春に寄せて(ラッキーと真実)

 幸運な春を待っていた。『春のラッキー』を終えて、あの場に立てた事実が、自分にとって1番大きな収穫だったと思う。たくさんの人たちが自分のパフォーマンスを見に来てくれて、アクションを起こして言葉をかけてくれた事がとにかく心強くて嬉しく思う。

 今回のイベントの話を貰い、いざなにをしようか?と考えた時に、自分の中で「これは行けるかも!」と思う案が本当に見出せなかった。ライブをするにあたり考え始めた文章も、どれもピンとこない。そんな中で告知された今回のイベント名、『春のラッキー』。これで一気に視界が開けた気がした。

 当日、会場入りすると、ちょうど黒岡まさひろocean wingのリハが行われていた。自分がギャラリーに足を踏み入れるまで、その姿が目に飛び込んでくるまでの間。ギターやスティールパン、フルートの外に漏れる音を少し聴き、深呼吸をしてからギャラリーに顔を覗かせた。おそらく3年ぶりくらいに聴く、楽器の生音と黒岡さんたちの歌い声が直線的に脳に響き、身体がゾクゾクと震えるような感覚があった。久しぶり。めちゃくちゃ最高だと思った。

 挨拶を済ませつつ、さかゆめ、人形劇団ポンコレラのリハが進んだ。全てが済み、最後に自身のリハを行った。なにをし始めるかもわからない自分のパフォーマンス。全く初見の黒岡さんは、おそらくイベント自体が共有できるように、そして自分のパフォーマンスが良いものになるように、とにかく声をかけ続けてくれた。久しぶりにこういう人に出会えて嬉しく思う。多分、人前に出ていくのも久しぶりで、凄く緊張していた自分をわかってくれていた気もする。背筋が伸びた。余談だけども、ここ数年、定期的にラジオ体操をしている。この日は緊張も相まって、出番前には2回もラジオ体操をしてしまった。呼吸を整えて出番に向かう。

 松村拓海さんとシャラポア野口さんの開会宣言から幕を開けた今回のイベント。初見(後から聞いたが、彼ら自身にとっても初めての組み合わせだったらしい)にも関わらず、とてつもない安心感にうっとり。あの開会宣言で一気に会場の雰囲気が決まった気がして、自分もやってみよう!という気持ちになった。自分のライブが始まると、話は淡々と進んだわけだが、終わってみると友人からは「なんでか○○」とか「たぶんなんか○○」とかそういう感想を多く貰った気がする。今の自分自身、だいぶぼんやりとしている事実が伝わっていたようで、個人的にはホッとした。本当はキチッと言語化ができて、パフォーマンスから何かがクッキリ見出せるためのアプローチが出来たらいいのかもしれないが、どうも言い切れない、わかりきっていない事が多すぎると思う。この冬で、尚更ぼんやり感が増したと思う。ぼんやりしてんだよな〜。それでもこの数年は紛れもない事実で、実際に冬を越えて今日の春になったんだよね。

 人たちは平等に同じ時間を過ごしている。その中で意識的にも無意識的にも近づいたり、離れたりを繰り返して生活をしているそうだ。今回、『春のラッキー』の裏テーマには『還元』を掲げてパフォーマンスを練った。その生活の中で遭遇する様々なラッキーを、あの空間を通して共有ができて、あの瞬間に喜びあうことができたとしたら、少しは何かを還元することができたかなと思っています。2019年、特大ラッキーの延長線上に2023年の自分は居て、この春のラッキーの上に間違いなくみんなも居ます。

ムカイヤチリョーヘイ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?