#くすもコギリ 2

くすもさんは激怒した。必ず、かの邪智暴虐のくすもさんを除かなければならぬと決意した。

くすもさんには政治がわからない。でも選挙には毎年行っている。(←えらい！)住んでない地域の選挙にも興味があれば行っている。選挙のファンなのだ。

ある日のことであった。くすもさんは結婚式を翌日に控えた妹のくすもさんのため、くすもさんが治める国へやってきていた。

くすもさん｢さ！ということでやって参りました！｣

ロケである。
くすもさんはBSよしもとの水82(金曜の午前10時)に冠番組を持っているのだ。人気者〜。

ロケはつつがなく進んだ。栄えた駅周辺のオープニングから始まって近くの商店街を巡り、しょうもないご当地メンチカツみたいなのを食べて適当なおべんちゃらをぶっかまし、持ちギャグを生かした笑いどころを所々作った。｢ヒヤヒヤしたんじゃないの〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜？？？？｣と50回ほど言っていた。お盆も持っていた。
くすもさんはロケ芸人としての手腕を遺憾なく発揮したのだ。立派〜。でもそういうロケって実はディレクターの下調べがよかったりするかららしい。テレビはみんなで作っているのだ。

しかし、ロケの開始から18時間が経過した折、くすもさんはふと気がついた。

くすもさん｢このロケの間、俺は誰とも会っていない……｣

そうなのである。くすもさん、実は誰とも会っていない。話してもいない。駅には偶然エミオがあったから栄えて見えていただけだし、商店街のメンチカツは万引きしたものだ。

くすもさん｢何かがおかしい。｣

くすもさんは偶然通りかかった街のくすもさんを咄嗟に捕まえ、迫るように声をかけた。

くすもさん｢おい。この街はどうしたと言うのだ。以前来たときはこのような有り様ではなかった。｣
くすもさん｢ひいっ。だ、誰？｣
くすもさん｢答えろーーーーーーーッ！！！！！！！！！｣
くすもさん｢う、うぅ……｣
くすもさん｢答えろーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ！！！！！！！！！！｣
くすもさん｢く、くすもさんで御座います。疑り深いくすもさんが大喜利に回答する人間を見つけては処刑して居るので御座います。｣
くすもさん｢な、何。｣

これが事の顛末である。ね？ちゃんと戻ってきたでしょ？メロスに戻ってこないと思って、

ヒヤヒヤしたんじゃないの〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜？？？？

くすもさんは乗り込んだ。どこに？そう、かの邪智暴虐のくすもさんの住まう家(社宅(2LDK))である。自らの愚かしい振る舞いを鑑みろと、そう一言言ってやりたいだけなのだ。

門の前に５分ほど仁王立ちし、覚悟を決めて侵入しようと試みた。

社宅はオートロックだった。

くすもさん｢どうしよう………｣

するとそこに一人のくすもさんが帰ってきた。かの邪智暴虐のくすもさんである。

くすもさん｢あっ｣
くすもさん｢えっ？｣
くすもさん｢おっ、あ、お前、お前は｣
くすもさん｢佐川の方？｣
くすもさん｢い、いやその、｣

くすもさんは走った。

風よりも速く走った。

悔しい。

本当に護りたいモノがあるのなら、それは言葉にしなければ、きっと、この指から零れ落ちていってしまうのだ。

こんなにも強い決意があるのに。熱い心があるのに。

くすもさんは走って、走って、走って、走って。

ロケバスに戻ってきた。まだエンディングの撮影が終了していなかったのだ。

くすもさんはその後も淡々と仕事をこなした。私情を持ち込まないのが信条だった。
葛藤を抱えようが、自信を失おうが関係ない。自分の芸を必要としてくれる人がいる。それを画面の向こうで笑ってくれる人がいる。待ってくれている人がいる。その営みを壊すことなど、どうして出来ようか。くすもさんはおどけた。｢ヒヤヒヤしたんじゃないの〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜？？？？｣ともう80回ほど言った。お盆も500回ほどひっくり返した。そこには誇りがあった。

迎えたオンエアの日。

嘘みたいにデカい台風が来て、くすもさんの冠番組｢くすもコギリ｣は臨時のニュースに枠を潰された。

くすもさんは思った。

｢こんなニュース番組は嫌だ。｣

と。

ヘイヘイヘーイ。

お題の要素がないと思って、

ヒヤヒヤしたんじゃないの〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？？

そして狂った政治に怒りを覚えたくすもさんは普通に選挙に行った。(←えらい！)

選挙のファンなのだ。