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仕事のこと

ーーしばらく更新を忘れてるうちに、下書きの記事を上げる時期になっていた。

私は仕事が好きだと思う。
かといって働くのが好きというわけでもない。

人の役に立つのは好きだけど労働は好きじゃないので、仕事中は "この仕事をすることで、その先で繋がっているお客さんの喜ぶ姿" を想像してやりがいに変えていることが多い。

社会にでる

私は人より優れたところも特技もないまま社会にでた。遡ると幼稚園の年少さんの頃から "毎日通う" ということが好きじゃなかったので、学生になると早く大人になり社会にでたかった。
仕事も毎日通うことになるのにね、学校とかクラスとかそういうのがイヤだったのかもしれない。

あんな幼い頃から、もっと家でテレビを見ていたい、幼稚園バスに乗ってでかけるのはいやだなと思いながら、毎朝すこし冷ましてもらった哺乳瓶に几帳面にピンクのタオルを巻き、寝転がって子供向けテレビを見ながらそれを飲み思っている年少さんなんて、想像しただけでとてもかわいくないし、生まれつき怠け者の血でも流れてるのかと思う。
もしくは2歳から喘息にかかっており病弱で、突然の発作や体調不良で休むことが多かったのと、母からも常に心配されていたため甘えていたのかもしれない。

やっと社会にでてからは、後悔のないように、そして自分らしく、自分にしかできない生き方をしたいと当時言っていたような気がする、たぶん。特技もなにもないつまらない人が、このままつまらなく人生を終えるのがいやだった。

どうせならいろんなことに挑戦したり自分に合う仕事を見つけたくて、とにかくいろんな仕事をした。

どんな仕事をしてもやりがいを感じる方なので、人の役に立つのが好きなんだと思う。
それと "あまりにも暇" という苦痛を2度ほど経験したため、暇な仕事はこりごりだった。

2度のうちの1社は、最初の就職先。あまりに暇で一度書いた帳簿をまた消しては書いたり、仕事をしてるフリをするOLさんだった。現場の人が気遣っておつかい仕事を振ってくれたりもしたけどやはり暇で「何をやっとるんだ!!」と社長には怒鳴られることも多く、お昼休憩は屋上で母に電話して泣いていた。

今の仕事に出会う

今の仕事が好き。
毎日とても疲れる…けどとても楽しい!…けどやはり疲れる!やはり楽しい!どっちもだ。

数年前に個人事業主一本で生活することができなくなり、短期や時短の派遣で働く二足の草鞋を履いている。収入に関わらず作家が本業。

趣味?と聞かれることもあるけど、違和感を感じるので違うと思う。作ることは私のライフワーク。趣味は別にある。それはまたそのうち。

行く先々でいろんなスキルや経験を身につけられるため、仕事を変えることに抵抗はないほうだと思う。それでも新しいスタートは毎回不安で縮こまる。

自分に合っていると感じるため、黙々とPCを触る仕事がつづいていた。昨年は夏に作品展があり、おわるとまた仕事を探した。次もコツコツ黙々な仕事がよかった。が、条件に合う仕事がなかなか見つからないでいた。

制作時間もほしいので、収入は最低限の生活ができる分さえあればよかったし、仕事に追われる日々や収入面の安定を手にすることで、貪欲さや向上心を忘れてしまい、作家としての目標や活動が失われるのはいやだった。

決まらない焦りや落ち込みもある中で、企業ごとの仕事内容を見てはそこで働く姿を想像していた。毎日たくさんの新着求人情報を見た。

そんなある日、ある文字が目に止まる。
企業名こそないものの、間違いなくあそこだ!以前訪れて大好きだと感じた場所!めっちゃ楽しそうだ!思わず声が出るほどテンションが上がった!そして詳細を派遣会社に問い合わせた。が、

条件の
・休日が毎週決まった曜日ではないこと
・時短勤務はないこと
・業務内容のほとんどが苦手ということ
・あのOL時代からずっと避けてた電話があること
が合わなくて応募しなかった。

1〜2週間すると募集が消えた。誰かに決まったのだろう。そこまで見届けると諦めがつくし安心もした。

結構あちこちの派遣会社に登録をしていた。応募する前に研修のある派遣もあったり、登録はZOOMごしの面接でOKなところ、派遣によって得意な職種があったりと、それはそれでおもしろい経験になったと思う。

ふしぎなご縁のはじまり

なかなか見つからない仕事。車検が近づいてきているというのにお小遣いがいよいよ底をつき、働かないといけないのに決まらず、とりあえず日雇いでもいいから働こう!選んでる場合じゃない!と腹を括って応募する頃、あの見送ったはずの求人がまた復活していたのだ。

あれ?増員?前の人がもう辞めたの?
そんなにキツいのかな…。
もう1社、駅前のビルでの入力仕事も気になる。

前にお世話になった派遣会社と数回やりとり。例の2社のことを質問してどちらも気になった。ただ締め切りは、条件が合わない前者が先、後者は日にちにだいぶ余裕がある。

では行ってみて、本当に無理!って思ったらすぐ辞めて、後者に応募していいですか?

失礼ながらそんな考えだった。行ってみないと合う合わないはわからないから。
そして面接を受けた。今回の求職中は自信のある業務内容でも、応募するとすでに決まっていたり、ほかの人に決まってしまうこともあったのに、ここはトントン拍子に話が進んだ。

引継ぎの方の都合で1週間後に初出勤だ。

自由なうちに動いておこうと、母と気になっていたケーキ屋さんへ行った。そういえば職場の近くだったとあとで思う。別の日はある大好きな場所に他県の知人をアテンドした。この日お揃いで入手した "当館限定!" のダイキャストは、職場に全く同じものがあるとその2日後入社して知り驚くことになる。また昨年作品展にきてくれた両親が、道中道に迷って入り親切だったと言っていたところは今の職場だ。
こういった偶然の話は他にいくつもある。

目に見えない縁が動きはじめていた。

いよいよ仕事がはじまる

入社初日は朝礼があり全員の前であいさつをするのだが、人数の多さと一斉に注目されることに怯えて、いつも以上に蚊の鳴くような声になってしまった。こんなに大勢の人と仕事したことはない。

3度のご飯と同じくらい車が好きだと自己紹介した気がする。過去の仕事で職種を変えても車には不思議と縁があった。プライベートでも車が好きだ。

まず職場見学をした。とにかくカチコチに緊張していた。そのため内容は覚えていないけれど、案内してくださる方が何も見ずに年号や歴史背景などスラスラと話され、お客さんひとりひとりと目を合わせているのがすごいと思った。

堂々とした立ち振る舞いに仕事への使命とプライドと努力を感じて、心が震えた。大興奮で自分の席に戻ったことを覚えている。

入って3日目は、部署のみなさん勢ぞろいでの歓迎ランチ。みなさん1人ずつ自己紹介してくださり、緊張とごはん食べなきゃと会話しなきゃで忙しく、味は覚えていない。

ただ、デザートのお皿に "○○さん、これからよろしくお願いします" というメッセージが(聞いたところによると恒例らしいが)先輩の配慮により書かれて出てきて、派遣なのにこんなにも歓迎してもらえるのは驚きであり喜びだった。明るく活気があってアットホームな雰囲気で、職場なのになんだここは!?と思った。

今までいろいろ見てきた職場は、常に誰かが討ち入る隙を狙ってホトトギスの句を詠んでいるような "戦国時代" だったのでとても新鮮だった。

尊敬するプロの仕事

入ってからまず最初に尊敬したのは、現場を案内する方。美しく凛として知的でプライドを感じる仕事ぶりは、決まった形式の説明だけでなくお客様のどんな質問にも答えられる柔軟さと垣間見える陰の努力、心遣いや笑顔がすばらしい才色兼備。お客様に最も近い存在であり、魅力を伝えてくれるなくてはならない存在。

次に同じく現場で機械を動かしお客様をワッと驚かせる方々。全身油まみれになって機械を磨いていたかと思えば、1万本以上ある細い糸を1週間かけて新しい糸に替えるといった繊細な作業をしていたりもして、機械と対話するように黙々とメンテナンスされる姿はいつものお客様を笑わせる明るい笑顔とはまた別の魅力を感じる。

受付の方々は、最初にお客様が向かうところ。いつも明るい笑顔で迎えてくれて、さまざまなお客様がいらっしゃるのに冷静かつ臨機応変に笑顔で対応される。

ほかにも接客のプロ、知識の泉のような方、電話応対のプロ、デザインのプロ、施設管理のプロ、あらゆる仕事のプロが集まっており、ここにいるあいだは尊敬の念に堪えない。

大人になって知らされたこと

今年の自粛期間中のある夜、母と話していた。

我が家の家系はファミリーヒストリーを作ろうとしても、ネタがないごく平凡な人種。ご先祖様に一代だけ自営業の方がいたとは聞いたことはあったが、その方が

織機(しょっき)の筬(おさ)を作る職人だった

今になってはじめて知ったのである。
まるで本当の娘じゃないのよ、と告白されたかのように、いやそこまでではないけれど、この歳になるまで聞いていなかったので衝撃的だった。

今の職場にいくまでは「ショッキ」と聞けば「食器」しか思い浮かばなかったけれど、やっと「織機」がわかるようになってきた矢先に、織機の重要なパーツである筬を作ってた先祖がいると知って、これをご縁以外の何というのだろう。

「今までなんで教えてくれなかったの!?」
「説明してもわかりにくいものだから」
納得だった。筬についてはやはり説明しづらいので調べていただければと思う。

業務で必要になることがあるため、在宅勤務中の合間には先人にまつわる歴史の勉強もした。
知れば知るほど当時のモノづくりへの探究心や向上心や情熱や苦悩が伝わってきて、それは現代を生きる私の励みとなり創作意欲に結びついた。

失敗することを恐れずにどんどん作っていこう。どんどんいろんなことを試してみよう。そう思えているのは先人の志であり、職場が後世に伝えていこうとしている "研究と創造の精神" のおかげ。

どちらに進んでもいい

永遠なんてないことは知っているので、いつか終わりがくることも分かっている。そのため、いつかは思い出になる日がくるんだなーと思いながら、職場のなんでもない景色を目に焼きつけているときがある。
いつかはここを去る日がくるだろう。

いろんな人が訪れるから、人間のいやなところが見えてしまうときもあるが、漫画のようなおもしろ事件が起きたりもするし、なにより人生において貴重な経験がたくさんできるところがとても魅力的だ。

ずっとここにいたいなと思うときもあるし、今すぐに辞めてもいいなと思うときもある。

意見やアイディアがあったらどんどん言ってね!という風通しのよさと、より良くしていこうという上司がいてくれるおかげで、気づいたことがあれば言うようにしているし、思ってることを溜めやすい私にとっては言葉にできるように少しは変われたかなと思う。

ここが好きだから長くいられるなら楽しいだろうし、収入の安定を考えれば同じところにいたほうがいいと思う。

逆にずっと同じところにいるとそれ以上の成長ができなくなるから、他の職場に変わることは新しい何かを学んだり身につけられていいなと思う。

そう思うとどちらに進んでもきっとしあわせだ。

今日は記念日

そんな1日で辞める覚悟で入った職場も、今日でちょうど1年。

過去の求人で頑なに拒んできた電話も、頼りがいのある同じ部署の方々への安心感や信頼感からすこしずつ慣れ克服できた。望んでいた黙々作業とは真逆の、常に人とたくさんコミュニケーションをとるような仕事内容にもだいぶ慣れいつも楽しく笑っている。
苦手だと思っていたものも、すばらしい環境のおかげで変われたのだ。

2日前には、「もうすぐ1年だったよね?」と入った日からお世話になっている先輩に焼き菓子をいただいた。いつも一緒の先輩は用事があった出先で、大好きなスイーツを私の分まで買ってきてくれた。またつい先ほど、一緒に仕事をしている別の先輩からラッピングされたお菓子をいただいた。(追記だが)帰り際にも仲良しの先輩がおそろいのキャンディ缶をくれた。

入ったときから家族のように温かく優しく、思いやりと笑顔のある今の環境は、私にとって学生のころは味わえなかったかなり遅れてきた青春であり、厳しいことも本音も言える家族くらい距離感が近い。そう、家族のような方々だ。

こんなご時世だからこそより心に染み入るし感謝が止まらないのだが、私の周りは笑顔と愛で溢れている。

ご先祖様が導いて見守っていてくれてるかもしれない今と今あるすべてのご縁に感謝しながら、これからも仕事も制作も全力で楽しみ努力します。