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バンドエイドと在り方のこと #012

包丁で指を切った時、
転んですり傷ができた時、
私は、バンドエイドを使います。

キズリバテープではなく、
ケアリーブでもなく、
バンドエイド。

なぜかというと、
すごく好きだから。
BAND-AIDのロゴも
触った感触も形状も。

そして、
紙をめくって、シールをはがして
バンドエイドを取り出す時、
いまでも大学生の頃の
版画の制作室で、ひときわ美しく
かっこよかった女性を思い出します。

バンドエイドをモチーフにしたエッチングで
世に出られた(ご本人談)
版画家の山本容子さんのことです。

たくさんのバンドエイドが描かれた
エッチング作品は、
新鮮で新しく、アイコニックで、
それを見た私は、
なるほどなー
と思った記憶があります。

私は当時、京都市立芸大の
彫刻科に在籍していましたが
版画や写真などの基礎講座も
選択することができました。

版画の最初の授業の日
度肝を抜かれたのが、
講師だった山本容子さんの
服装と美しさ。

生徒はたいていが、
絵の具まみれのジャージとか
鉄粉まみれのツナギ(私)です。
制作する時は、必ず汚れてしまうから、
学内にいるときは、ほぼそんな服装。

しかし、山本容子さんは
ヒョウ柄のひざ丈のタイトスカートに
胸もとのあいた白いブラウス姿で
制作室に現れました。
髪はきちんと巻かれていて
足元はパンプス。
エプロンもしていません。

制作室の作業台やプレス機には
インクがいっぱいついているし
バットには腐食液も入ってる。
床も紙切れとかが落ちてるし、
そんな洋服のチョイスは
私には考えられなかったのです。

この美しいひとは、
なにを最優先にしているのか
なにを大切にしているのか
みたいなことを思いながら 
失礼なくらい凝視していたように思います。

環境も、他人の目にも、
左右されることなく
「私は、どんなときも、
私の好きな服を着る、それが何か?」
という強い意志のようなものに
強くあこがれました。

山本容子さんの
バンドエイドの作品が載っている画集を
持っていましたが(確かPRINTS)
今は手元にありません。


100年ほど前のアメリカ。
バンドエイドは、
台所でいつも傷が絶えない妻のために
夫に頼らなくても
ひとりでも傷口を手あて
できるようにと、
つくられたそうです。

だれかに頼ることなく、
なにかに依存することなく、
まわりに合わせることなく
自分自身を生きている?
どんなふうに在りたいの?

バンドエイドの紙を破ると、
ときどき、
傷口以外にも、
いろんな場所が、ちくちくします。



https://www.kcua.ac.jp/profile/interview/arts/art_16_yamamoto_1/
インタビューの最後の方に、バンドエイドの作品のことに少し触れておられます。

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