あの日の事 #5
大天使龍我ちゃんを間近で見てしまったあの日の事。
「お台場 踊り場 土日の遊び場」というすごいタイトルの催し物が開催されたのは、台場にある湾岸スタジオだった。ファンはこのイベント名を「湾岸」と略した。もはやただの場所名。オタクの略称センスはどこまでも強い。
わたしはというと、一般発売で奇跡的に電話が繋がり、取れたチケットは最後列。入れるだけ幸せだよなぁと思って挑んだら、自分の後ろに通路と若干の高さのある台(ステージ)があった。会場は「田の字」型のステージ構成となっており、これは。もしや。わたしの後ろに彼らが来るという事ですか。
湾岸ライブが始まり、思った通りに彼らが後ろまで来た。
近い。
近すぎて逆に気まずい。
一瞬。本当に一瞬だが、大天使龍我ちゃんが近くに来る瞬間があった。龍我ちゃんはファンサタイムとばかりに通路側のお客さんへ端から順にタッチをしていってくれた。そしてわたしの目の前に天使がきた。天使が目の前にいる。龍我ちゃんはめちゃくちゃ汗をかいていた。唇がぷるっぷるで真っ赤だった。目がキラキラ輝いていた。黒髪が健康的で艶やかだった。そして大きかった。バブちゃんだと思っていた龍我ちゃんはとんでもなく大きかった。わたしの目線は明らかに上だった。龍我ちゃんのお顔はきゅるんきゅるんで、その可愛さに思わず「龍我だぁ!」と声を発してしまった。そりゃ龍我だよ!と今なら冷静にツッコミを入れたいものである。なんと妙なオタクだろうか。しかし龍我ちゃんはニコニコっと笑いながらわたしの手をぎゅっと握ってくれたのである。完全に死亡。大天使からこんな恩恵を受けてしまってもう気持ちはあの世。はああ龍我ちゃん大天使。わたくしめなんぞ平民の手を握ってくれるなんてなんと心優しき地上に舞い降りた天使なんだろうか。ありがてえ。てえてえ。
いまだにあの時のキラキラした姿はこの目に焼き付いて離れない。決して接触厨ではないが、アイドルと触れ合えるというのは天まで昇るような気持ちになってしまうんだな、と、公演後に自分の掌を眺めながらそうぼんやりと思ったりした。
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