#くすもコギリ 3

このくすもコギリはフィクションです。
実在の人物や団体などとは関係ありません。

くすもさん、いつもありがとうございます。


「ねえ……」

「……」

「ねえ!」


「え?」

くすもさんは足を止めた。振り返ると遠く後ろで真希がこちらを見つめながら立ち止まっている。

「…あ、ごめん何?」

「…だから、歩くの疲れたから、サンマルク入らない?」
真希はクロワッサンの描かれた丸い看板を指差している。その声色からは呆れと怒りがはっきりと伝わってきた。それは聞くまでもなく「何度言わせるのだ」という意思表示であり、二人で出かけているにも関わらず自分とのコミュニケーションを放棄したくすもさんの責任を追求する仕草に他ならなかった。
くすもさんは5,6mほどの距離を小走りで引き返しながら表情に後付けの申し訳なさを貼り付けていく。真希はサンマルクカフェの自動ドアの前に立って呆れ顔を浮かべながら待っていた。

「最近多いよ、こういうの」
「ごめん」







そう!!!!!!!!くすもさんは!!!!!!!!!!!!!!!!堀北真希さん(あの(あなたがイメージする、その))と!!!!!!!!!!!!!!!!お付き合いさせていただいているのだ!!!!!!!!!!!!







やっっっっっっった!!!!!!!!!!!!!!!!!ッシ!!!!!!!!!!!!!ゥっっっっっし!!!!!!!!!!!!!!おめでとう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!






「これと、あとアイスのブレンド2つ…Sと…」
真希がふと目配せをする。
「…あっ、Mで…」
「ひとつはMで、はい、えっと、じゃあ、iDで」
真希はiDをメインで使用する、少し珍しいタイプのキャッシュレスユーザーだった。

注)ところで、iDの決済音は「シャーン」というSEなのですが、あれが一体何の音なのかご存知の方はいらっしゃいますか?


「あっ、ストロープラスチックだ、ありがたいね」
「ほんとだ」
「おいし」
「うん」

真希との付き合いは、もうすぐ5年ほどになる。
真希は少し機嫌を損ねても、ふとした拍子になんでもなかったように戻ってしまう。くすもさんにとっては彼女のそんな性格がありがたくもあり、なんだかこういう時は申し訳なくなる時もある。
自分の至らなさが彼女に許容されることはあっても、果たして自分から彼女に何かを与えてあげることはできているのだろうか。





そう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!くすもさんは堀北真希さんと付き合ってもうすぐ5年くらい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



他人同士である2人が信頼関係を築きながら長い期間共に過ごすということは決して容易ではなく、日々の変化の中でも互いを尊重したコミュニケーションを怠らなかった証左に他ならない!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



しかし!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!それでも暮らしの中でそういった日々の心の動きへの視点が薄れていってしまうこともある!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


だからそういう時こそ!!!!!!!!!!!!!!!!!出会ったときのことに目を向けてほしい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!






5Years Ago…


まだ何者でもなかった頃の堀北真希さんは、鴨川シーパラダイス(あの(あなたがイメージする、その))を訪れていた。

「くすもさん、か…」

そう。その頃鴨川シーパラダイス(あの)で毎日のようにショーに出演する日々を送っていたのが、かのくすもさん(かの)であった。
代名詞となった”アシカに混ざって水場の近くでシステム英単語〈5訂版〉を開いて一心不乱に単語を暗記し、水がはねて単語帳が濡れると不機嫌な顔で舌打ちをする”というパフォーマンスで一斉を風靡したくすもさんの人気は飛ぶ鳥を落とす勢いで、その噂は若き堀北真希さんの耳にも届いていた。

「うわ、すご…ホントにアシカに囲まれて英単語覚えてる…めっちゃアシカに嫌われてるし…」

長く見るつもりもなかった。しかし、どうしてか、必死に英単語帳をめくるくすもさんから、気づけば目が離せなくなっていた。

アシカに嫌われても、その作業に意味がなくても、自分の信じる道を不器用でも歩き続ける。そんな姿に、いつしか心を打たれている自分がいることに気がついた。

「なんでだろ、目が…目が離せない…」

その刹那である。くすもさんが手に持っていたシステム英単語を床に叩きつけてアシカを押しのけ、客席に向かって叫んだ。


「Mini-pig」


「ミニブタ…?」

これが後の出世作、「ミニブタ。をプロデュース」の原案になったことは言うまでもない。

「その日がなければ、私はこんなに明るい場所を歩けていなかったと思います。だから、くすもさんにはすごく感謝してます。」

CUT 2012年6月号インタビューより


彼女は、くすもさんのことを誰よりも信じ、その生き方に救ってくれた恩を片時たりとも忘れたことはなかったのだ。ステージと客席、テレビの中と外という関係を超え、隣に座り、共に生きる存在となった今もなお、である。


–本人に伝えたりはされないんですか?
「…つい、面と向かって言おうとすると照れてしまうので(笑)でも、伝わってるとは思いますよ。」

CUT 2012年6月号インタビューより

そう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!たとえくすもさんが「自分は彼女に対して何も与えられない」と感じていたとしても!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!くすもさんの存在やあり方、揺らぐことのないそのパーソナリティが!!!!!!!!!!!!!!!近くにいる彼女にとっての心の支えであるのならば!!!!!!!!!!!!!!!くすもさんがその生き方を、ひいては二人の関わりを恥じることなど、決して!!!!!!!!!!!!!!決してないのだと!!!!!!!!!!!!!!!!!!


くすもさんがそのことに気づくとき、二人の信頼関係はさらに特別なものとなるのかもしれない。しかし、それはまだ先のお話。










あっ、くすもさんだ。こんにちはー。


え?なんですか?


"MiniVan"?ミニバン?




ちっちゃい英単語好きなんですか?

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