ゼネコンからの転職、一級建築士の行方とは?
そもそもゼネコンとは?
ゼネコンとはゼネラルコントラクターの略称で、総合建設業者のことを指します。マンションやビルをはじめ、テーマパークや競技場などの大型建築を建てる会社の総称で明確な定義はありませんが、①「設計」②「施工」③「研究」の3つを自社で行っていることが条件であり、売り上げ数千億~数兆円もある会社のことをゼネコンと呼びます。
ゼネコンにはランクがあります
ゼネコンのランクは企業ごとの売上でみていきます。
◆スーパーゼネコン
スーパーゼネコンとは、売り上げが1兆円を超えるTOP5の企業のこと。
大林組 鹿島建設 清水建設 大成建設 竹中工務店など。
マンションやビルの建築現場でよく見るなまえではないでしょうか?
◆大手ゼネコン
大手ゼネコンとは売り上げが4000億円を超える企業。
長谷川コーポレーション 戸田建設など。
◆準大手ゼネコン
準大手ゼネコンとは、売り上げが3000億円を超える企業。
東急建設 フジタ、五洋建設など。
ネームバリューのあるゼネコン、研究部門・エンジニアリング部門の技術力が高いゼネコン、新しい技術の開発なども盛んに行い常に最先端の技術を保有するゼネコン、建設業界で成長する機会に恵まれています。
ゼネコン全体の離職率
ゼネコン全体の離職率は大手ゼネコンは低く、小規模な会社は離職率が高めの傾向にあります。
大手ゼネコンは一級建築士にとってホワイト企業であるか?
1位 鹿島建設
2位 積水ハウス
3位 大成建設
4位 大和ハウス工業
5位 大林組
建設業界全体の中でスーパーゼネコンが3社入っています。
一級建築士がゼネコンからの転職を考えるきっかけを離職理由が読み解くと、会社の規模によるところが大きいことがわかります。
長時間労働の是正
ゼネコンの離職率が高くなる理由のひとつが納期。納期に間に合わせるための過剰労働という現実。
しかし大手企業のゼネコンでは、20時間台からなんとか40時間台に抑えるという傾向がみえます。
働き方改革関連法の施行に伴い、労働基準関係法令違反にかかる公表事案を厚生労働省及び都道府県のホームページに一定期間掲載されます。
この企業名公表制度の対象となる企業は複数の事業場を有する社会的に大きい企業(中小企業に該当しない企業)という点からも、大手ゼネコンは長時間労働の是正に取り組んでいかなければならない現実があります。
それによって週休2日、年間休日120日が確立されている上、有給休暇の消化率も高い傾向にあり、激務であるゼネコンの離職率の低さにつながっていると言えるでしょう。
ゼネコンで三年以上働いた人の離職率は下がる傾向にあります。
ブラックなイメージが先行しやすい建設業界ですが、ゼネコンでも多忙を極めるのは人や納期によるところは大きい。また一級建築士の仕事、ゼネコンとなると現場監督をイメージする人も多いと思いますが現場監督にとどまらず、また現場監督であっても常に忙しいわけではありません。担当している工事のタイミングによります。
例えば、工事の完成間際(いわゆる竣工前)は、工事が始まってから終わるまでの中で最も忙しいタイミングであることが多いです。
働き方改革や法規制も進み、ゼネコンの意識も徐々に変わってきています。
ゼネコンはホワイトとは言えない?
働き方改革法案法に伴い企業努力は覗えるが、現実はそんなものではない!という声から離職率について見ていきます。また転職を考えるきっかけの理由にもなっています。
残業が多い
天候に左右される特性もあり納期がある限り残業は避けられない。
休日が少ない
完全週休2日制は絵に書いた餅、過半数は週休1日制という現実。
長時間労働は転職への意識にも影響を与えています。日建協(日本建設産業職員労働組合協議会)へのアンケートでは、「完全週休2日制」を実施している企業は約5%しかありませんでした。
対人関係がハード
ゼネコンの現場には様々な人が入って仕事をしています。職人気質のこだわりが強い方業者との緻密なやり取り、自分の意見を的確に伝えることなどなど日常的に人と接する仕事であるため、休日の充実や充電する時間を確保できないとリカバリーすることが難しく疲労だけが蓄積する結果に。
優良(ホワイト)企業を知るために
経験もゼネコンで積んできた、ゼネコンからゼネコンへの転職をするなら優良企業であるゼネコンへ転職をするために、離職率の低いゼネコンを選ぶことで優良企業を探すキーポイントになりそうです。
厚生労働省の労働基準関係法令違反に係る公表事案に労働法違反の疑いのある企業について、リストで公表をしています。転職を検討する際に労基法違反疑いリストに載ってないかどうか確認をしましょう。
転職業界でも一級建築士は引く手あまた
大手ゼネコンや中小ゼネコンでも、一級建築士を多く募集しています。近年では、建築業界は活況状態にあり、人材不足です。
ゼネコンで仕事をする上で一級建築士の資格は必須であり、ゼネコン設計部では経験のある一級建築士の転職は大歓迎。またゼネコンでしか味わうことのできない誰もが知るランドマークタワーの建設に携わることなど労働条件は若干厳しいところもありますが、経験や最先端のスキルなど培ったものが存分に発揮できるのもゼネコンの魅力と言えます。
ゼネコンからディベロッパーへの転職
ディベロッパーとは?
デベロッパーとは、英語で「developer、開発者」の意味です。日本では、土地や街を開発すること主業としている不動産会社のことを指します。デベロッパーが行う事業は多岐にわたり、たとえば以下のような事業になります。
1.街の再開発事業
2.リゾート開発
3.大型商業ビルの開発
4.大規模場な宅地造成(戸建て街の形成)
5.マンション開発
これらの事業はデベロッパー以外にも色々な事業者が協力して行いますが、主になって行う企業はデベロッパーであることが多いです。
ゼネコンとディベロッパーの関係性
ディベロッパーとゼネコンは「一緒に目的の建物を完成させる」という共通目的を持ちお互いに必要不可欠な協力関係であり、 イメージとしてディベロッパーが事業を主導している発注側で、ゼネコンが受注する側という認識ですが、大手の企業になればなるほど対等に近い立場で共同開発をしている場合もあります。
実務経験のある人はディベロッパーへの転職に有利
「事業主」として設計業務に関われる面白味がディベロッパーにはあります。
大手ディベロッパーなどでは社内設計チームで基本的には企画段階~基本設計に専念しながら事業主として関わりを持ち、実務経験のある一級建築士としては即戦力になります。
今までは依頼されてマンションなどの設計に関わってはいても事業主として設計業務に関わることはなかったのではないでしょうか?
“事業主”として設計業務に関われる環境もディベロッパーの魅力です。
一級建築士がディベロッパーへの転職の現実
大手不動産会社の中途採用はほぼゼロに近い、というのも大手不動産は新卒を中心としており中途採用はほぼ行っていないためです。中途採用で大手不動産に転職する場合は高度なスキルや経験が求められます。
しかし大手不動産会社の関連企業や子会社への転職には門戸が開かれています。ゼネコンでの経験のある一級建築士の方には有利と言えます。また未経験でのチャレンジも可能。新たな分野に挑戦したい方にもおすすめです。
ハウスメーカーへの転職
大手ハウスメーカーでは設計や施工が部門ごとに分かれているところが多いので、一人当たりの業務量も過剰に多くなくワークライフバランスが実現しやすいメリットがあります。このあたりもゼネコンに比べて自由度は確保できそうです。
また求人が出る頻度も高いので、転職に際し中途採用のハードルも低い点も魅力です。また収入面においても大手ハウスメーカーの平均年収は800万円程度と、日本の平均年収を大きく上回っています。
昨今、新築にとどまらず、顧客要望やライフスタイルの変化からリノベーション物件も増えています。そして建設業界の優良(ホワイト)企業ランキングのトップ5にもハウスメーカーが2社入っています。転職をするにあたって経験と知識がフル活用でき一級建築士にとって活躍の幅も広がるともに、働きやすさや職場環境の改善にもおすすめです。
繰り返しになりますが、一級建築士の資格は建築業界においてのスペシャリストです。経験を培った分野での転職の強みはもちろんのこと、先に紹介したディベロッパーのように未経験でのチャレンジが可能であってもゼネコンでの職務経験や一級建築士の資格があることは有利になります。転職にあたり新たな分野の開拓を試みるもよし、経験をフルに活かしフィールドを広げるもよし、一級建築士としての拠点の定め方は様々です。転職にいちばん大事なことは納得して仕事をすることです。労働条件、給与、能力、パーフェクトな条件は厳しいですが、その中で納得をして働いていく環境があることは忘れずに!