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海外転勤したら日本の金融機関に口座を閉じさせられて大損食らった|リスク分散の上級編

資産運用はリスクの分散が重要。今日は2年前に大損こいた話をしたいと思います。noteの最初の投稿記事でリスクに注意と言ってた私もリスクでやられるんですよ。

(本記事は2020年1月23日に作成しました。現在は記述が古くなっている可能性があるので注意してください)

2年前に何が起きたかというと、私はとある国に長期の海外転勤が決まったんですね。日本の法律では一年以上の予定で転勤した場合には日本の非居住者になります[1]。一見当たり前でなんてことないルールです。けど、問題が発生した。非居住者に対して、日本の金融機関は口座の取引を何らかの形で制限していることが多いのです。ときには口座の閉鎖もあります。オンライン金融機関は制限が厳しい傾向にあります[2,3,4]。

「じゃあメガバンクにお金を移せばいいじゃない何が問題なんだ」と素朴に思ったあなた、おそらく株式を含むリスク資産を保有したことがありませんね?日本の金融機関とは証券会社も含みます。短期トレードを除いて、株式はいたずらに売ったり買ったりすることを普通はしません。これはなぜかというと、株を買ってその株価が上昇した場合、すぐに税金がかかることはなく、売却したタイミングで課税されるからです。だから課税を防ぐために人は無駄な売却をあまりしません。他の金融商品も課税の基本は同じです。

しかし、株式は売却せずに金融機関をまたいで移管できるのでまだ大丈夫です。私の資産で問題になったものはFXでした。これは2008年にリーマンショックが起きた後、1ドル80円の時に作っておいたUSD/JPYのロングポジションです。実に10年もの間じっくり寝かせておいた私の宝物です。

FXは株と違って移管できません。そして海外赴任して日本の非居住者になった場合、金融機関ごとに対応はまちまちです。最悪のシナリオは口座の閉鎖を命じられることです。そうすると持っているポジションを手放さなければならず、売却益に課税されてしまいます。おそるおそる証券会社のサポートデスクに聞いてみました。

売り買いはしない、塩漬けにするだけだから口座をキープさせてもらえないだろうか?私は電話口でお願いしました。でもダメでした。現物株式なら売り買いを禁じる休眠口座にすることができるけど、資産価値の変動次第では強制決済がありうるFX口座は閉じてくれ、と。なんてこった!

金融機関の対応もある程度理解はできます。日本国民は必ずしも日本に税金を納めるわけではないんです[5]。日本を含む多くの国では属地主義という課税方式を採用していて、「税金は居住している国に対して納めなさい」としています。そうすると、たとえば日本国の非居住者が日本国内の金融機関で利益を上げるとしましょう。日本は多くの国と租税条約[6]を結んでいるので、金融機関はお客さんの二重課税を防ぐためにいろいろな手配が必要になります。海外の徴税機関の問い合わせにも対応しないといけないでしょう。結構大変なんですよ。自分が金融機関の経営者だったら「海外居住なんて少数派だから、わざわざ対応するのも面倒くせえな。うちはローコストが売りなんだから」と判断するかもしれません。

変化の速い世の中についていくための法整備は本当に大変で、いまここに書いてある内容もすぐに陳腐化するでしょう。2008年の法律はやっぱりいまと違いました。そしてなにより自分自身の変化が非常に速い。リスクは常に想定外の方向から来ます。2018年に海外転勤で海を渡るという人生は頭の中にはありませんでした。

誰しもが国家の上で生きる以上、その国におけるリーガルリスクは常に背負います。このリスクはほとんど回避不能です。私は粛々と税金を納めました。ボーナス2回分くらいでしたね

私の株式は難を逃れました。2006年に興味本位でアメリカのオンライン証券会社に口座を開いていたのです。当時は「せっかく口座作ったけど特に意味ないな」と思いつつも、惰性で株式を買い続けていました。アメリカからみると、私が日本を離れたところでアメリカの非居住者であることに変わりはないので、口座を閉じる必要はありません。もちろん狙ってやったわけではなく、知らずしらずのうちに国家をまたいでリーガルリスクを分散させていました。ただのまぐれ当たりです。

ひょっとしたら今後、非居住者にも開かれた形で口座が維持できる日が来るかも知れません。法律は常にアップデートしていきますから。

参考文献

[1] 国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2517.htm
[2] 楽天証券 https://www.rakuten-sec.co.jp/web/support/non-resident/
[3] SBI証券 https://www.sbisec.co.jp/ETGate/WPLETmgR001Control?OutSide=on&getFlg=on&burl=search_home&cat1=home&cat2=service&dir=service&file=home_non_resident.html
[4] マネックス証券 https://info.monex.co.jp/policy/request.html
[5] 国税庁 税大講本 所得税法 第二章第一節 納税義務者及び課税所得の範囲https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kohon/syotoku/pdf/02.pdf#page=1
[6] 国際税務研究会 https://www.kokusaizeimu.com/mameyougo/3.html

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