三角形公理

三角関数のはなし 目次

幾何学から始めよう

三角関数の話をしようと思ったが、何の話をしようが迷った。
折角だから、あんまり学校の教科書に載らない話が良さそうだ。
しかし、教科書から離れすぎて専門的すぎる話も微妙だ。

ということで、思いついたのが幾何学の話だ。
一応、三角関数と幾何学は関連する分野だ。
まあ、良いだろう。
しばらく、三角関数は出てこない。

では、本題に入る。


平行線公理とは

平行線公理というものがある。
以下の様な公理だ。

◆◆◆
直線$${l}$$と、直線$${l}$$上に無い点$${P}$$がある。
このとき、直線$${l}$$に平行で$${P}$$を通る直線が存在する。

$${ 点P \notin 直線l }$$
$${ \implies }$$
$${ \exist 直線m ∧ 点P \in 直線m ∧ 直線l  //  直線m }$$


◇◇◇
更にこのとき、直線$${l}$$に平行で$${P}$$を通る直線は一本しか無い。

$${ 点P \notin 直線l }$$
$${∧ 点P \in 直線m_1 ∧ 直線l  //  直線m_1 }$$
$${∧ 点P \in 直線m_2 ∧ 直線l  //  直線m_2 }$$
$${ \implies}$$
$${ 直線m_1 = 直線m_2}$$


これは、定理ではなく公理だ。
定理の様に証明できないからだ。
多くの数学者たちが、これは定理だとして証明に挑戦した。
そして、挫折した。

そして出た結論。
証明できない、という事だ。
正しい筈だけど証明できないので、もう予め正しいものとして扱おうという事だ。
まあ大雑把に説明すれば、それが公理というものだ。
大雑把過ぎるかな。


ただ、それなら他にも有るんじゃないだろうか。
多分あるぞ。
証明できないやつが・・・だ。
多分あるぞ。


そして、見つけてしまった。
有ったんだよ。
勝手に三角形公理と名付けてしまおう。


三角形公理とは

三角形公理とは、こんなやつだ。

◆◆◆
直線と、その直線上には頂点が重ならない三角形が有るとする。
そして、その三角形のどれかの辺と直線が交点を持っているとする。
このとき、その直線は三角形の別のもう一辺とも必ず交点を持っている。

$${    (\nexists 点i \in 頂点(三角形A) ∧ 点i \in 直線l) }$$
$${     ∧ 点a  \in 線分p \in 辺(三角形A) ∧ 点a \in 直線l  }$$
$${        \implies }$$
$${    \exist 点b, 線分q }$$
$${      ∧ 点b  \in 線分q \in 辺(三角形A) ∧ 点b \in 直線l }$$ 
$${      ∧ 線分p≠線分q}$$


確かに成り立つ。
間違いなく成り立つ。
しかし、証明せよと言われても、それはできないだろう。
だれか、やってみる人はいるかな。
挑戦するのは止めておく事だ。

なぜ、この三角形公理が証明できないと判るのか。
それは、平行線公理と似た様な境遇の公理だからだ。
まあ、とりあえずは、そんな感じに思っておいて頂きたい。


ユークリッド原論では

平行線公理については、学校の教科書で見かけた事は有ると思う。
では、三角形公理についてはどうだろうか。
おそらく、・・・無い。

では、歴史を遡って。
過去の時代の幾何学の教科書を見てみよう。
ユークリッド原論はどうだろう。
ユークリッド原論では、五つの公準が定められている様だ。

 1. 任意の一点から他の一点に対して直線を引く事が可能。
 2. 有限の直線を連続的にまっすぐ延長することが可能。
 3. 任意の中心と半径で円を描くことが可能。
 4. すべての直角は互いに等しい
 5. 直線が2直線と交わるとき、
   同じ側の内角の和が2直角より小さい場合、
   その2直線が限りなく延長されたとき、
   内角の和が2直角より小さい側で交わる。

第5公準は、丁度2直角だったらどちらでも交わらない事を暗に示しているのだろう。
これが、平行線公理に対応するものだ。

三角形公理に似たものさえ、影も形もない。
完全無視だ。
考慮に値しないという事か。

さて、ここまで来るとどうだろう。
三角形公理は、そもそも何の役にも立たない公理である疑惑が浮上してくる。

さあ、実際どうなんだろうね。