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レンタルビデオ屋のAV在庫処分セールの風景

 自宅近くに1Fに本屋、雑貨店、2Fにレンタルビデオ屋が入居している施設がある。運営会社のイメージは悪くはない。近隣の小中高大学生も集うようなありふれた書店、レンタルビデオ屋だ。私の約10歳年上の姉もそこで店内内職として働いており大変お世話になっている。
 私は、その本屋によく立ち寄り、工学系の本や気になった本を購入する。この本屋のおがけで私の知識はいくらか増強したのだ。いまや手元のスマホで映画など見れるから2Fのレンタルビデオ屋に立ち寄ることは殆どない。たまに暇潰しに立ち寄る程度だ。
 ある日、帰り間際、2Fのレンタルビデオ屋に立ち寄った。最近の流行を示すように、カードゲームを行えるフリースペースが設けられていた。フリースペースがある領域は、以前はレンタルビデオで敷き詰められていたのに。
 店内を散策する。どこからか、「シャ、シャ、シャ」と何かと何かが擦れる音が、1Hz(回/秒)くらいの周波数で聞こえてくる。なんだろう。店員さんが何か作業でもしているのかな?音の鳴る方へ向かう。すると、外からは分かりにくく配置された18禁コーナーに至った。なんやろう??周囲の目を気にしながら興味本位に少しドキドキしながら暖簾を分けて立ち入る。アダルトビデオ(AV)だ!裸体の女性の写真と共に卑猥な文言が散りばめられたDVDパッケージで視界が埋め尽くされた。現代の遊郭の一形態だ。現代に生きる娼妓らは、2DデータとしてDVDパッケージという料亭に押し込められ、僕らに笑顔で手を振るのだ。心配ご無用。下半身は完全に制御された状態が保たれている。
 さらに音の鳴る方へ目を向ける。音源が判明した。予想外。AV在庫処分セールにて、青年がしゃがみながら、一心不乱に好みのAVを物色する際に発せられたスクラッチ音であったのだ。レンタルDVDとしての役割を終えたであろうAVがジャケットの紙とともに透明フィルムに収められ、数十個ばかりの小ぶりのカゴに、数十枚程度まとめて収納されていた。青年はそこから両手に収まるほどのAVを取り出し、1枚1枚スライドさせながら、ジャケットを確認する。そして好みのAVがあればピックアップする。AV物色の最中、フィルムとフィルムが擦れ、2F店内に満たされた空気に密度変動が生じ、私の鼓膜が震えたのだ。
 正直嫌悪感を抱いた。自分自身が、日本の政財界公認のオフィシャルなAV配信サイトでAVを物色する為に狂ったようにスマホ画面上に指を滑らせてしまうことがあるのは置いておいて。
 後日、暇潰しがてら、再び2Fレンタルビデオ屋へ向かう。店頭にダンボールが積み上げられている。1辺1mくらいの立方体が2つ積み上げられている。これはなんだろう。詳しく見る。赤字で「AVバラ売り」みたいな文言が書かれていた。なるほど。AV在庫処分セールの売れ行きがいいのだろう。追加でAVを仕入れたのね。複雑な気持ちになる。何故なら、私の姉が店内内職として働くからだ。姉が帰宅時に発した言動を思い返す。「この国ではエロ系は問題ないらしい。」といった趣旨を発言していたような。点と点がつながる。姉がAVパッケージをバラして透明フィルムに封入する店内内職をしている様子を想像した。店内内職であるから実質最低賃金以下のお仕事だ。日本国の裏の姿、政官財腐敗の一端を垣間見た。
 約10年前、私の大学時代に遡る。帰り道友人と会話する。友人の友人が、そのレンタルビデオ屋でバイトしていて、AVのポップ作ってるらしいで!とか笑いながら発言していたのを思い出す。変わることのない風景。日本の伝統的な女衒、楼主はしぶとい。レンタルビデオ屋からスマホへと移行するが、今後もずっと変わらないビジネスモデルが日本に存在し続けるのだろうか。

あとがき

 チャットレディの件に続き、またもや現代の廓に関する体験談を記載してしまった。仕方がない。日本の伝統的な女衒、楼主は日本政府と繋がりを持つことで、強固な既得権益が保障されているからだ。その社会の趨勢に飲み込まれた私は日本の実際の姿をノートしているだけである。

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