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グリホサートの政治・経済と健康

除草剤のグリホサートの売り上げが順調に延びてる様です。近年、収穫前の大豆・小麦・米に散布して作物を枯らし、乾燥を促進、美麗いに収穫するという使い方が推奨されていて売上に貢献してるらしい。後、ハイブリッド種子業者と組んで、ハイブリッド種子の耕作プロトコールに組み込んでしまうと、農耕者の好き嫌いにかかわらずグリホサートを使わないといけないという制限も有るみたいです。勿論、グリホサート製造会社のモンサント(今はバイエル)はハイブリッド種子も売ってます。

バイエルは、「政府の決めた基準を守っていれば安全性に問題は無い」って主張してます。つまり、グリホサートで安全性に問題が起きれば、役所の責任という論理です。一方、農水省や厚労省は基本的に中立の様です。勿論、彼等は国民の健康を気にしてますが、同時に食料安全保障や食料品の価格、農作の効率化や化学企業の経営等も考慮する必要が有ります。という訳で、どの程度の健康リスクなら受け入れるかを政治してる。一つ、除草剤に関して重要な点は、草毟りは農民にとって過酷な重労働で除草剤は非常に重宝されてるって点です。だから、簡単に規制を強化することは出来無い。真に政治の世界です。

グリホサートの健康に対する作用で問題になってるのは発癌性と神経毒性です。アメリカ食品薬品局(FDA)が薬品が安全性情報に関して、或る事象に対し疑義物質が陽性と判断するのは、

1.  疑義物質の作用機序もしくは交差反応から、事象が起きる可能性が示されている

2. 実験系で事象もしくはそのサロゲート事象が発現する

3.  市販後の使用経験で疑義事象の頻度が、対照群に比較して有意に高い

此処で言う「有意」は医学的に意味が有るという意味で、統計的に有意(95%信頼域)という意味では無い。

グリホサートの作用機序は、製造業者によると5-エノールピルビルシキメート-3-リン酸(EPSP)合成酵素の抑制ですが、此の作用機序と発癌性や神経毒性とは別経路の様です。それで、グリホサートの構造を見ると、

AMPAは、以下参照

グリホサートの分子構造は、アミノ酸のグリシンのアミド基の水素(H)がリン酸に置き換わっただけで、グリシンと非常に良く似た構造をしてます。若し、細胞が蛋白合成の際に、グリシンと間違えてグリホサートを組み込んでしまうと、異常な蛋白が出来てしまいます。基本的に転写因子も含め遺伝子産物は蛋白ですので、細胞を癌化させる様な転写因子が出来ても不思議は無い。

神経作用に関しては、グリホサートの代謝産物はα-アミノ-3-ヒドロキシ-5-メチル-4-イソキサゾールプロピオン酸(AMPA)という物質で、強力なグルタミン酸受容体の作動薬です。因みに、哺乳動物の脳内の興奮性神経信号はグルタミン酸によって伝達されます。又、昆虫ではグルタミン酸が主な神経伝達物質です。

2.に関しては、世界保健機構のIARCが声明を出してます。

IARC Monograph on Glyphosate
A Working Group of 17 experts from 11 countries met at the International Agency for Research on Cancer (IARC) on 3-10 March 2015 to review the available published scientific evidence and evaluate the carcinogenicity of five organophosphate insecticides and herbicides: diazinon, glyphosate, malathion, parathion, and tetrachlorvinphos.

 International Agency for Research on Cancer

という訳で、FDAの安全性基準の1, 2は満してる様ですが、実地で発癌や神経障害が起きてるのでしょうか?此処が、現在の技術の手の届かない処で、抑々、グリホサートによる発癌が問題になった一つの切っ掛けは、アメリカで若年者の大腸癌が増加してるので其の犯人探しからです**。此の件に関して、アメリカの医学界は大腸癌の増加は肥満の所為ではないかとコメントしてます。何れにせよ、刺激の多い現代社会で、癌のように頻度の低い疾患の発現率と特定の化学物質、それも食品を介して大多数の人達が暴露されてるグリホサートのような物質との因果関係を「科学的」**に検討するのは不可能です。又、アメリカでも痴呆が増加してますが、高齢化や神経作動薬使用の増加と並行して起きてますので関連性の検討は実質不可能です。つまり、今の技術では、行政が証拠として評価可能なデータを提出するのは不可能です。

**Colorectal cancer is rising among Gen X, Y & Z. Here are 5 ways to protect yourself

NPR

**「科学的」というのは、バイエル社員や役人とそのお友達の頭の良い人達が納得する位の強い所見を数字で示すってことです。

では、癌に罹りたく無いヒトは如何すれば良いかと考えると、自分だけ助かる方法を考える、つまり、如何すればグリホサート塗れの大豆・小麦や米を食べずに生活出来るか?です。一番問題になりそうなのは、収穫前投与でしょうから、遺伝子改変農産物を避けるだけでは不十分です**。となると、有機栽培か特別栽培作物を手に入れる位しか方法は無さそうです。因みに、松江の農家では自家消費用のお米は分て耕作してる見たいです。多分、直接暴露されてるヒトが其の害を一番感じてるのでしょう。

**遺伝子改変農産物はグリホサート耐性遺伝子を導入して、大量にグリホサートを使える苗です。

バイエルの社員は有機栽培食品食べてるのでしょうか?多分、思考の回路付けで忘れてるんだと思います。「グリホサート安全性」と聞いた途端、自分の食べてる食品の事は忘れて、「ボーナスの査定」とか「上司との評価面談」とかが頭の中を駆け巡ってるのでしょう。

も一つ気になるのが、昨今、森や草藪の中の虫が減った様に思いますが、此がグリホサートの使用と関連してる可能性です。ミツバチの大量死も話題になってます。此方も、若し因果関係が有ったとしても「科学的」に証明するのは不可能でしょう。

多分、今の政治体制では此の様なリスクは不可避です。健康や知性を保つ為に、知恵を磨く努力を怠ら無いのが市民の務めです。政治体制の改革は頭の良い人達が考えてるでしょう。

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