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がんばれ兄ちゃん


結婚式を控えており、
音楽好きで結婚を決めた夫婦なので
最近は使用するBGMのために
ひたすら大事にしてきた音楽を聞き返す作業をしている

ハンバートハンバートさんが歌う
がんばれ兄ちゃんという曲をご存知でしょうか

この曲を大切に思う理由なんかをこれから書く中で、きっと重すぎて結婚式ではかけることはできないのですが
私の中で大きな存在となっているこの曲の話を聞いてほしい
聴くたびに涙が溢れる。電車で聴くと危ういのだが何度でも聴きたくなる

私は4人兄弟の上から3番目
姉兄私妹といった具合の中間子だ。

姉と妹は既に素敵な旦那さんと結婚し名字がかわっている。私も昨年結婚した。
兄は4年ほど前に亡くなった。
自死だった。

自死だと分かったのは2年ほど前で
2年間は失踪として生きているのか死んでいるのか分からない期間があった。

兄が失踪をしてちょうど2年が経過した頃に関西に住む両親の元へ神奈川県の警察から兄の遺骨が見つかったので引き取りに来て欲しいと電話があった。
失踪した際に携帯の電波が最後に手掛かりとして発信されたエリアだった。両親はどれほど悔しかっただろうか。

見つかったのは住宅エリアのすぐそばにある雑木林の中だった。
前日台風の影響で倒木があり様子を確認しに行った近隣住民が見つけてくれたそうだ。
逆の立場なら気味が悪いとひどい言葉を吐いてしまいそうな所を「はやく家族の元に返してあげてほしい」と警察にいち早く連絡をしてくださったそうだ。
警察も非常に細かい報告書等作成をしてくださって、丁寧に発見時の様子を説明して下さった。最期の時を人間として扱って下さったことに感謝してもしきれない。
いろんな大人が私たち家族のかわりに動いてくれたおかげで思いっきり泣けた。

兄は本当に不器用な人で
学生時代はいじめにもあっていたそうだし
物を壊してしまったり、時間に遅れてしまうことが多くあった。

ただ人一倍正義感が強く、人からの悪意を正面から受け止めてしまっていたのだろう。
できない自分にも腹が立って仕方なかったのだろう。

顔は正直イケメンな方ではなかったし、おしゃれはカケラも興味はなかったし、農業という仕事を選んでからは真っ黒になった肌と伸ばしっぱなしの天パがすこし角刈りっぽくなってるのをよく笑っていた。

そんな兄のことが大好きだったのだ

贔屓目で見ても出会った人の中で誰よりも優しかった。
女系一家で従兄弟家族を入れても唯一の男子だった。待望でとても可愛がられてはいたが、少し肩身が狭いだろうなと思っていて、小さい頃から早く自分が結婚して兄と義弟と良い関係を築いてくれることを夢見ていた。(結婚は3姉妹で一番最後になったけど)

兄が失踪して、寮に帰ってこなくなって数日して会社の方が家を訪ねてきたそうだ。
兄が失踪した前日に先輩社員から実現不可能な宿題を出されて、達成できないことが辛く怖くなり逃げ出したそうだ。

最後に会ったのはその年のお正月。
仕事が辛いと溢していたのだが私はまだ学生だった為にその重圧であったり責任を本当の意味で理解できていなかったのだ。
無神経にがんばれという言葉をかけてバイバイをした。
これが最後になるなんて少しも思っていなかったから正直どんな話をしたかあまり覚えていないし、年々記憶が薄れていってしまうことが悲しくてたまらない。

さて、長い長い前置きだったが
この曲にでてくる「お兄ちゃん」は
食べるのも遅いし、すぐ泣くし、走るの遅いし、力も弱いし、痛がりだし、
でもそんな欠点を欠点だとも思わないで、ただ愛おしくて
そんな欠点があるからこそ虫に詳しい長所が光り輝いて

私の「兄ちゃん」は別に虫に詳しいわけではなく、やたらアニメに詳しかったのだが、そんなオタクなところもひっくるめて素敵な人だったのだ。妹に素敵なアニメをたくさん薦めてくれた。
兄弟に日常的に愛を伝えるのはなかなかハードルが高いことではあるが、思っていたのに伝わってなかったことが悔しくて仕方ない。

でも、それでも、私は不器用で正義感の強い兄のようになりたいと思う。兄の年齢を超えてしまった今も生きていく。
何年経っても悲しくて堪らないけど、兄の選択をカッコいいと思わないと立ち上がれなかった。
自死を肯定しているわけではない。
生きて、何も考えずに帰ってきて欲しかった。
辛い時に帰りたと思う家にできなかった私たち残された家族が背負うべき罪だ。

兄誰がなんと言おうと私のお兄ちゃんは格好良かったのだ
もう伝えることはできないけれどお兄ちゃんのことがだいすきだったのだ
そんな気持ちを大肯定してくれた曲だった。

初めてここまで素直な気持ちを吐き出せたと思う。
勝手にすっきりした。

時々生きることを辞めなければいけなかった兄のことを思うと、守ることができなかった私が幸せになっても良いのか自問自答をする。

兄が私を好きだったのかはわからない。
もらった物、言葉、態度を心に留めて
時に思い出を美化して年を重ねていきたい。
いつか私が天寿を全うしたなら、
お兄ちゃん格好良かったよ。大好きだよって今度こそ全力で伝えたいと思う。


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