5月のいじめ

中学2年の時に一番端っこのクラスに転校してきた女の子がいた。その子はいじめられて、「いじめられてるらしいよ」っていう噂が入ってきたけど、いじめの当事者をかねてより俺はバカすぎて関わりたくないと思っていたし、その旨を周りに言っていたおかげであまり関わらずに済んでいた。
中学3年生の春に、その転校生とクラスが同じになって、席が近くなった。
俺は、バカのことをバカにしていたので、バカとは真逆のことをやろうと思ってなるべくフランクに適度にその転校生と話した。
あまり話さないクラスメイトに対するのと同じような分量で話しかけた。
そのうちその子は学校に来なくなった。同じクラスのバカがいじめたらしい。
担任はクラス全員に文を書かせた。いじめた人は自分から名乗り出てほしいしそれをみんなで裁く時間は使いたくないみたいなこと言ってた気がする。なるほど、この先生は信頼していいのかもしれん、と思って、俺は思っていることを書いた。
俺は普通に話していたが、それを本人が「小川にいじめられた」と解釈しているなら謝りたいと思う。俺は自分のどの行為がいじめに該当するのかわからない、云々。
部活をしていると担任が武道館に来た。

「ちょっと聞きたいことあるんだけど」
「はい」
「出してもらった文章についてなんだけど」
「はい」
「何人か名乗り出てくれて、これから○○さんの家に謝りに行こうと思うんだけど、どうだろう」
「というと」
「君は自分のやったことがいじめかどうかわからないって言ってたじゃん、だから先生にもわかんないんだよね、謝りに行くべきかどうかもわからない」
「じゃあ行きます」

と、その子の家に謝りに行くことになった。いじめてたバカが誰なのかは全く覚えてない。もしかしたら本当にいじめてたやつは名乗り出なかったのかもしれない。わからない。別にいい。
とにかく俺はその日、部活を切り上げて、その子の家に行って、その子のお母さんに滅茶苦茶に罵倒された。先生も俺たちと同じ格好で罵倒をされていた。
俺は本当に、自分の言葉で誰がマジで傷つくかがわからなかったから、本当に申し訳ないことをしたな、みたいな気持ちになってた。

いじめてた人の顔は見たくない、と本人が言っていたそうで、担任のみが本人と話すことになり、俺たちは外で待たされた。
数分後、担任が戻ってきて、「お前、いじめてないから帰って大丈夫、マジごめん」みたいなこと言って、俺は自分がいじめてなかったことに心底安心して、帰った。

それが15年前の5月のことで、でも誰かが、あの子から、修学旅行も同窓会も成人式もカラオケも受験勉強サボって図書館の裏で話す時間もぜんぶ取り上げたのだ、そしてそれは俺だったかもしれないのだ、と思って、本当に最悪な気持ちになる。
梅雨の前のこの時期は、あの、綺麗な家の玄関で正座していた時間を思い出す。
本当に、最悪だ。

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19910308 Twitter: @1991shit
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