝って、アイコニックなモーメントに仕上がっているのがわかるかと思います。このシーズン9で、Ajaは特にメイクに関して厳しい評価を受けがちで、一方のValentina(ヴァレンティーナ)はとにかく美しい、キレイと言われて割と高評価を受けていたためにこのような嫉妬と怒りの発言が生まれました。が、その前知識がなくても状況は把握できるかと思います(笑)。

ドラァグ・レースでは、"Untucked"というジャッジからの評価後にクイーンがバックステージで待機するシーンを収めた映像が毎エピソード本編の後に放送されます。そこではクイーンたちがアルコールを摂取したり、ジャッジからのコメントにフラストレーションを溜め込んだり、疲労もあったりで自制心がなくなり、言い争いが起こりがちでして、一般的に語られる有名なクイーン同士の喧嘩みたいなシーンはこの"Untucked"から生まれることが多いのです。

さて、それにしてもこの発言は一言一言があまりにも完璧すぎて、台本有りなのではないかと疑われるシーンなのですが、演技チャレンジで大失敗しているAjaが逆にここまで完璧に演技できるの、、、?という問題が発生するため、このシーンはナチュラルに奇蹟的に生まれたものということに私の中では落ち着いています。言っている言葉はすべてValentinaを褒めているのに、侮辱になっている。その趣深さが、ドラァグ・レースに残る最も印象的な発言(シーン)の一つとしていまも語り継がれている理由なのではないかと思います。

【私はこんなときに日常使いしています】
男女関わらず、自分の見た目にとても誇りを持っている人に出会ったら、出し抜けにこう言ってドン引きさせましょう。「You're perfect, you're beautiful, you look like Linda Evangelista. You're a model. Everything about you is perfect! Did you stone those tights? Oh, you're smiling! They eat her up EVERY SINGLE TIME. She's on that damned stage. She ftsdbsds. She could walk out there in a fucking diaper and they'll be like: "〇〇〇! Your smile is beautiful!".」

③Jujubee(ジュジュビー):「Tyra has talent. Tyra is unique, I-i can see that. Nerve? She had the nerve to wear those ugly ass shoes, I give that to her. Charisma? I don't see any. She's just U.N.T.(Tyraは才能(T)がある。それにユニーク(U)。それはわかる。度胸?Tyraにはあれだけのクソダサい靴を履くだけの度胸があるんだから、Nの称号を与えましょう。カリスマ?何も感じられない。Tyraはただの"U.N.T."よ)

Tatianaも出演したシーズン2のJujubeeも、面白い名言の数々で知られるクイーンの一人です。その中でもこのシーズンの優勝者Tyra Sanchezに対する絶妙なShadeは個人的なお気に入りです。

ネクスト・ドラァグ・スーパースターに必要な要素としてRuPaulもよく挙げるのが"CUNT"という単語。これは文字通りの意味だと非常に汚い失礼な単語なのはご存じの方も多いと思いますが、ここでは勿論違う意味で使われています。"CUNT"は"charisma, uniqueness, nerve and talent"の略。”カリスマ、独自性、大胆さ、才能”のすべてを兼ね備えてこそのスーパースターなのですね。

ここでJujubeeは、なぜTyra Sanchezがネクスト・ドラァグ・スーパースターにふさわしい存在ではないか持論を展開するわけですが、「カリスマが足りない」とだけ言えばいいところを、あえて「Tyraは”CUNTではなく、UNT"」とドヤ顔で言うところにまず一つ面白さがあります。

でも肝は、「彼女は大胆」って褒め称えているところで、その理由として「いつもクソダサい靴を履くだけの大胆さがあるから」と悪口を言っているところで、Tyraはランウェイの衣装については毎回高評価だっただけに、細部の"靴”までちゃんと見て批判しているJujubeeの鋭い指摘に笑えてしまうわけで、だから最後のUNTの下りで締まるのです。伏線を散りばめながらユーモアを交え、賢く人の悪口を言うJujubeeの凄さを体現する見事なフレーズです。

【私はこんなときに日常使いしています】
"Ed Sheeran has talent. Ed is unique, I-i can see that. Nerve? She had the nerve to wear those ugly ass shirts, I give that to her. Charisma? I don't see any. She's just U.N.T."

④Kennedy Davenport(ケネディ・ダベンポート):「Milk(ミルク)」

Kennedy Davenportはシーズン7のクイーンで惜しくもファイナリスト入りを逃して4位に終わった人。トップ3入りした2人の若い白人クイーンに対して番組内で色々ケチをつけてたこともあって、若くない上に黒人のKennedyに対する風当たりは当時相当強かったそうです(まだリアルタイムで見てない時期なのでそんなに詳しくないですが)。

この発言は、数年後にオールスターズのシーズン3にカムバックした際の名言(?)。ミルクは文字通りの牛乳のことではなく、シーズン6に出演し、オールスターに一緒に出演していたドラァグ・クイーンのMilkのこと。

すでに出演経験のあるクイーンたちが一堂に会し、再び頂点を目指すこのオールスターズでは1エピソードごとに、勝者のクイーンが下位2名もしくは3名に入ったクイーンたちの中から誰を脱落させるか選ぶというルールが採用されています。

通常のエピソードでは、勝者のクイーンを発表した後、ル・ポールが溜めに溜めまくって「あなたは強大なパワーと責任を手にしました。あなたが振り落とすのはどのクイーンですか?」ってことを聞いて、そのあとはお約束で勝者のクイーンが嘘泣きしながら「あなたは本当に素晴らしいし、いつまでも友人よ・・・」みたいなことをドラマチックに話しながら脱落させるクイーンを発表します。

しかし、この時勝利したKennedyは容赦がありませんでした。ただ、ル・ポールが「その強大なパワーを持って...」と最初の部分を言っただけで全て言い終わるのを待たず、こう冷淡に言い放ちます。「ミウク」。

Milkも素の姿が白人の若いイケメンで、下手したらまたKennedyが叩かれそうな危うさもあるのですが、今回はドラァグレース側の編集も配慮してMilkがかなり自信過剰で思い込みが激しいような感じに映していたので、Kennedyのフラストレーションに視聴者も共感し、面白いモーメントの一つとして知られるようになりました。

【私はこんなときに日常使いしています】
「あなたの嫌いな飲み...」「(思いっきり遮って)Milk」
「健康的だと過大評価...」「(冷淡な表情で)Milk」

⑤Willam(ウィラム):「Your tone seems very pointed right now(あなたの口調、今とても辛辣な感じですね)」

(7:02~ Phi Phi O'HaraのWillamへの痛烈な批判が始まり、このフレーズが登場するのは8:27~あたり)

最後はドラァグ・レースが徐々に人気を拡大していく布石となったシーズン4から。TV出演やRihannaのミュージックビデオの出演経験があるWillamは、後にも前も例がない「失格」という形でコンペティションを去ったことで、ある意味一番有名なクイーンとなりました。さて、この発言も日常使いするのに丁度いい一言。

ドラァグ・レースの歴史に残る一番の悪役として知られるPhi Phi O'haraから「あんたは才能がない!!ブランド物の靴を履くのは才能じゃない!!金!!」みたいなことを捲し立てられるのですが、「あら、その言い方は失礼なんじゃない?」みたいな澄ました態度でいるWillamに対して、さらにPhi Phiが怒りを募らせていきます。こうしてヒートアップしたPhi Phiに「あなたはこのレースにいるべきじゃない!!」とWillamは言われるのですが、何も気に留めてない風にWillamは「あなたの口調、すんごい辛らつだけど」と他人事かのように言い放ちます。怒り心頭のPhi Phiとは対照的に、顔色一つ変えないWillamの冷静さが面白さに拍車をかけているアイコニックな一言です。

【私はこんなときに日常使いしています】
いつでも。あなたが誰かに攻撃されてるとき、批判されてるとき、求めてない説教を受けてるとき、気持ちを落ち着けながら言ってみてください。相手はさらに怒るでしょう。

以上です。どれもこれも日常使いできる便利な表現ばかりでしたね!本当はもっと紹介したい、日常使いできるドラァグレース発言はまだまだあるのですが、文章が長くなりすぎてしまったので今回はこの辺にします!きっと、また気が向いたら紹介します!ドラァグ・レースの新たな楽しみ方を知ってもらえたら幸いです!それでは!(第2弾をやるとは言ってない)

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