LAST MINUTEについて

[Alexandros]にLAST MINUTEという曲があります。その曲の歌詞が本当に大好きで大好きで、断片的には何度か書いたことがあるんだけど誰かに伝えるために本気で書いたことは一度もなくて。無いというか、毎回途中で挫折して中途半端に下書きだけが残っているだけなんですけど。
この曲は歌詞が大好きである分、私の中で一つの物語のようなものが勝手に出来上がっています。多分、それを伝えるために歌詞の全てを書こうとするから途中で力尽きるんだろうなと思って、今回は抜粋して書くことにしました。
どうか勢いだけで書き切りたい。
3度目の正直ならぬ、5度目の正直くらい。

どうしても書きたいのはこの2フレーズ。

〝あなたに出会えたら心が騒ぐでしょう〟
〝「さよなら」その日まで「いつまでも」遊びましょう〟

まず1つ目。

〝あなたに出会えたら心が騒ぐでしょう〟

1番のサビに登場します。初めて聴いた時からずっとずっと忘れらなかった、印象的なフレーズ。
初めて聴いたのは確か…もう3年前とかです。UKFC2017とラブシャ。新曲としてちゃんと売られたのは2018年秋。その間も、ワンマンとか夏フェスではブラッシュアップされて演奏してくれました。そしてツアーの1曲目として大役を担っていたのが、2019年の6月まで。
これは有難いことに、ずっとライブに行くことができていた身だから言える話だけど、2年近くと本当に長い間やり続けてくれた曲です。その分の思い出もひとしお。このサビのフレーズで私は何度泣かされてきたかと思う。

思い出話はさておき。この歌詞の何がいいかって、感情を「騒ぐ」と表現しているところ。嬉しいとか楽しみとか、わかりやすい感情ではなく「騒ぐ」という言葉をチョイスしたそのセンスに、本当に感動しました。心が揺さぶられた。まじで。

1つ質問になりますが、好きな人や大切な人に会う・出会うとなった場合、あなたはどんな感情をイメージしますか?この場合って、さっきも書いたようにほとんどが嬉しいとか楽しみとか、プラスの感情だと思います。もちろんそれぞれあると思うけど、悲しいとか辛いとか思い浮かべる人って一般的にはあんまりいない気がするでしょ。

でもこの歌詞はここで「騒ぐ」と来たんです。じゃあもう1つ質問。気持ちが騒ぐと言われた時、それはどんな感情だと思いますか?私は同じ質問を自分にした時、これだと思った1つの感情は浮かびませんでした。

そう、私がここですごいなあと思って伝えたかったことは、「騒ぐ」といわれた時に思い浮かべる感情が人それぞれであることで、その歌詞や、また歌詞から連想される曲のイメージが人によって変わってくるということです。

何度も例に出すように、嬉しいとか楽しいみたいに何か一つ特定の感情を歌詞にしてしまうと、聴き手はそれ以上広げられなくなります。また好きな人や大切な人といった誰かに会う時の気持ちに、あまりマイナスな言葉を使うこともない。でもここで「騒ぐ」という言葉を使うことで、一気に感情の幅が広がる。嬉しい気持ちもあるかもしれないし、一方で不安な気持ちもあるかもしれない。楽しみな分、緊張や終わってしまう切なさが混じることもある。
実際の生活の中で、そうやってポジティブとネガティブが混在する瞬間って多くあると思います。気持ちが一瞬で裏返ってしまう時もあるしね。プラスとマイナス、どちらの意味も含めた歌詞を使って、そういう人の感情の揺らぎやすく不安定な部分を上手く描写したところが、このサビの素晴らしさだし、好きだと思う部分です。

はい2つ目。

〝「さよなら」その日まで「いつまでも」遊びましょう〟

一番最後に登場する歌詞です。
いやあ、曲全体の歌詞を読めば分かってもらえると思うんだけど、このフレーズを一番最後に持ってくることがずるい。正直この歌詞は、曲全体を聴くからこそ意味が増す部分もあって、この歌詞単体ではあんまり深く踏み込めないかもしれない。ガチ語りしようとすると必然的に私がこの曲に対してどんなストーリーをイメージしたか書かなきゃいけなくなるし、曲全体を解釈したくなっちゃう。

何よりも。何よりも伝えたいのは、終わりが来ると分かっているのに永遠を願うその矛盾が生む儚さ。

これに尽きると思います。歌詞の前後関係はともあれ、「さよなら」と言っておきながら「いつまでも」って、この2つの言葉の意味だけを見たら普通に考えておかしくないですか?いや、さよなら言ってる時点でもういつまでもなんて無理だし…と私は思ってしまうんです。
でもその矛盾をあえて使う。
「いつか終わりが来ることはもうわかっているからこそ、その日が来るまではその時間を永遠だと信じていたい。」こう解釈できるんじゃないかなあと思います。

あえてこの2つの単語に括弧がついているのは、この2つから感じることができる時間軸の違和感に、注目させるためなのかなと考えたり。「さよなら」という言葉に対して「いつまでも」という言葉をかけていることを目立たせる事で、両者の意味がより引き立つというか。何言ってんのか分からなくなってきた。
要するに、言葉の対比を目立たせるため・聴き手にこの言葉遊びの引っかかりを持たせるため、括弧をつけたのかなと。

このLAST MINUTE全体に切なさや儚さが漂っているんだけど、その切なさに最後トドメを刺してくるのが、今紹介した2つ目のフレーズだと思っています。

繰り返しになってしまうけど。全体を解釈して語るにはどうも出来そうにない、でもこの2つのフレーズはこの曲を聴く上でどうしても伝えたくて、伝わってほしくて。抑えておきたいポイント(テストかよ)だったので、この2つだけでもと思い勢いで書き始めた次第であります。私がLAST MINUTEの中で特に大好きな歌詞です。

私はこの曲のことを1人でこっそり「現代版かぐや姫」と呼んでいて。いや、かぐや姫の話ちゃんと知らないし完全に「月」という単語に引っ張られて付けただけなんだけど。
でも歌詞に使われた言葉の端々を読むたびに、もう会えない人に逢いにいく夜がこの曲全体のテーマのように感じます。そのもう会えない人が誰で、どこの世界の人なのかはわからないけれど。
とても綺麗で美しい世界観の曲でありながら、さっきも書いたようにどこか切なくて儚く、孤独で残酷。残酷はちょっと大げさかもしれないけど、無情だなと思う。

洋平さんが書く歌詞は、時折こんな風に孤独で切なく、美しい夜が登場します。ここからはただのオタクの戯言になってしまうけど、こういうベクトルに入った瞬間の洋平さんの言葉選びが本当に好き。朧げで曖昧な時間軸を書くのが上手。ビックマウス的な、確固たる信念の強さと言った力強さがある反面、繊細で情緒的な面を感じることができる。この曲と同じ色を持った〝Swan〟という曲があるんだけど、そのSwanやこのLAST MINUTEみたいに聴き手に想像する余白を与える曲って、楽しいから大好き。

どうか全体を聴いてほしいです。歌詞を読むでもいいな。散りばめられた言葉たちをどんな風に捉えますか、どんな風に思いますか、この曲からどんなストーリーを想像しますか。聴けば聴くほど自分だけの曲になってくれる、そんな曲だと思ってます。

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